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「ショー・ビジネスが、ビジネス・ショーになった」K DUB SHINEが日本の音楽シーンを斬る!

リアルサウンド

13/7/27(土) 17:00

20130726-sub.JPG『アート・オブ・ラップ』2012(c)The Art Of Rap Films Ltd

 大きな反響を呼んでいる、日本のラップ界のご意見番=K DUB SHINEのインタビュー。7月27日公開の映画『アート・オブ・ラップ』を通してヒップホップシーンの現状に切り込んだ前編「K DUB SHINEが語る、ヒップホップの歴史と今のシーンに足りないもの」に続き、後編では日本の音楽シーン全体についてもズバズバと語ってくれた。

――日本の音楽シーンについては、私はアートではなく、マーケティングの時代になったと思っています。もちろん、いい作品もありますが、それはドラマや映画、テレビ番組と共に伝わってくる。新譜を出したことをCDショップや雑誌で知るのではなく、そういったテレビプログラムで知る。

K DUB そうだよ。”ショー・ビジネス”が、”ビジネス・ショー”になってしまった。ビジネス面を見せて、何人入ったとか何枚売ったとかの話題性を広めて、作品をまるでおまけのように付ける。”ショー・ビジネス”はさ、ショーが先で、ショーをうまくいかせるためのビジネスでもあるのに、今はビジネスのためのショーになり下がった。ポップカルチャーとして上質なものはあるけど、売れてる歌詞の内容は、誰かがどこかで常に恋している。でも、それは世の中の喜怒哀楽、いくつかある情緒のたった一面でしょ? アーティストが表現したいことはほかにもっとあるはずなのに、レコード会社は「こういうのを作ったら売れる」と、たぶらかして歌わせる。そして、アーティストは自分らしさを少しずつ失い、本当の自分が見えなくなってしまい、失望して辞めていく人たちも少なくない。音楽業界や事務所は、そういった罪を犯している自覚を持つべき。自覚がないことが、”ショー・ビジネス”が、”ビジネス・ショー”に入れ替わった証拠なんだよね。アイドルだらけで、業界人は全員、ロリコンなんじゃないかって思うよ。「オリコン」じゃなくて、”ロリコン”だぜ!

――たとえば、きゃりーぱみゅぱみゅに対して、「曲としてよくできている」という声も多いですが、それはどう思いますか?

K DUB 彼女はマーケットに向けて、面白いものを作ってると思うよ。言葉遊びが上手だし、Perfumeより好きだね。あっちは作られた感、操られてる感があって、実際ロボットみたいに踊る。けど、きゃりーぱみゅぱみゅはアパレルで成功する子みたいにさ、独自のキャラクターやブランドイメージをマーケティングすることで、自分を世の中に売り込んだ。時代のタイミングと、世界の人たちが日本にどういうものを求めているか、を上手にすくい取ったんじゃないかな。だから否定する気はないけど、彼女の二番煎じ、三番煎じは難しいと思う。同じレコード会社だからディスらないわけじゃなく、この子は自分が核になってムーヴメントを起こすだけの才能があった、という目で見ている。

――ラッパーで面白い若手は?

K DUB 若手じゃないけど、SHINGO☆西成とか、ANARCHYとか、底辺から這い上がってきた奴らが好み。ある意味、殺気に近いものを感じるくらいギラギラしていて、尖っていて、鋭い。自分や仲間に対して正直で、人生の真実を表現したスタイルは、めちゃくちゃヒップホップだと思う。くそリアル。

k dub shine022.jpg

――たとえば、サッカーなどのスポーツだと、18~21歳くらいの若手のレギュラー選手が出てこなくて高齢化してしまうと、停滞してしまう。SHINGO☆西成にしてもANARCHYにしても、30を越えています。それは業界自体が、下から這い上がってこなければ表に出られないから、どうしても遅咲きになってしまうのでしょうか?

K DUB 十分な投資がされていないし、ビジネスとして活性化するような座組み(スキーム)ができていないよね。

――でも、ビジネス化されすぎてしまうと、”ビジネス・ショー”になるというジレンマもある?

K DUB それは、金を出す人による。ひたすら商業的に向かわせるのではなく、ある程度ヒップホップを理解していて、「お前たちのスタイルを貫け」っていうような金の出し方をしてくれればね。この芸能界の中ではパイの大きさは決まっていて、バーニングやジャニーズ、吉本やホリプロら、大手に独占されている。けれど、そのパイもいまやどんどん小さくなっていて、そこに俺たちがバラバラで挑んでも、弾き飛ばされてしまう。どうしてもそこでは音楽業界の中での政治力が必要だよ。

――たとえば、お笑いだと、多くの先駆者が基礎を積み上げ、ダウンタウンが登場し、彼らのスタイルからお笑い芸人を目指す若者が増え、漫才師の価値も上がったと言われています。現在、日本語ラップ、冬の時代といわれていますが、そういったスターが現れれば、変わるのでしょうか?

K DUB まぁ、俺は昔の『THE MANZAI』の影響が、業界的には大きいんじゃないかと思うけどね。スターや優秀な才能が現れたところで、吉本興業に所属していなければ、そこまで大きく売ってもらえない。ダウンタウンが出てくる前にも、(明石家)さんまや(島田)紳助、やすきよ(横山やすし・西川きよし)、(桂)三枝とかもいたわけで、すでに巨大な組織だった。さらに言えばね、日本のメディアは結構な人気があったって、そうでもないことにしちゃう。そういう意味では、個人的にも、やりたい音楽作って、聞きたい奴が聞くっていうのが一番健全な状況でもあるのかな。無理やり火に油を注いでデカくして、よくなるかって言えば、薄っぺらくなる場合もある。今のアメリカメインストリームのような状況になる。最近はどの年代にも、日本全国にヒップホップ好きがいる。彼らが第二第三の波となって、音楽業界に働きかけていけば多少は変わると思いたい。でも、芸能界もしたたかだから、テクニックとかスタイル、ギミックだけをうまく搾取して、商品化して終わるかもしれない。日本の営利組織は、東京電力や日本政府や経団連のルールとどこも同じ気がする。こっちが心血注いで、音源作っても、金払わなきゃ、媒体もろくに取り上げないから、あきらめているというか、とっくに見限ってるよ。くだらねえ。

――”さんぴんcamp”を経て、B-BOY PARKが3万人集まった時代もありました。それが、今では5000人程度しか集まらない。こういった現状になったのは、日本語ラップの作り手の質に問題があったというよりも、吉本興業みたいな強固な組織がなかったことが問題かもしれません。

K DUB 業界の中での立ち居地や体制だろうね。だって、ろくでもない音楽がいっぱい売れてるじゃん! ラップのジャニーズ、ラップの吉本みたいな、ヒップホップに特化したマネジメント会社があれば違うと思う。大手プロダクションがどこかでサポートしないと、厳しいだろうね。業界自体が「お笑いもアイドルもそろそろ限界だな。今の若い年代はヒップホップ聞くし、EXILEみたいなのも相当も売れたし」みたいな感じで、ヒップホップに移行すれば変わるかもしれない。けど、お茶の間でウケるようなもの作れといわれたら終わりだから、それは諸刃の剣だとは思うけどね。
(取材・文=石井紘人[hiphopjournal])

● 『アート・オブ・ラップ』
監督/アイス-T 出演/エミネム、ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ、カニエ・ウェスト、Run DMC、ナズほか 配給/角川書店 
7月27日よりシネマライズほか全国順次公開
(映画『スヌープ・ドッグ/ロード・トゥ・ライオン』と同日公開)
2012(c)The Art Of Rap Films Ltd

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