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『スカーレット』 喜美子と三津の思う“八郎像”の違い かわはら工房に感じる一抹の不安

リアルサウンド

20/1/16(木) 12:00

 八郎(松下洸平)が個展に向けて作陶に取り組む意欲をみせるなか、弟子の三津(黒島結菜)とは次第に仲が深まり、喜美子(戸田恵梨香)とは微妙にすれ違いが生まれていく……。

 連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第88話では、絵付け小皿200枚の制作に取りかかりはじめた喜美子のその作陶姿に、三津が感銘を受ける。

【写真】朝ドラでブレイク中の松下洸平

 かわはら工房の弟子として、喜美子とも八郎とも良好な関係を築いているように見える三津。だが、なんとも言い難い雲行きの怪しさを感じてしまう。3人が一緒にいることはほとんどなく、彼女は喜美子と八郎のそれぞれと、別々の時間を過ごしているのだ。むろん、男女が一つの部屋にこもっていることにネガティブな妄想や、卑猥な想像をたくましくさせることなど実に浅ましい。言語道断。八郎は誠実な職人であるし、なんだかんだ言っても彼ら夫婦は固い絆で結ばれている。しかしだ、喜美子は三津の言葉を通して、自分の知らない八郎の一面を知ることにもなる。

 「集中力」「敵わない」……などといった言葉を連発し、絵付け小皿200枚の制作に取り組む喜美子を褒めそやす三津。これにはもちろん喜美子も悪い気はしない。それ以上に、これは彼女にとって思いがけないことであって、少しばかり謙遜の姿勢も見せる。喜美子の意識としては、やはりつねに“支える側”にあるのではないだろうか。

 しかし、三津の口から飛び出してくるのは、彼女自身の喜美子を褒める言葉だけではない。「横にいるとしんどい」「才能のある人がいると息苦しさを感じる」……これはいずれも、八郎が三津の前でこぼしたもの。ここまで自分が評価されている事実に喜美子はびっくりするが、だがそれよりも、自分の夫の知らぬ一面を同性の三津が知っているというのは、一抹の不安を感じられずにはいられないだろう。この時点で、三津の見ている八郎と、喜美子の思う“八郎像”は明らかにズレているのだ。一家の大黒柱として妻の前で八郎が見せる表情と、マイペースで明るい弟子の前で見せられる顔というのは、やはり違うのだろう。さらに、三津の「繊細な人です」という八郎を評する言葉は、喜美子に少なからずダメージを与えたはずである。それは自分の思う“八郎像”からズレているし(職人、アーティストとしての“繊細さ”とはまた別のこと)、何よりも、いち弟子が自分の夫のことを自分よりも理解しているかのような発言は許しがたいはずである。

 八郎よ、喫茶店で渋い顔してコーヒーなどすすっている場合では絶対にないぞ。

(折田侑駿)

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