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『今際の国のアリス』国内外でヒットの理由 『バトル・ロワイアル』から続くジャンル人気から探る

リアルサウンド

21/1/5(火) 8:00

 Netflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』が配信されるやいなや、ユーザーが作品を選んで視聴した回数に基づく国内総合TOP10で首位をキープする人気っぷり。シーズン2の制作発表も最近された本作は、『週刊サンデー』で連載された麻生羽呂による原作を実写化したもの。主人公の有栖(山崎賢人)と親友のチョータ(森永悠希)とカルべ(町田啓太)が、突如無人化した世界に迷い込む。そこで、命をかけた“げぇむ”に強制参加することになり、有栖がそこで出会ったウサギ(土屋太鳳)と協力して挑んでいく物語である。

 世界190カ国で配信。英語・日本語・ポルトガル語などの言語で吹き替えも用意されていて、世界に発信するという気概が溢れる作品だ。国外でも主演の山崎賢人はイケメン俳優として注目されており、各国のNetflixアカウントのストーリーや投稿に登場し、話題を呼んでいる。

 
 
 
 
 
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 ジャンルがデスゲームものであり、ところどころ残酷な描写もある本作。国内では主演タッグをはじめとする人気俳優が多く出演していることもあって、普段デスゲームものを観ないファン層にも浸透している。本稿では、日本で根強いジャンルとして確立されたデスゲームものについて、考察する。

ジャンルとしての立ち位置:俳優の登竜門

 映画としての本ジャンルは、アイドルや売り出し中の俳優の“登竜門”的立ち位置にもなっているのが特徴的だ。例えば『バトル・ロワイアル』には柴咲コウ、栗山千明、安藤政信といった今となっては有名な俳優も多く、特に主演の藤原竜也はその後、『カイジ』『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』とデスゲームものの常連俳優となっている。その後、多くの作品が2000年代後半から今にかけて公開されてきたが、中には『JUDGE/ジャッジ』(瀬戸康史、有村架純)や、『神さまの言うとおり』(福士蒼汰、福士蒼汰、山崎紘菜、染谷将太、神木隆之介)のように、そのとき最も旬の俳優らが起用されるようにもなった。そうすることで、少しニッチな市場だった本ジャンルが、より一般的に開かれたように思える。『今際の国のアリス』もこれと同じ流れを汲んだ作品であり、よりオープンなデスゲーム作品として作られたことがヒットに至った一因だろう。

デスゲームものが流行ったきっかけ『バトル・ロワイアル』誕生の背景

 デスゲームジャンルというものを確立させたといっても過言ではない、『バトル・ロワイアル』。海外からの評価も高い本作の原作となった同名小説は1997年に発表された。この頃、世間では90年代後半にかけて青少年が主犯の凶悪犯罪が増加。そこに加え、バブルが崩壊した背景を含め、上昇志向と世の中(社会)を生き残らなければ、という空気感が出始めてきた。そう、まさに映画の劇中で北野武が生徒全員に言ったように「人生はゲームです。みんなは必死になって戦って生き残る、価値のある大人になりましょう」という風潮だったわけだ。

 その最中に生まれた『バトル・ロワイアル』は早速2000年に映画化され、後のデスゲームものに大きな影響を与える。中学生が同級生と殺し合いをする映画。1999年にアメリカでコロンバイン高校銃乱射事件が発生し、世界的にも少年犯罪に強い関心が寄せられていたこともあって、本作は海外からも強い注目を浴びた。これをきっかけに、海外でも生死をかけたデスゲームものとして『ハンガー・ゲーム』、『ソウ』などのヒットシリーズが生み出されていくようになる。

漫画ジャンルとして、映画ジャンルとしての確立

 『バトル・ロワイアル』は小説だが、その後は主に漫画界でこのジャンルが浸透していく。本作の影響もあって「中高生が主人公、学園を舞台にしたもの」が広く流行。2000年代以降から「いじめ」が社会問題として取り沙汰されたこともあり、日頃の鬱憤をためたクラスメイト同士が殺し合う、騙し合う、そういうストーリーが増えてきたように思える。『人狼ゲーム』や『シグナル100』、『トモダチゲーム』などがそれだ。

 一方で『カイジ』や『GANTZ』をはじめとする、中高生以外の幅広い年齢層のキャラクターが登場する作品も増えていった。その先で登場した『奴隷区』や『人間カード』などは、デスゲームものでも中高生か大人かで欲望の矛先に違いが生じることを表してくれている。しかし、基本的に本ジャンルは、現実では倫理的にやってはいけないことをやって良しとする、欲望を思う存分さらけ出す人間性を描いたものが多く、人気が高い。リアルの世界ではやってはいけないものほど、創作の場で見たくなるのが人の性。そのため、こぞって映像化されている畑でもある。

 映画も、それを原作とした漫画も、同ジャンル内で多種多様な舞台や設定が登場するようになった。ときには島を舞台にしたり、特殊能力を用いるSF的な要素が加わったり、異世界に飛ばされる、または自分のいる空間だけが異世界化したり。

 近年は、従来のネタにスマホやアプリといった最新ガジェットが加わることで新しく進化したものも多い。ソーシャルゲームの要素を取り入れた『ダーウィンズゲーム』、ネット上の個人情報取り扱いを巡る『生贄ゲーム』、YouTubeに近い動画配信サイトをテーマにした『DEAD Tube ~デッドチューブ~』などがそうだ。ただ、様々な変わりネタが出てきたとしても、一貫して「提示された条件にクリアしなければ殺される」という大まかなルールがデスゲームものには存在してきた。

海外からも人気の高い理由とは 「生きる」ことに価値を置くテーマ性

 今回、『今際の国のアリス』が海外でもここまでヒットしたことを考えると、過去に海外で高い評価を得たデスゲームもの『バトル・ロワイアル』との間に共通点がある。それは「殺し」ではなく「生き抜くこと」に価値を置いた作品であることだ。

 先述の通り、デスゲームジャンルは『バトル・ロワイアル』から派生し、趣旨と意味性がより細分化されてきた。しかし、その中でも絶えず生み出されてくるのは、単純に憎みあったクラスメイト同士の殺し合いではなく、理不尽で絶対的な存在である「何か」に立ち向かっていく類の作品だ。『リアル鬼ごっこ』や『神さまの言うとおり』、『カラダ探し』、『地上100階~脱出確率0.0001%~』、そしてあの『バトル・ロワイアル』もそうなのである。

 その理不尽な何かは、時に人外の存在であったり、呪いであったり、はたまた狂った社会である。『バトル・ロワイアル』は早い段階から、大人によって不条理に殺し合いを強いられ、最後には複数人で生きぬくことに成功した。その続編では、彼ら子供たちにそうさせたシステム(社会)を破壊しようと、立ち上がる。上で挙げた作品も、あくまで殺し合いをすることが重要なのではなく、その中で自分たちが安心して生きていける生活を取り戻すこと、生きることが最も大切なこととして描かれている。そういう深みと、その過程で築き上げられる絆は国境を超えて理解され、応援されやすいものなのではないだろうか。

 Netflix『今際の国のアリス』では、特に第3話が国内外ともに注目されている。その内容には詳しく触れないが、まさに主人公と彼の仲間が「生きること」についてもがき苦しむ、涙なしでは見られない名エピソードだった。残虐さだけではなく、その奥にあるヒューマンドラマを描いたからこそ、本ドラマはヒットしたのかもしれない。

 主人公3人組が、“まだ”人の往来が激しい渋谷の街に繰り出す長回しのシーンが印象的な、第1話の冒頭。これからデスゲームを体験する彼らが通ったセンター街は、かつて『バトル・ロワイアル』で生き残った七原秋也と中川典子が映画のラストで身を隠しながら歩んだ場所でもある。BR法というシステムへの復讐を誓った彼らが通った道を、有栖も追っていくことができるのだろうか。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。デスゲームに参加したら多分中盤まで生き残る。InstagramTwitter

■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』
Netflixにて、シーズン1全世界同時配信中
原作:麻生羽呂『今際の国のアリス』(小学館『少年サンデーコミックス』刊)
監督:佐藤信介
出演:山崎賢人、土屋太鳳、村上虹郎、森永悠希、町田啓太、三吉彩花、桜田通、朝比奈彩、柳俊太郎、渡辺佑太朗、水崎綾女、吉田美月喜、阿部力、金子ノブアキ、青柳翔、仲里依紗
脚本:渡部辰城、倉光泰子、佐藤信介
音楽:やまだ豊
撮影監督:河津太郎
美術監督:斎藤岩男
アクション監督:下村勇二
VFXスーパーバイザー:神谷誠、土井淳
エグゼクティブ・プロデューサー:坂本和隆
プロデューサー:森井輝
企画・制作:(株)ROBOT
(c)麻生羽呂・小学館/ROBOT
Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/今際の国のアリス

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