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新田目翔、ハヤシケイ、タナカ零、sajou no hana…2018年夏クール注目のアニソン作家4名

リアルサウンド

18/7/27(金) 8:00

 2018年夏クール放送の新作アニメが一通り出揃い、音楽的にも「ミュージカル×アニメーションで紡ぐ二層展開式少女歌劇」を謳う『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』、『ストリートファイターII』をはじめ作中に登場するゲームの音楽を実際に手がけた下村陽子を劇伴に起用して作品との親和性を図った『ハイスコアガール』など、この夏も注目作が目白押しのアニソン/アニメ音楽界隈。その中で今回は「個人的に注目している作家」を切り口に、いま聴いておきたい新作を紹介します。

参考:Aqours、Roselia、LiSA……『FNSうたの夏まつり』アニソンファンの視点

 最初に取り上げるのは、昨年から目覚ましい活躍をしているドリームモンスター所属の若手作家・新田目翔。1992年生まれで現在25歳の彼は、水瀬いのりの1stアルバム『Innocent flower』(2017年)に収録されている「旅の途中」が作家としての作詞/作曲デビュー作とのことなので、活動キャリアはまだ2年未満なのですが、その間にも小倉唯が歌う必殺級のバラード「Dear」や、アプリゲーム『アイドルマスター ミリオンライブ!シアターデイズ』よりプリンセススターズ「Princess Be Ambitious!!」(作曲)、4Luxury「花ざかりWeekend✿」(作曲/編曲)というハロプロチックな和製ディスコなど、良作を連発。ジャクソン5「I Want You Back」を確信犯的に引用した亜咲花のソウルポップ「SHINY DAYS」(作曲)でその名前を記憶した人も多いことでしょう。

 そんな彼の最新のワークスが、弱冠17歳の歌姫JUNNAによるニューシングル『紅く、絶望の花。』のカップリング曲「赤い果実」(作曲/編曲)。これまたホーンとストリングスを豪勢に使ったディスコティークなナンバーで、JUNNAの重厚な歌声と生音主体のゴージャスなアレンジメントが往年の歌謡曲にも似た匂いを感じさせる、グルーヴィーかつパンチの効いた名品です。なお、新田目は今期のTVアニメ『ロード オブ ヴァーミリオン 紅蓮の王』(TOKYO MXほか)で劇伴音楽も担当しており、さらに他方面で才能を発揮中。ちなみに彼の双子の兄弟だという新田目駿も作家活動をしており、前期のTVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー』のオープニング(OP)主題歌「Make debut!」で本格デビューしたばかり。同アニメの第12話では新田目翔がエンディング(ED)テーマ「Find My Only Way」(作曲)を手がけ、兄弟でOPとEDを担当する快挙を成し遂げました。

 続いて紹介したいのが、この連載でも何度か名前を取り上げているハヤシケイ。彼はもともとKEIという名義でボーカロイドクリエイターとして活動を開始し、自身初の再生回数ミリオンを達成した「Hello, Worker」(2011年)や「ピエロ」(2010年)など、叙情的なギターロックサウンドと人の痛みに寄り添うことのできる歌詞で人気を集めてきました。また、NO LEAF CLOVERというバンドでボーカル/ギターを務めるなど、自身もアーティストとして活動。近年は作家としての仕事も目立ち、アニソン的な観点で言えば、『FAIRY TAIL』のEDテーマに起用されたROOT FIVE「キミノミライ」(作詞/作曲)を皮切りに、TrySail「WANTED GIRL」(作詞/作曲)、『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』よりジュリア(CV:愛美)のエモーショナルな名曲「スタートリップ」(作曲)など、多彩な楽曲を手がけています。

 その勢いは留まることを知らず、今期のアニメでは2作品のテーマ曲に関与。まず、新人シンガーのReoNaが歌う『ハッピーシュガーライフ』のEDテーマ「SWEET HURT」では作詞/作曲を担当し、甘やかなメロディとある種の危うさをも感じさせる強い愛の気持ちを表現した歌詞で、彼女の繊細なアーティスト性を引き出しています。ハヤシは同シングルのカップリング曲「カナリア」も作詞しているほか、ReoNaが神崎エルザ starring ReoNa名義で発表した『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の劇中歌集『ELZA』でも全曲の作詞を手がけていて、今後も両者のタッグは続くことになりそうです。

 そして、ClariSによる『はたらく細胞』のEDテーマ「CheerS」では作詞を担当。こちらは〈君らしいペースで歩こうよ〉というフレーズが優しく響く応援ソングで、努力を無理強いしない絶妙な距離感のメッセージ性を含め、ClariSらしさをしっかりと打ち出したものに。KEI名義による数々のボカロ曲で聴かれた、切なさと柔らかさを併せ持ったその作家性は、今後さまざまなアーティストへの歌詞&楽曲提供でも発揮されることでしょう。

 次にピックアップするのは、可愛らしい絵柄に反したシュールなギャグセンスで注目を集める今期のダークホース的アニメ『あそびあそばせ』(TOKYO MXほか)のOPテーマ「スリピス」を制作したタナカ零です。と言いつつ、正直この作家がどういった人物なのかは、調べてみてもわからなかったのですが……。ただ、過去の仕事ぶりを含め、並々ならぬ才能と異質感を感じるので、とりあえず自分が知ってる限りのことを紹介します。自分が彼の楽曲に最初に触れたのは、花谷麻妃が2016年に発表したシングル『だって、ギュってして。』(『くまみこ』OPテーマ)のカップリング曲にて。本作には当時14歳だった花谷に合わせてか、森昌子のヒット曲「中学三年生」のカバーが収録されているのですが、タナカはこの楽曲をなんとフォークトロニカ調にアレンジ。もう1曲のオリジナル曲「梔子リアリー」も作詞/作曲/編曲してるのですが、こちらもALI PROJECT的なセンスを感じさせるプログレッシブな電子ゴシック曲でインパクト大でした。

 その次に彼の名前を見たのは、同じく2016年のこと。TVアニメ『ブブキ・ブランキ 星の巨人』より種臣静流(CV:小松未可子)が歌うEDテーマ「so beautiful ;- )」に作詞家としてクレジットされていました(作曲/編曲を手がけたのはfu_mou)。ですが、その異才ぶりを改めて感じたのは、同シングルのカップリングに収められた「流路」。かつてのニルス・ペッター・モルヴェル周辺を想起させるエレクトロニックなジャズアンサンブルが次々と変幻していくサウンドに、小松の凛とした声が泳ぐ様子には衝撃を覚えたものです。

 そして今回の『あそびあそばせ』のOPテーマ「スリピス」。本田華子(CV:木野日菜)、オリヴィア(CV:長江里加)、野村香純(CV:小原好美)のメインキャラ3人が歌うこの楽曲、前述のワークスとは趣きを変えて、室内楽的なアンサンブルをメインに据えた流麗なサウンドで構築されていますが、陽だまりのように眩いイントロからAメロで急激にトーンを落とす展開は、まるで主人公の少女たちの気まぐれ具合を表すかのよう。ポストロックとオーケストラルポップを融合したような異色のキャラクターソングに仕上がっています。タナカ零、何者なのかはよくわかりませんが要チェックです。

 最後に紹介するのは、『天狼 Sirius the Jaeger』(TOKYO MXほか)のEDテーマ「星絵」でデビューするsajou no hanaです。こちら実は、ClariS「コネクト」(作詞/作曲)やLiSA「oath sign」「crossing field」(共に作詞/作曲)などのアニソンヒットを手がけてきた作家、渡辺翔が新たに結成したバンド。メンバーは“こんにちは谷田さん”名義でボカロPとしても活動し、神谷浩史「神様コネクション」(作曲/編曲)やA応P「まぼろしウインク」(編曲)など最近は作家仕事も多いキタニタツヤ、MOB CHOIRのボーカリストとして『モブサイコ100』のOPテーマ「99」を歌った女性シンガーのsanaの3人です。

 「星絵」では、渡辺らしい耳に残るフックを備えたメロディ、キタニによる現行のUSポップスを意識したリズムトラックとシューゲイザーの要素を掛け合わしたアレンジ、sanaの透明感と迫力を併せ持った歌声で独特のエモーショナルな世界観を開拓。エレクトロニカ調のカップリング曲「夢の中のぼくらは」ではキタニが詞曲を手がけたりと、バンド内に二人の作家がいる利点を活かした多彩なアプローチが魅力です。アニソン界隈では近年、Q-MHz、月蝕會議、(K)NoW_NAME、ZiNGらのように、作家やミュージシャンが集まってクリエイターユニットを結成する事例が増えていますが、sajou no hanaもまたクリエイター発のアーティストとして、今後も独自の視点から良質な音楽を届けてくれそうです。(北野 創)

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