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もう頑張れない日の処方箋 猫のミィちゃんが教える「がんばらない生き方」

リアルサウンド

20/12/14(月) 19:30

 頑張らないことを頑張ろう――。そう思っても、限界だと叫ぶ心に蓋をし、ムチを打ちながら頑張らなければいけない日もある。なんのために、誰のために頑張っているのだろう……。そんな問いをひとり、心の中にしまい込んで笑顔を張り付ける日だってある。

 そんな辛い日、心に寄り添ってくれるのが『ミィちゃんは今日もがんばらない』(esk/亜紀書房)という猫漫画。作者のesk氏は、インスタフォロワー数7万人越えの人気イラストレーター。温かみのある作品を多数披露し、ファンの心を掴んでいる。

 本作の主人公は「がんばらない」を座右の銘にしている猫のミィちゃん。ミィちゃんは作中で様々な名言を口にし、張り詰めた心を楽にしてくれる。

 名言と聞くと、堅苦しかったり、妙に感動的だったりするのでは……と思う方もいるかもしれないが、ミィちゃんが口にする言葉はストレートで、クスっと笑えるユーモアが含まれているため、心に染み入りやすい。飾り立てない等身大の言葉で「もう頑張れない日の私」を包み込んでくれるのだ。

「がんばらない自分」を許せるようになるミィちゃんの名言

 特に印象的だったのが、会社を休んでしまった人に向けた名言。体調不良などで欠勤してしまった日は複雑な感情がこみあげてくることも多い。自分がいなくても会社という組織がまわっているという事実に、なんとも言えない寂しさを感じ、「私の価値ってなんだろう」と思ってしまうこともあるものだ。

 そんな自己卑下に対してミィちゃんは、違った視点を踏まえたフォローをくれる。

あなたがもし一日でも休むと会社は倒産し 世界的大不況の引き金となります!!…っていう状況よりよくない?

 自分がいることでまわる世界があるのと同じくらい、私という存在がいないことでまわる世界があることも大切なのだと気づくと、罪悪感や虚しさがほぐれ、心が楽になる。

 また、ミィちゃんの自己肯定感の高め方も興味深い。でべそかわいい。ぷよぷよのおなかがきもちいい。きょうもよく寝た、えらい!ミィちゃんは、そんな言葉で自分を褒めちぎる。なぜなら、自分だけは自分の味方でいてあげたいから。この理由を目にして、ハっとした。私はいつの間にか自分自身を敵視し、責め抜いてはいないだろうか……と考えたくなったのだ。

 私たちが生きている社会では努力が美徳だと思われやすいため、つい頑張ってしまう。しかし、「頑張る」には怖い魔力がある。口にしすぎたり、言われたりしすぎると「頑張っている私」がデフォルトになり、少しでも頑張れていないと感じると、自分を罰したくなる。時折、疲れて「頑張らないことを頑張る」と心の内で決めても、知らず知らずのうちにまた頑張ってしまい、気を抜けない私に自己嫌悪することも多い。

 私たちは、もっと「頑張らないとダメだ」という概念から自分を解放してあげてもいいのではないだろうか。頑張ることよりも、自分で決めたルールに縛られない生き方を求めることに重きを置いてみると、「頑張らない」を自分に許してあげやすくなる気がする。そうしたら、今よりも息がしやすい未来が掴めるはずだ。

がんばってもがんばってもできないことって、今の人生ではできないほうがいいことなのかもしれないよ

 そんな言葉で「ダメなように思える自分」を癒してくれるミィちゃんの生き方には、日常を楽しく変えるコツがたくさん詰まっている。

 もうこれ以上、頑張れない―。そう感じた時こそ、ぜひ本作を手に取り、自分をいい子いい子してあげよう。

■古川諭香
1990年生まれ。岐阜県出身。主にwebメディアで活動するフリーライター。「ダ・ヴィンチニュース」で書評を執筆。猫に関する記事を多く執筆しており、『バズにゃん』(KADOKAWA)を共著。

■書籍情報
『ミィちゃんは今日もがんばらない』
著者:esk
出版社:亜紀書房
価格:900円(税別)
出版社ページ

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