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ピーター・ドイグ展

20/8/1(土)

「この展覧会、実は映画ポスター展でもあるんですよ」と人に言われて、これといった知識もないまま会場に足を運んだ。まず、風景画家としては多分にフィクショナルな光景を、やや謎めいた色使いで描く人だと分かる。これだけでもシネマの視点からかなり楽しめてしまうが、ひとつひとつ作品が大きいのでその謎めいた印象がさらに増幅される。 どうやら、いくつかの作品の構図や人物配置から見ても、相当映画の好きな画家らしい。とはいえ、トリニダード&トバゴの墓地の外壁沿いの風景は『東京物語』を念頭において描いたとか、暗い湖に浮かぶ小舟は『13日の金曜日』のキャンプ場から着想されたとか言われても、動機も分からなければその意味するところも見えてこない。このなかなか食えない感じも微笑ましい。 そして、映画ファンは全員行きましょう、最後のコーナーを目指して。ドイグは、移住したトリニダード&トバゴに名画座がないので、自分のアトリエで「スタジオフィルムクラブ」という自主上映会を定期的に行っており、そのポスターを毎回即興のドローイングで制作していた。北野武の顔面アップの『座頭市』、モノクロームの味を活かした『ストレンジャー・ザン・パラダイス』、評判になった海外版ポスターの描き直し(!)である大林宣彦の『HOUSE ハウス』、カトリーヌ・ドヌーヴの顔面が真っ黒の『昼顔』など、総計40点。してやられた!という喜び、そして脱力感とともに展覧会の出口に向かえば、まあ概ねいい一日は保証されることだろう。

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