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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

野村正昭 この映画がよかった! myマンスリー・ベスト

私の11月第1位は、日本映画『i-新聞記者ドキュメント-』、外国映画『アイリッシュマン』に決定!

毎月連載

第18回

19/11/30(土)

11月公開の日本映画、この10本

①i-新聞記者ドキュメント-
②閉鎖病棟―それぞれの朝―
③ひとよ
④決算!忠臣蔵
⑤生理ちゃん
⑥殺さない彼と死なない彼女
⑦最初の晩餐
⑧マチネの終わりに
⑨わたしは光をにぎっている
⑩どすこい!すけひら

〈水先案内〉にも書かせてもらったように、『i-新聞記者ドキュメント-』は、まさに現在緊急発信されるべき映画だ。あの、のらりくらりと、まともに答弁する気もない内閣官房長官の記者会見を見ていると、この国の腐敗した現状に絶望させられる。誠意の、ひとかけらもない。納得できる回答が出てくるまで食い下がる望月衣塑子記者が周囲から完全に浮いて見えてしまう記者クラブの情無さにも呆れ果てる。もはや大新聞の記者はダメなんだなあ、ということは頭では分っていたんだけど、こうして具体的な映像として出てくると、やっぱり説得力がある。

『閉鎖病棟―それぞれの朝―』は、平山秀幸監督の代表作の一本として記憶されるべき秀作だろう。笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈の主要登場人物たちの配置も見事。重い過去を引きずった人たちを描きながら、彼らを見つめる作者の優しい眼差しが、こちらの心をほぐしてくれる。

『決算!忠臣蔵』は、従来の時代劇ファンにとっては賛否両論のコメディだが、忠臣蔵を新たな角度から照射した佳作だと思う。吉良上野介を後ろ姿からしか見せず、討ち入りを殆ど描かないことが、作者たちの意欲を感じさせる。堤真一演じる内蔵助と、岡村隆史演じる会計方のかけあいも上手くいっている。『生理ちゃん』も大胆といえば大胆な題材で、原作漫画は未読だが、二階堂ふみや、伊藤沙莉の照れない演技が、映画全体を活性化させている。何かこう、ほのぼのとした感情が漂ってくるあたりも面白い。

『影踏み』や『だってしょうがないじゃない』『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』もテンに入れたかったのですが、惜しくもはみ出してしまいました。長篇アニメ『冴えない彼女の育てかた Fine』や『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』は、それぞれ興味深く観ましたが、いかんせん、その世界への初心者には入りづらく、さらにリサーチしてから出直して参りますとしか言いようがありませんでした。まあ、小生などは想定観客層の対象外なのでしょうが。大評判でクリーンヒットになった『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』は劇場へ二度トライしましたが、〈完売〉で入場できず未見。人気の高さがうかがえますが、こうなったら近日中に意地でも再々度トライするつもり。(私が観た11月の日本映画は23本)

『閉鎖病棟―それぞれの朝―』(C)2019「閉鎖病棟」製作委員会

11月公開の外国映画、この10本

①アイリッシュマン
②T-34 レジェンド・オブ・ウォー
③IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。
④ターミネーター:ニュー・フェイト
⑤国家が破産する日
⑥キューブリックに愛された男
⑦残された者-北の極地-
⑧エンド・オブ・ステイツ
⑨ジェミニマン
⑩アースクエイクバード
(Netflixで11月27日から一斉配信された)

『アイリッシュマン』が、劇場で先行公開されましたが、マーティン・スコセッシ監督の最新作で、制作費約170億円、撮影日数108日間、上映時間3時間29分の超大作とあっては、もう劇場に駆けつけるしかない! かつて、ダニー・デヴィート監督、ジャック・ニコルソン主演『ホッファ』(1992年)でも描かれた全米トラック運転手組合委員長ホッファの失踪事件をめぐる大河ドラマで、出演者も豪華。ホッファの片腕で、伝説の殺し屋フランク・ハーラン役に、ロバート・デ・ニーロ、ホッファ役にアル・パチーノ、さらにジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテルも重要な役で出演し、さながらスコセッシ映画の同窓会でもあり、『ミーンストリート』(1973年)や『タクシードライバー』(1976年)『グッドフェローズ』(1990年)『カジノ』(1995年)などを彷彿とさせ、二重の感慨があります。『アースクエイクバード』もNetflix作品で、リドリー・スコット製作、全篇日本を舞台にした異色サスペンスで、何と佐久間良子が、ホンのチョイ役で出演しているのも御愛嬌。

アレクセイ・シドロフ監督『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』は、戦車同士のバトルが血湧き肉躍らせる快作で、さすがロシアで800万人を動員し、興行収入40億円という数字も納得できる出来栄え。4人のソ連兵とナチス将校との戦いは、日本の剣豪小説を思わせる名勝負物語になっていて、失礼ながら、拾い物とは、こういう映画なんだなあと快哉を叫びました。『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』の前では、『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』や『ターミネーター:ニュー・フェイト』などの力作にも順位を譲ってもらうしかありませんでした。この二本も見応えという点では申し分なかったのですが。

洋画は他にも『グレタ GRETA』や『ベル・カント とらわれのアリア』『永遠の門 ゴッホの見た未来』『テルアビブ・オン・ファイア』なども、どうしようかと迷ったのですが、例月ならばテン入り確実な作品揃いでした。特別枠として挙げたいのは、29才のフー・ボー監督の長篇デビュー作にして遺作『象は静かに座っている』。寂れた田舎町を舞台にした群像ドラマで、その出来栄えには圧倒されましたが、今月の10本の中には、どうも収まり難く、あえてランク外にしましたが、一見の価値ある青春映画としてオススメします。(私が観た11月の外国映画は29本)

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(C)Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

プロフィール

野村正昭(のむら・まさあき)

野村正昭(のむら・まさあき) 1954年山口県生まれ。映画評論家。年間新作800本を観る。旧作も観るが、それを数えると空恐ろしい数になるので、数えないことにしている。各種ベストテンの選考委員を務めている。

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