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菅田将暉、米津玄師、椎名林檎、宇多田ヒカル……アーティスト同士のコラボ作が相次ぐ背景

リアルサウンド

19/8/28(水) 7:00

 先日発表されたビルボードジャパンの楽曲チャート「JAPAN HOT 100」(8つの指標からなる総合ソング・チャート)の上半期ランキングにおいて、「Lemon」で1位を獲得した米津玄師。自ら作詞作曲、さらにはイラストまで手掛けるなど「自己完結」が可能なアーティストだが、そんな彼にとってクリエイティビティを刺激される「戦友」のような存在が、先日最新アルバム『LOVE』をリリースした菅田将暉である。

(関連:宇多田ヒカル、崎山蒼志、Rude-α……作品や活動から感じる“キュレーター”としてのセンス

 米津玄師は2017年に菅田将暉とのデュエット曲「灰色と青」を発表。米津は菅田に「ライバルになってほしい」と告げたというエピソードが菅田から明かされており、2人の深い関係性が窺える。

 『LOVE』には米津玄師が提供した「まちがいさがし」が収録されているが、「キスだけで」を楽曲提供するだけでなくフィーチャリングでも参加しているのがあいみょん(彼女も同じくビルボードジャパンの「Top Artist」の上半期部門で1位を獲得した)。あいみょんは昨年のRADWIMPS『ANTI ANTI GENERATION』でも「泣き出しそうだよ」でフィーチャリングされるなど、各所からラブコールを受けている。

 米津玄師、菅田将暉、あいみょんといった当代の人気者たちに代表されるように、形式は違えど「メジャーなアーティスト」たちが「アーティスト同士のつながり」を積極的に構築しているのが昨今の日本の音楽シーンの状況である。そこで、本稿ではそういった「コラボ」について考察を深めてみたい。

 ここまで名前を出した以外にも、メジャーフィールドにおけるアーティスト間のコラボレーションは活発に行われている。たとえば、前述のRADWIMPS『ANTI ANTI GENERATION』にはONE OK ROCKのTakaも参加している。また、椎名林檎の最新作『三毒史』にはデュエットによるコラボ楽曲が6曲収録されており(彼女のオリジナルアルバムの中で最多)、その椎名林檎と昨年「獣ゆく細道」を発表したエレファントカシマシの宮本浩次も、東京スカパラダイスオーケストラ(以下、スカパラ)のボーカルシリーズへの参加などコラボに積極的な姿勢が目立つ。スカパラ楽曲には直近ではMr.Childrenの桜井和寿が参加して大きな話題を呼んだのも記憶に新しい。

 これらのコラボにはそれぞれにおいて背景やストーリーが存在するわけで、「共通の理由」というものがあるわけではもちろんない。ただ、ここ数年の間にこういった「大物」同士のコラボが続くのには何らかの「時代の空気」のようなものがあるのではないかと思う。

 一つのきっかけになったのでは? という作品として、2016年にリリースされた宇多田ヒカルのオリジナルアルバムとしては8年ぶりの復帰作『Fantôme』を挙げたい。発売前の注目度、およびリリース後の評価ともに非常に高かったこの作品において椎名林檎、小袋成彬、KOHHというタイプの異なるアーティストが参加していたことは、他のミュージシャンにとっても「こういうのもあり」という指針になったのではないだろうか。

 また、個別の作品ではなくより大きな環境について考えたときに、「歌番組の変化」「多様性の担保」「海外との同期」という3つの観点からコラボがより推進されるようになった理由を読み取れるのではないかと思う。

 まず、多くの歌番組でコラボが当たり前になってきたという事情がある。2011年頃から各局で一般化した大型歌番組において、アーティスト同士のコラボは外せない企画となっている。その流れは『NHK紅白歌合戦』にまで波及しており、椎名林檎がチームの垣根を超えたデュエットを披露するのもすっかり定番となった。こういったメディア側の変化を通じて、演者と聴き手双方に「コラボを楽しむ文化」が根付いていったのではないかと思う。

 椎名林檎は「男女のデュエット」という形で紅白歌合戦の男女対抗というフォーマットに揺さぶりをかけているが、様々なエンターテインメントにおいて「表現における多様性」が必須となってきているのもコラボが増える要因になっているように思える。複数のアーティストが一つの楽曲に同居することで、「自分の視点でしか表現できない」という壁を乗り越えて新たな価値観が提示される。そんな取り組みは、この先もより求められていくはずである。

 3つ目の切り口として、HYDEとコラボレーションした楽曲「Red Swan」を昨年リリースしたYOSHIKIの言葉を引用したい。

「アメリカのミュージシャンって特に、ヒップホップとかEDMとか、すごくフィーチャリングが多くて」「アーティスト単体よりもムーブメントを全員で起こしていく。そういうのって音楽業界に必要。特にロックに関してはそうだと思ってて」
(参照:https://realsound.jp/2018/10/post-268081_2.html)

 この発言にあるような、海の向こうでのアクションを取り入れながら日本の音楽を盛り上げていこう、という意識も程度の差はあれコラボの背景にはあるのではないだろうか。海外では楽曲のコライトやフィーチャリングが当たり前に行われ、それによって作品のクオリティが高められていっている。そういった動向は、とかく自作自演であることが重視されがちな日本における音楽づくりのあり方にも影響を及ぼしていると思われる。

 もちろんアーティスト一人の世界を突き詰めた作品にも素晴らしいものがたくさんある(そして日々生まれている)し、「話題先行」としか思えない志の低いコラボ楽曲も残念ながら存在するのもまた事実である。それゆえ、「コラボだから素晴らしい」というようなスタンスをとるのは危険である。ただ、アーティスト同士が手を組むことが、面白い音楽を生み出す一つの手法として機能するのは間違いない。この先も、「意外だけど必然性や納得感がある」というような切れ味のあるコラボレーションが生まれるのを楽しみにしたい。(レジー)

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