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NMB48は山本彩の卒業をどう乗り越える? 夏ツアーと『TIF』に見た“明るい未来”

リアルサウンド

18/9/5(水) 8:00

「ここ数年は新しくセンターになる子が出て来たり、私がいない環境で一人一人が輝いてライブをしたり、頑張ってる姿を一歩引いたとこで見てると、私がここで離れることが、NMB48のいい起爆剤になるんじゃないかなと思うようになってきました」

 7月30日に中野サンプラザで開催されたライブ『NMB48 LIVE TOUR 2018 in Summer』は、エース・山本彩の卒業発表という波乱を含め、ツアーの初日という以上に大きな意味を持った公演だったように思う。

 冒頭、若本律夫のナレーションに合わせ、太田夢莉、吉田朱里、渋谷凪咲、梅山恋和、上西怜、城恵理子、岩田桃夏、沖田彩華、小嶋花梨、植村梓、谷川愛梨、磯佳奈江、山田寿々、川上千尋、山本彩加、山本彩の順でステージへ登場。「ワロタピーポー」「オーマイガー!」「北川謙二」「サササ サイコー!」と盛り上がる楽曲を立て続けに披露する。

 印象的だったのは、「ワロタピーポー」で山本彩加がセンターポジションに立ち、キレのある動きをみせていたこと。本来のセンターである白間美瑠がProduce48で韓国にいるため、誰がセンターを務めるのかと楽しみにしていたが、このサプライズには驚かされた。振り返ってみると、様々な意味合いになる今回のツアーだからこそ、冒頭はフレッシュさと楽曲の勢いを強く打ち出したかったのではないかと思わされる。

 続くMCでは、吉田が約2年ぶりの全国ツアーであることを述べると、初のツアー参加となる山本彩加は「16人選抜は貴重ですし、知ってもらって覚えてもらうチャンスやなと思います」と闘志を燃やし、同じく初参加の小嶋も「2年前のツアーはお客さんとしてきていたのでエモい。今年イチ暑いオタ活にしていきましょう!」と盛り上げる。これに驚いた渋谷は「と、いうことは2年後ここにいる誰かが?」と驚いてみせた。

 山田が「今回は一皮剥けた自分を出したい。東京、神奈川と一皮ずつ剥いて置いていって、全国を回ろうと思います」と話すと、すかさず植村が「それ奈々ちゃんも言ってた……」と姉である元NMB48の山田菜々と発言までシンクロしていることを告げ、会場を爆笑の渦に包んだ。

 かと思えば、崩した和装姿で登場した後は、ダンスコーナーでキレのある動きを見せ、「HA!」「カモネギックス」「難波愛」とクールなダンス曲が続く。披露後のMCで、山本彩は「サンプラザ、よくライブを見に来てたなー。アイドルの聖地でもあるんですけど、NMB48はここに立つのに8年かかった」と感慨深そうにし、吉田は「NMB48と東京といえば、初披露がAKB48さんの秋祭りで。夜行バスで来て、公演終わりで富士山に登らされたのを思い出した」と自分たちの初々しかった頃を振り返る。

 現在のNMB48において、そんな初々しさを持ち合わせているのが5期生たちだ。初披露となった8曲目の「Good Timing」は、山本彩加・梅山恋和・上西怜・岩田桃夏・山田寿々と5期生メンバーから選抜されたユニット曲で、キュートなMVも印象的だ。実際の歌唱もMV衣装でパフォーマンスされ、会場にNMB48の持つアツさとは違うフレッシュさの風を吹かせた。

 その後、ユニット曲コーナーは続き、谷川、城、小嶋、川上による「エンドロール」、渋谷と植村が狼のコスプレをした「狼とプライド」、太田、磯、沖田による「奇跡は間に合わない」のあとは、吉田と山本彩が5期生に負けじと可愛さを強調した「アボカドじゃねーし」で会場を喜びと笑いで包み込む。意外にも2人のユニット曲披露は今回が初めてだったというのは、後々発表された山本彩の卒業を踏まえるとさらに感慨深い。

 5期生と渋谷がユルいMCで場を和ませたあとは、ダンス選抜曲の「Must be now」へ。当時はダンス選抜としてリリースされたシングルの表題曲だが、今回は原曲でもセンターを担当した山本彩以外は全て別のメンバー。山本彩加、小嶋、沖田、川上千尋、谷川、城、吉田、植村と若手・ベテランを織り交ぜた編成だが、ダンスはオリジナルメンバーと遜色のない仕上がりに。その余韻を引き継いで山本がセンターのままパフォーマンスされた「欲望者」は、カノンも多くしなやかで力強い振り付けが特徴的な楽曲だ。

 後半では、「まさかシンガポール」「イビサガール」「ポニーテールとシュシュ」「ドリアン少年」と、夏らしいアンセムの連続で再び会場を熱狂の渦に包み込むと、ジャジーなSEを挟んで「ヴァージニティー」が、ラストスパートとばかりに「ナギイチ」「僕らのユリイカ」がパフォーマンスされる。岩田が「こんな経験なかなかできなくて、ステキな夏の思い出になりました」と楽しそうに話すと、川上千尋も「2年前は先輩たちが『楽しかったなー』って帰ってきたので、私たちもそうしたい」とこの先のツアーも楽しいものにしていくことを誓う。次で最後の曲であることを山本彩が告げると、観客からは「終電まで!」と懇願の声が飛び交う。山本彩が「終わらないと始まらないからね」と諭し、本編最後の「しがみついた青春」が歌い上げられた。

 アンコールは太田がセンターを務めた「虹の作り方」でスタート。落ちサビの〈僕が最後に見た虹は〜〉という部分を歌い上げた山本が、一瞬直立不動のように見えた。ラストのサビではメンバーが全員集合し、その後に山本彩が口を開いた。

「私、山本彩はNMB48を卒業します。今年の10月で8年、密度の濃い時間を過ごさせていただいて。その間に何度も卒業という文字に向き合って悩んできました。(しばし沈黙)考えては取り消してを繰り返し、できることがあるんじゃないかなとか、みんなと一緒に頑張りたいなとか、思いもしながら今日までがむしゃらにやってきました」

 発表の序盤を聞いただけでも、山本自身がグループを卒業することにかなりの躊躇いがあったことは伝わってくる。しかし、その後の発言に、筆者はグループの未来を見た。

「でも、ここ数年は新しくセンターになる子が出てきたり、私がいない環境で一人ひとりが輝いてライブをしたりと頑張ってる姿を一歩引いたとこで見てると、私がここで離れることが、NMBのいい起爆剤になるんじゃないかなと思うようになってきました。頼もしい若い子に引っ張っていってほしいし、新しいNMBを作ってほしい。自分もまだ弱くて未熟だけど、踏みとどまっては決心しにくくなると思ったし、挑戦することが豊かな人生を作ると思った。アイドルは卒業するけど、私はまだ終わってないし、現役を続けます。もっと音楽を勉強して皆さんの前で歌いつづけたい。卒業まではアイドルとしての自分を応援してください!」

 この発表を静かに受け入れていた吉田朱里を含む1期生・2期生ら初期メンバーも、泣き崩れていた太田とそれを慰める渋谷ら3・4期生ら中堅メンバーも、まだ自分ごとのようには受け取れないであろう5期・ドラフト3期メンバーも、それぞれに抱えた思いはあっただろう。

 吉田がそれを代弁するように「自分のやりたいこともあったはずなのに、ここまで時間と愛を捧げてくれてありがとうございます。まだ実感もわかないし、さや姉のいるNMBが当たり前になって一生懸命走ってきたから、実感がわかないけど、卒業までの間にこの小さな背中でたくさんのことを教えてくれると思う。だから『もう大丈夫』と思ってもらえるようにしよう」とファンとメンバーへ言い聞かせる。山本がこのためにメンバーを呼んだことについても「みんなに聞いてほしいと思って呼びました。でも、しんみりした曲で終わるのはNMBらしくない。みんな、楽しんでくれますか?」と叫び、「青春のラップタイム」へ。

 最後、メンバーが去った後は、山本が「一回り小さい子がいる中で言うのもなんですが、25歳、人生まだまだ。皆さんがいてくれなければ見れない景色、感じられないものもあると思いますし、これからも子供たちをよろしくお願いします!」と叫び、この日の公演は終了した。ツアーでは19歳以下メンバー限定の公演もあり、先日のサマステこと(『テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION』)と『TOKYO IDOL FESTIVAL』には、若手メンバー中心のカトレア組も出演した。

 筆者は『TIF』でカトレア組のパフォーマンスを目撃したが、3日間で出ていた48グループのなかでも、セットリストとパフォーマンスのコンセプトは突出していたように思えるし、山本彩加の「これからは少しでもカトレア組がNMBを引っ張れるように頑張ります!」という言葉にも夢物語ではない力強さを感じた。報道やファンの間では“山本彩の後継者”が誰か、という議論になりがちだが、筆者はそこを無理に定めなくてもいいのではないか、と考える。グループ全体が“山本彩イズム”を継承しながら、別の色に塗り替えていく。この日のパフォーマンスは、そんなNMB48の明るい未来を予感させた。

(取材・文=中村拓海/画像提供=(C)NMB48)

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