Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

伊藤沙莉と佐久間由衣、ガールズラブをどこまで描ける? 初主演『トランジットガールズ』への期待

リアルサウンド

15/11/29(日) 16:00

transitgirls.jpg『トランジットガールズ』公式HP

 渋谷区で同性のパートナーシップ条例が制定されてから、日本国内におけるLGBTへの関心が急激に高まったような印象を受ける。それを証明するかのように、今期は民放テレビドラマでこの題材を扱っている作品の活躍が目立つ。日本テレビで放送されている『偽装の夫婦』では、同性愛者の男が元恋人であった女性と偽装結婚を行うラブコメディで、ここまで10%以上の高視聴率を維持し続けている。

 もっとも、男性同士の恋愛を描いた作品というのは、国内の一般映画のフィールドでは木下恵介の『惜春鳥』を皮切りに、頻繁に題材として取り上げられてきたが、それでもテレビドラマという場においてはあまり重く取り上げられてはこなかった。一方で、女性同士の恋愛に関しても同様で、前述の『偽装の夫婦』の中でも比重は大きくないが描かれているが、こちらは国内の一般映画の中でもあまり深く描かれることはされておらず、どちらかといえば少女漫画的な思春期の少女の、同性への憧憬的なものとして描かれてくることが多かった。

 それを踏まえると、フジテレビで現在放送中の『トランジットガールズ』が、「連続ドラマ史上初めてガールズラブを描く」と紹介されることは、嘘偽りのない看板である。高校三年生の主人公と、義理の姉との恋模様を描くこのドラマは、『テラスハウス』の前田真人が演出を務めているだけあって、随所に〝テラハ〟要素を匂わせる。ひとつひとつのシークエンスで描かれる空間がかなり限定され、カット割りも極力排除しているのであろうか、引きのショットで全体をとらえる長めのカットが目立ち、深夜ドラマという位置付けもあってか、どこかインディーズ映画のような雰囲気も漂わせているのだ。

 父親の再婚によって新しく家にやってきた母娘に困惑したり、幼なじみや友人との関係の中で、異性を理解することの難しさを感じる少女・小百合の姿を描くというのは、いかにも少女漫画で扱われてきたような典型的な描写であり、そこに義理の姉・ゆいとの同性愛を描くという、これまでに避けられてきたテーマを入れることによって、このドラマが少しばかり画期的に映るのである。

 ちょうど半分の第4話までの放送を観ていく中で、直接的に描かれるのは二度のキスシーンのみである。それ以外は二人の距離が徐々に近付いていくことをじっくりと、それでいて淡々と描いているのであって、前述したようなこれまでの国内のガールズラブ作品に多かった、憧憬的な感情はほとんどないものとして見受けられる。それでも、どこか2年前に日本に上陸した話題作『アデル、ブルーは熱い色』から影響を受けているのではないかという気がするのは、このキャスティングのせいであろうか。

 主人公・小百合を演じるのは9歳の頃からドラマを中心に活躍している伊藤沙莉。今回が初めてのドラマ主演となる彼女は、おとなし目のルックスとハスキーボイスのギャップで、決してアイドル性が高くないだけに、これまでは主人公の同級生役などの脇を固めることが多かった印象が強い。しかしながら、アイドル全盛時代の現在でアイドル性の高い女優を探すことは難しいことではない。逆に、彼女のように街の中で見かけても特別気にかけることもないが、一度まじまじと見つめてみると忘れがたいインパクトを残す女優を見つけ出すことのほうが稀有である。何よりも彼女の強みは、今回のドラマの主人公として相応しい、都会的な空気に浸透するクールさが垣間見えることである。

 もう一人の主人公である、義姉ゆいを演じるのはViViの専属モデルである佐久間由衣。これまでモデル業をメインに行ってきた彼女は、昨年公開された『人狼ゲーム ビーストサイド』以来となる演技経験となり、こちらも主演級の演技は初めてとなる。まだ表情の作り方にぎこちなさが残るが、その出で立ちに何とも言えない神秘的な魅力を感じる。本作以降も演技を続ける機会があり、彼女のモデルとしての強みを全面に出せる配役さえ得られれば、水原希子級の大化けも期待できるのではないだろうか。

 何より一番驚いたことは、劇中では3歳差の義姉を演じる佐久間が、実際には小百合役の伊藤よりも年下ということである。たしかに佐久間は現役モデルらしい大人びた風貌で、伊藤も実年齢よりも何だか若く見えるということもあって、決してミスキャスト感は出ていない。姉妹・兄弟を演じる役者の実年齢が役柄と逆転していることはよくあることではあるが、物語の中心に姉妹・兄弟があり、かつ年齢的なギャップを感じやすい世代のそれを演じさせる上では、なかなか挑戦的な試みに思える。

 土曜深夜枠という観落としやすい時間帯で、かつ他のドラマより遅い11月から始まったというハンデはあるものの、25分という短さだけに一気に追いかけることも難しいことではないだろう。後半4話で物語をどう帰結させるのか、注目したいところである。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

アプリで読む