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いま、最高の一本に出会える

反田恭平×髙木竜馬×牛牛が織りなす『ピアノの森』の音楽世界 原作とリンクする圧巻の演奏を目撃

リアルサウンド

19/9/12(木) 13:00

 一色まことの同名マンガを原作とするアニメ『ピアノの森』は、森に棄てられたピアノをおもちゃ代わりにして育った主人公・一ノ瀬海(カイ)が、様々なライバルたちとの出会いの中でその才能を開花させ、やがてショパンコンクールで世界に挑む姿を2シーズン・全24話で描いた、本格派のクラシック音楽ドラマ。劇中のピアノ演奏を、第一線で活躍するピアニストたちが担当し、登場人物それぞれになりきって演奏したことでも話題を呼んだ。すでにNHK総合テレビでの本放送は終了した(現在もNetflixにて独占配信中)が、メインキャラクターのピアノ演奏を収録したCDや公式楽譜集なども好調発売中で、ファンの熱気はまだ冷めやらぬといったところ。そんななか、担当ピアニストたちが一堂に会し、ドラマを彩った楽曲の数々を演奏する夢のコンサートが東京オペラシティコンサートホールで、8月28日の昼・夜2回にわたって開かれた。

 当日、夜の部は18時からと早めの設定だったが会場は満員。ステージ上に設置されたスクリーンに本編のダイジェスト映像が映し出されるのを合図に公演はスタートした。トップバッターはカイのピアノの師である阿字野壮介のメインピアニストである反田恭平。デビューして4年、『題名のない音楽会』や『情熱大陸』などメディアでも多数とりあげられ、今のクラシックシーンを代表する演奏家のひとり、といっても過言ではない人気ピアニストの登場に場内は沸く。そんな彼が披露したのは、阿字野が小学生のカイに最初に弾いて聴かせたショパン作品であり、後にショパンコンクールの第1次予選でカイも演奏する「ワルツ第6番 変ニ長調 作品64-1『小犬のワルツ』」。現在、ショパン音楽大学(旧ワルシャワ音楽院)で学ぶ反田の本場仕込みのプレイに聴衆の耳は釘付けだ。

 続いての登場は、転校した小学校でカイと出会い、良きライバルとなる雨宮修平。有名ピアニストの父を持ち、幼い頃から英才教育を受けて何不自由なく育ちながらも、自分のピアノを愛せない修平。そんな彼のメインピアニストは1992年生まれの髙木竜馬。数々の国際コンクールで優勝を重ね、現在オーストリアとイタリアで研鑽を積む髙木のスケールの大きな演奏が、雨宮修平というピアニストに底知れぬポテンシャルを与えていた。ここでもショパンコンクールの第1次予選で修平が演奏した「バラード第1番 ト短調 作品23」を見事に披露。2003年に日本公開されたロマン・ポランスキー監督の映画『戦場のピアニスト』でも、ひときわ印象深かったドラマティックな構成を持つ名曲だ。

  次なる主役は、ショパンコンクールの有力な優勝候補として描かれていたパン・ウェイのメインピアニストを務める同じ中国出身の牛牛(ニュウ・ニュウ)。2007年に弱冠10歳で世界的なレーベル<EMIクラシックス>(※当時)と契約して翌年CDデビュー。12歳でサントリーホールのリサイタルを成功させた神童も、米国ジュリアード音楽院を卒業して今や20代。2018年に名門<DECCAレコード>からリリースしたアルバムも好調だ。そんな牛牛が披露したのは、パン・ウェイが同コンクールの第1次予選で演奏した「エチュード ハ短調 作品10-12『革命』」と、同第2次予選で最初に弾いた「ポロネーズ 第5番 嬰ヘ短調 作品44」。「革命のエチュード」も有名曲だが、「ポロネーズ 第5番」は養父のもとで過酷な子ども時代を送ったパン・ウェイが、初めて阿字野の演奏をなぞって弾いた劇中の重要曲だけあって、会場は熱気に包まれた。

 ここで再び反田恭平がステージに。「阿字野壮介ではなく、一ノ瀬海になったつもりで弾きます」と宣言した上で披露したのは、カイが第1次予選のラストに演奏した「プレリュード ニ短調 作品28-24」。ショパンがロシア軍に制圧されたポーランド国民の憤りをぶつけるかのように書いた壮絶な音楽を、劇中のカイさながらに鬼気迫る勢いで演奏する反田の様子に、会場も騒然。熱い興奮のなかで、コンサートの第1部は終了した。

 休憩をはさんで、第2部には特別な趣向が登場。同コンクールのファイナルでは、ショパンが遺した2つのピアノ協奏曲のうち、どちらかを選んでオーケストラと演奏するのが慣わしであり、劇中でカイはショパンが20歳のときに作曲した大作「ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11」を選んだ。

 ここではそのピアノ協奏曲第1番を、第1楽章:牛牛、第2楽章:髙木竜馬、第3楽章:反田恭平と、3人のピアニストが楽章ごとに引き継いで完奏するというドリームプログラムが実施された。ピアノが登場するまでにオーケストラのみの演奏が4分も続く第1楽章、ロマンティックな第2楽章、祖国の民族舞踊をとりいれた躍動感溢れる第3楽章、異なった魅力を持つ各楽章がそれぞれのピアニストの個性によって、一段と輝く。ここまで来ると、もはやTVアニメの企画を超えた、スター演奏家による饗宴コンサートの域に到達。会場からはクラシックファンの嬉しい溜息が聞こえてくるようだった。ステージで共演したのがフルのオーケストラではなく、1stヴァイオリン4名、2ndヴァイオリン4名、ヴィオラ2名、チェロ2名、コントラバスからなる小編成のアンサンブルだったので、より親密で聴きやすい雰囲気だったのも良かった。

  アンコールは反田恭平と髙木竜馬による「ラフマニノフ:2台ピアノのための組曲 第2番 作品17 第3曲 ロマンス」。阿字野のカムバックリサイタルのアンコールに登場したカイが、ピアノを2台くっつけて並べて師と共演した場面が、そっくりそのままステージで再現され、会場は最後まで大きな盛り上がりをみせた。

 そして終演後、スクリーンには「2020年1月12日(日)追加コンサート決定!」の文字が。熱狂は来年まで続く、『ピアノの森』ピアノコンサートはまだ、終わらない。

(取材・文=東端哲也)

『ピアノの森』公式サイト

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