Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

ポイントは“ムツゴロウ精神”? 『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は挑戦的な作品に

リアルサウンド

18/7/22(日) 10:00

 「あれだけ人が死んだのに、普通に開園した!?」全世界の人間がそう突っ込んだ『ジュラシック・ワールド』(15年)から早3年。ついに続編『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(18年)が公開された。期待に違わぬ一本だったが、しかし……正直に言うと、個人的に少々困った映画でもあった。ざっくばらんに言うなら、「大いに楽しんだ。面白かった。けれど、どうしても引っかかる所がある」だ。

参考:大爆発スタート『ジュラシック・ワールド/炎の王国』 興収100億&年間ナンバー1の可能性も?

 遺伝子工学で復活させた恐竜と触れ合うテーマパーク「ジュラシック・パーク」。開園直前に事故が起きて人が死にまくり、その後もあれやこれやあって人死にが続いた。しかし、恐竜という抗いがたい魅力によって、パークはさらにパワーアップした「ジュラシック・ワールド」として復活。世界的な大人気スポットになるも、例によって事故が起こって人が死にまくり。またも閉園してしまった。そんなジュラシック・ワールドが今度は火山の爆発で沈んでしまうという。このまま恐竜を見捨ててはおけないと、前作の主人公コンビ、オーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は恐竜保護へ向かうのだが……。

 前半は火山のマグマと恐竜が同時に襲いかかってくるパニック・アクション。監督を務めたJ・A・バヨナは傑作『インポッシブル』(12年)で津波の恐怖を描いた経験があり、ここではディザスター・ムービー監督としての手腕を遺憾なく発揮している。次から次へと襲いかかる危機また危機。全速力で殺しに来る肉食恐竜から、「体の自由が利かない状態のところに、ジワジワとマグマが迫ってくる」と言った大ネタ/小ネタを織り交ぜて、まさに息もつかせない。そして主人公らが「ある光景」を見る哀しくも美しい名シーンを区切りにして、映画のトーンはガラっと変わる。後半からバヨナ監督は、映画そのものを自身の得意ジャンル、すなわちゴシック・ホラーに引きずり込む。『永遠のこどもたち』(07年)を彷彿とさせる舞台を用意し、恐竜との追跡劇を心霊ホラー風に描いてみせる。何せ前半が恐竜大行進&火山大噴火という特盛セットなので、やや地味に見えるのは事実だが、これはこれで恐ろしくスリリング。大いに楽しめた。

 ――と、ここまでは手放しで絶賛しておきながら、一方でどうしても引っかかった点もある。それは主人公たちの行動・思想に共感できなかったからだ。本作は「再生させた恐竜を、再び絶滅から救う」というのがメイン・プロットになっている。しかし、身も蓋もない話になるのだが、私は「火山が爆発するなら、そこはもう自然に任せていいのでは?」と思ってしまった。もちろん主人公たちが恐竜を助けに向かう心理は理解できる(丁寧に描写されてもいる)。前作に登場したラプトルのブルーは、さらに可愛くなっているし、助けたいと思うのも当然だ。しかし――。たとえば我が国でもこんな故事がある。かつてムツゴロウさんはライオンに指を食いちぎられた。私なら生涯ライオンに近づくまいと誓うだろうが、ムツゴロウさんは違った。ライオンを許し、その後も触れ合いを続けている。本作の主人公たちは、こうしたムツゴロウ精神を持っていた。しかし、私はムツゴロウたれなかった。

 しかし、逆に言うなら、こういうふうに思うのは個人の思想信条という極めて主観的な部分にまで踏み込まれた証だ(いわゆる「好き嫌いがハッキリ分かれる映画」タイプだと思う)。事実、本作はこれまでのシリーズに“ケジメ”をつける側面も併せ持っている。そうした作り手の覚悟と、先に書いたような確かな技術が一体となった挑戦的な作品だと言えるだろう。あとはその挑戦に対し、こちらがどう応えるかの問題だ。とりあえず、今は誰かと居酒屋で、この挑戦への感想を語り合いたい。そういう気持ちにさせられる力作だ。(加藤よしき)

アプリで読む