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長濱ねるは、なぜ欅坂46にとって特別な存在だったのか 卒業イベント開催を機に考える

リアルサウンド

19/7/30(火) 7:00

 8枚目シングル『黒い羊』の活動をもって卒業を表明している欅坂46の長濱ねるが本日7月30日、卒業イベント『ありがとうをめいっぱい伝える日』を開催する。会場の幕張メッセには誰でも入場できるスペースが設置されたり、野外展示場にてオフィシャルグッズ・オフィシャルフードの販売もされるなど、ある種のイベント感覚で彼女の門出を祝うようだ。現地には彼女の最後の舞台をひと目見ようと多くの人々が駆けつけるだろう。

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 ただ、正直なところ、彼女がステージに立つ姿をもっと見続けていたかったし、これからもグループの一員として活動していくものだといまだに思っている。本日はいささかアンビバレントな心持ちだ。

 長濱ねるは、欅坂46にとって特別な存在である。長濱ねるという人を考えるとき、彼女がどんなアイドルであったか考えるよりも、彼女がグループにとってどんな存在だったかを考える方とわかりやすい。ひと言で表すなら、欅坂46に「知性」と「安定感」をもたらした存在であった。

 高校生クイズで長崎県大会の決勝に進出した経験を持ち、テレビ番組『くりぃむクイズ ミラクル9』へ何度も出演。自身のブログでも語彙力の豊富さや文章のセンスがよくファンの目に留まっていた。インタビューの受け答えもひとつひとつが丁寧で、言葉選びからも頭脳明晰さが伝わる。しかも、鼻につくような頭のよさではなく、人に対する労わりや謙遜がベースにあるタイプの知性で、集団の中で決してみずから目立とうとしない、穏やかな姿勢があった。

 だからといって消極的なわけではなく、活動には常に全力で取り組んでいた。当初、欅坂46とけやき坂46との両グループを兼任していた彼女。二つのグループの活動を行き来しながら専任メンバーと遜色ない安定したパフォーマンスを維持し、メンバーやスタッフからの信頼も厚かった。

 2017年の9月には欅坂46専任となったが、その際公表された理由に「欅坂46の躍進、そして、ひらがなけやきの急成長により、兼任メンバーである長濱ねるの稼働が大幅に上がりました。夏の全国アリーナツアー後、漢字欅の稼働もさらに多忙を極め、これ以上長濱が漢字欅とひらがなけやきを兼任しての活動は本人の体調を考えた結果、困難と判断しました」とあるのが非常に象徴的(参照)。彼女自身がそもそも与えられた課題をしっかりとこなせるからこそ、多くの役割を任されていたと考えられる。

 彼女のようなタイプはなかなか他に見当たらない。似たような存在として菅井友香というメンバーがいる。彼女も高い稼働率のなかで体調を崩さず、常に一定のクオリティを保ったパフォーマンスを見せる「安定感」がある。が、長濱ねるという人は「知性」や「安定感」に加えて、「地元愛」だったり「文化愛」といった要素も持ち合わせている。

●彼女がもたらしたのは”知性”や”安定感”だけではなかった
 2017年の12月には個人写真集『ここから』を発売し、自身の故郷である長崎の五島列島を中心にロケを敢行。冠番組『欅って、書けない?』(テレビ東京系)でも同地を訪れ、故郷の魅力を存分にアピールしていた。また、ライブ中のMCなどでも標準語に混じって方言が飛び出すこともしばしば。デビュー時から何かと”渋谷”がキーワードとなり都会的なイメージが持たれる欅坂46で、対照的な”地方”の要素を変わらず持ち続けた人でもあったのだ。

 また、ブログにはよくオススメの音楽を公開していた。J-POPに限らず邦ロックや洋楽まで幅広いアンテナを持ち、バンドTシャツを着ている姿も散見された。さらに、読書も趣味であった。同じく読書好きとして知られるメンバーの織田奈那をして「ねるの方がすごい」と言わしめるほど。愛読書に西加奈子『おまじない』や重松清『エイジ』を挙げている(参照:https://www.keyakizaka46.com/s/k46o/news/detail/O00062)。メンバーに先んじて積極的に音楽や読書といったカルチャーへの関心を示していたのだ。

 このように多くの要素を持っていた長濱ねる。よく彼女を(容姿やソロ曲のイメージなどから)80年代の昔ながらのアイドル像に重ね合わせる声を聞くが、むしろ彼女は”可愛いことが取り柄”だったアイドルのイメージを幾重にも更新させるような、現代的でハイスペックなアイドルであった。

 彼女がいることで欅坂46は、単に”クール”なだけではない、都会的なだけではない、多くの側面を持ったグループに成り得たのである。欅坂46を何倍も面白くさせる存在として、彼女は重要な役割を担っていた。

 グループに所属しながら、ファンの前で笑顔を振り撒く姿をまだまだ見続けたかったと思っているファンは少なくないだろう。筆者もその一人である。(荻原 梓)

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