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松任谷由実『深海の街』で示した「音楽で何を表現すべきか」 時代性と自らのポップセンスを掛け合わせた“2020年の写し鏡”

リアルサウンド

20/12/2(水) 12:00

 前作『宇宙図書館』から4年。松任谷由実がニューアルバム『深海の街』を完成させた。通算39作目のオリジナルアルバムとなる本作の本格的な制作は、今年の7月からスタート。コロナ禍における心情、そして、“この時代を音楽として記録し、未来のビジョンを示したい”という使命感にも似た思いが強く反映された、2020年の記念碑的な作品となった。

 「時空と場所を超えた普遍的な英知」をモチーフに、深遠にして壮大なポップワールドを描き出した『宇宙図書館』(2016年)、そして自己最長・最多本数の42都市80公演を走り抜けた全国ツアー『松任谷由実 CONCERT TOUR 2016-2017 宇宙図書館』の後も、ユーミンは精力的な活動を続けてきた。2018年4月にはデビュー45周年を記念したベストアルバム『ユーミンからの、恋のうた。』を発表。彼女自身が“今の時代にこそ聴いてほしい”という視点で選曲した本作は、時代の空気を反映しながら、女性の生き方に大きな影響を与えてきた松任谷由実の奥深い音楽性を改めて示していた。さらに2018年9月からベスト盤を携えた全国ツアー『松任谷由実 TIME MACHINE TOUR』を開催。これまでのライブ演出の再現を数多く取り入れた“ライブ版ベスト”と称すべきステージは、1970年代から一貫して独自のエンターテインメント性を追求してきたユーミンの集大成というべき内容だった。

 その『TIME MACHINE TOUR』のMCで「まだまだやめませんよ!」と宣言した松任谷由実は、言葉通り、その後もまったく止まることなく活動を継続してきた。今年に入ってからも、手嶌葵に「散りてなお」(映画『みをつくし料理帖』主題歌/作詞作曲・松任谷由実)、一青窈に「かたつむり」(作詞・一青窈、作曲・松任谷由実)を提供。また、シミュレーションゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』新主題歌「あなたと 私と」を制作するなど、幅広いジャンルでコラボレーションしながら、自らの音楽世界をさらに広げていたのだ。

 デビュー50周年を目前にしてもなお、豊かな創造性を向上させ続けているユーミン。その奥深い表現は、ニューアルバム『深海の街』でさらなる高みに達している。もともと前作『宇宙図書館』の次の作品は、日本のポップスにリゾートの概念を持ち込んだ『SURF&SNOW』(1980年)の続編になる予定だったという。しかし、その構想はコロナ禍によって吹き飛び、世界中のアーティストと同じく、「エンターテインメントはどうあるべきか」「音楽を通して、何を表現すべきか」という根本的なテーマと向き合うことになった。自分自身と深く向き合う長い時間の末に創造されたのが、まるで2020年の写し鏡のような本作『深海の街』というわけだ。

 アルバムはちょうど100年前の世界をモチーフにした「1920」から始まる。第一次世界大戦の爪痕が残り、スペイン風邪、経済恐慌といった混乱のなかで行われたアントワープオリンピック。2020年の世界と符号する「1920」は、本作の世界観を強く提示すると同時に、アルバム『深海の街』の幕開けに相応しい曲と言えるだろう。さらに2019年に火災に見舞われたノートルダム大聖堂とコロナ禍の世界を結び付けた「ノートルダム」、人と人が離れ離れになってしまった現状を映し出すような「離れる日が来るなんて」が続き、まるでドキュメントを見ているようなイメージは濃くなっていく。

 このアルバムに込められたユーミンの思い、それが最もダイレクトに出ているのが、アルバムの最後を飾るタイトル曲「深海の街」だ。まさに深い海に沈んでいくような音像からはじまり、しなやかなバンドグルーブとともに上昇。ゆっくりと呼吸を始めた〈君〉は、力強いストロークで波をかきわけ進んでいく。この曲が描き出す光景は、コロナ禍による閉塞感から抜け出し、新たな世界に向かっていきたいという意思そのものだ。

松任谷由実 – 深海の街

 同時代性を強く映し出すアルバム『深海の街』。全体的にシリアスな雰囲気が漂っているが、一方でユーミンらしい色彩豊かなポップセンスもしっかりと息づいている。80年代AORのエッセンスを軸にしながら、ベースラインを際立たせることで現代的なポップスへと昇華させた「NIKE 〜 The goddess of victory」、ラテンロックやソウルが官能的に絡み合う「What to do? waa woo」、和の叙情性を美しく描いた「散りてなお」のセルフカバー、そして渋いホーンセクションや濃密なグルーブをたたえたサウンドが心地いい「REBORN 〜 太陽よ止まって」。ジャズ、ソウル、ファンク、ロックなどを自在に取り入れながら、日本のポップスのクオリティを上げ続けてきたユーミンだが、デビュー以来積み重ねてきたポップスのメソッド、ミュージシャンとの関係性、プロデューサー・松任谷正隆とのリレーションシップは、本作においても確実に更新されている。その根底にあるのは、“どんな状況になっても、華やかでゴージャスな音楽でリスナーを楽しませたい”という矜持なのだと思う。

松任谷由実 – 知らないどうし
『刀剣乱舞-ONLINE-』新オープニング映像「あなたと 私と」松任谷由実

 「知らないどうし」(TBS金曜ドラマ『恋する母たち』主題歌)、「あなたと 私と」(ゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』新主題歌)をはじめ、話題のタイアップ曲も収録されている。コロナ禍という未曽有の事態と向かい合い、自身の感情を抉るように制作されたアルバム『深海の街』は間違いなく、多くのリスナーに強い感動を与えるはず。そしてこの先もずっと、おそらく50年後、100年後も“2020年を記録したポップアルバム”として聴き継がれることになるだろう。

 2021年9月からは、全国60公演に及ぶコンサートツアー『松任谷由実 コンサートツアー 深海の街』がスタート。本作の世界観がステージでどう表現されるのか、今から楽しみでしょうがない。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■リリース情報
松任谷由実『深海の街』
2020年12月1日(火)発売
<収録曲>
1.1920
2.ノートルダム
3.離れる日が来るなんて
4.雪の道しるべ
5.NIKE ~The goddess of victory
6.What to do? waa woo
7.知らないどうし
8.あなたと 私と 
9.散りてなお
10.REBORN ~太陽よ止まって
11.Good! Morning
12.深海の街

【通常盤(CD)】¥3,200(+tax)

【初回限定盤(CD+DVD)】¥4,500(+tax)
・特殊ジャケット仕様、三方背ケース収納
・DVD収録内容
『Documentary of 深海の街』
「深海の街」「知らないどうし」Music Video

【完全限定盤クリスマススペシャルBOX(CD+Blu-ray+2LP+Art Book)】¥12,000(+tax)
・アナログレコード大ボックス仕様限定パッケージ
・Blu-ray収録内容
『ドキュメントof 深海の街』
「深海の街」MUSIC VIDEO
・アートブック
・クリスマスキャンペーン応募シリアルコード封入

※全アイテム共通特典:全国コンサートツアーチケット先行応募抽選シリアルコード封入(通常盤は初回生産分のみ封入)

■ライブ情報
『松任谷由実 コンサートツアー 深海の街』
2021年9月より全国60公演に及ぶ全国ツアー開催
日程はこちら

『SURF&SNOW in Naeba Vol.41』
2021年2月8日(月)、9日(火)、12日(金)、13日(土)、16日(火)、17日(水)、20日(土)、22日(月)
・開場20:30/開演21:00
・会場:苗場プリンスホテル ブリザーディウム
・チケット:¥9,900円(税込)全席指定
※6歳未満のお子様はご入場できません
詳細はこちら

■関連リンク
公式HP
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