Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

田代万里生「今までとは違うものをさらけ出す」 『ジャック・ザ・リッパー』のモンロー役は「僕史上最低最悪」

ぴあ

田代万里生 撮影:杉映貴子

続きを読む

世界的に有名な未解決事件として恐れられた殺人犯・通称“ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)”をモチーフにチェコ共和国で創作されたミュージカルを原作に、韓国独自のアレンジを施し、大人気作となったミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』(2009年初演)が、白井晃演出にて日本初演される。新聞記者モンロー役として出演する田代万里生に話を聞いた。

今まで演じてきたものとは違うものをさらけ出す

──ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』は韓国で大ヒットした作品で、今回が日本初演となりますが、そのオリジナルキャストになることをどう思われていますか?

まず、モンロー役(スクープのためならどんな手段も厭わず事件を追う新聞記者)を僕にっていうのが意外でした。僕はどちらかというと誠実な役が多いのですが、それとは真逆の、僕史上最低最悪じゃないですけど(笑)、欲にまみれた誠実さのない役ですからね。

──韓国版と同じイメージになるのでしょうか?

プロデューサーからヒントを頂いたのですが、韓国版のモンローとはまた違うイメージだそうです。ビックリしたのは、ある意味ちょっとルキーニ(ミュージカル『エリザベート』にも登場する実在の人物。エリザベートの暗殺者と言われている)っぽいかもと。どんなふうになるのか、僕も楽しみにしている感じです。

──どんな感じなんだろう……。

想像できないでしょう?(笑)真っ当な人間を切り裂いてみたらその中身は……というところを担うのかなって。モンローはまさに、綺麗に装っている内側の部分をたくさん見せるので、すごく重要な役になりそうです。

──内側の部分をですか。

はい。今まで僕が演じてきたものとは違うものをさらけ出すことになると思います。それもただ剝き出しにするのではなくて、装いながら出すような感じなんじゃないかな。あと、随所でモンローはダニエルやアンダーソンと一緒に行動していくので、その中での立ち位置も見つけていきたいなと思います。

一見、ダニエルやアンダーソンのほうが屈折した人間のように思うんですけど、実は「いや、これモンローのほうがやばいやつなんじゃないか?」というところが随所に出てくる。ラストシーンもモンローが重要な流れに持っていきますし。早く白井さんとお話してみたいです。

新しい挑戦をたくさんしないと務まらない

──白井さんがモンロー役に田代さんをイメージした理由はご自身としてはなんだと思われますか?

やっぱり今も話した「一皮むいたら」というところがポイントなのかなと思っています。最近は誠実だけじゃない役もやらせてもらっていますが、一見そうは見えない僕だからこそ、裂いて中から出てきたものがどう見えるのかっていう。そこを多分、白井さんが引き出してくださるんじゃないかなと今は思っています。でも本当になぜ僕にっていうのは僕自身も伺ってみたいです(笑)。

──白井さんと田代さんは初タッグですし、その大切な役割を託したのは舞台上の姿を観てのことなのでしょうか。

白井さんは、こまつ座『きらめく星座』(’17年)の田代万里生を観てくださっているんです。グランドミュージカルの舞台に立つミュージカル俳優としてではなく、坊主姿の脱走兵で、それこそ剥き出しの役をやっているところを観てくださっていて。

いわゆるミュージカルファンの皆さんが抱く僕のイメージとはまた違うものもキャッチしてくださっているのかな? と思います。僕自身も新たな田代万里生に出会えることを楽しみにしています。

──これまでとは違った心持ちで挑む役になりそうですね。

白井さんはストレートプレイのイメージも強いですが、モンローはどちらかというと特にお芝居で物語をしっかり成立させていく役なので、そういう意味でも今まで僕が演じた役と一味違うんです。新しい挑戦をたくさんしないと務まらないなと思っています。

──世界的に有名な未解決事件をベースにしたお話ですが、現時点でストーリーに関してはどう思われていますか?

ベースが切り裂きジャックなので、『スウィーニー・トッド』とか『ジキル&ハイド』みたいなちょっと怖いスリラーミュージカルをイメージすると思うのですが、この作品にはその2作とは違うものがあって。なんだろう、ダニエルとアンダーソンなど、比較的同世代の人物たちが色々な人生を生きているというのが、一番違うかもしれませんね。それに、上記2作にモンローのような立ち位置の人物は出てきません。それだけに、とても重要なキャラクターだなと思っています。

──音楽はどうですか?

ロックナンバーも多く、キャッチーで、日本人にはすごく合うんじゃないかな。それに今回日本語で歌われたら、いくつかの曲はきっとこれからミュージカルコンサートとかでみんなが歌いたがるような曲になりそうです。

──田代さんがあまり経験のないような楽曲もあるのでしょうか?

モンローのソロナンバーには、アップテンポで大勢を引き連れて歌うものもあります。 また、張り上げるだけではなく、切れ味よく芝居の緩急で差し込んでいく感じも。 全体的に僕にとっては新しいタイプの楽曲なので、楽しみにしています。

初共演の加藤和樹くんは頼りにしています

──日本初演のものをつくるってどうですか?

楽しみですね。僕は日本初演のものをけっこうやらせていただいてるほうだと思うんです。『スリル・ミー』とか『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』とか『マルグリット』とか『サンセット大通り』とかたくさんやらせていただいてきて。

何度も上演されている『レ・ミゼラブル』や『エリザベート』のような作品は「こうじゃなきゃいけない」というような固定観念が役者側にもお客さん側にもあって、そこにはめていくのか敢えてはずしていくのか、というようなところがありますが、新しい作品だと本当にゼロからなので。本作品は既に韓国版がありますが、白井さんや役者たちから提案もたくさん出てくると思いますし、みんなで新たに創っていけたらなと思っています。

──ダニエルを演じる木村達成さんとは、『エリザベート』(’19年)では親子でもありましたが。

美しい息子でしたね~(笑)。実際には同世代のほうには入るくらいなんですけど(笑)。あと、この作品の直前に『マタ・ハリ』で加藤和樹くんとご一緒するのですが、『マタ・ハリ』はWキャストで同じ舞台には立てないので、これが舞台上では初共演になります。今年は和樹くんとは半年くらい一緒にいることになると思うので、頼りにしています。

ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』キービジュアル。男性メインキャスト6名の顔の”パーツ”で構成されている

──田代さんは今どんなところに喜びを感じてお芝居をされていますか?

僕は去年、ミュージカルへの出演が0本だったんです、コロナの影響で。一方今年は現時点でミュージカル『マリー・アントワネット』や『スリル・ミー』に出演させていただき、今後を含めると1年に5本のミュージカル出演が予定されています。その1公演1公演の中で感じる、「劇場に行って、舞台に立ったら、お客さんがいる」ということへの喜びは、なんとも言えないものがあります。

『マリー・アントワネット』を今年の1月2月にやったときは、あの大きな空間にお客様が入っている光景を見るのが1年以上ぶりで。大勢の人が決められた時間に集まって、固唾をのんで見守って、暗転を待って、序曲の1音目を待って……という劇場のあの文化って、やっぱりリモートでは味わえないことだなとすごく実感しました。だから今は、「劇場に立って、お客様が観てくださっている」ということに喜びを感じていますね。

──当たり前のようなことが、一変しましたからね。

本当は当たり前じゃないですけどね、でもやっぱり公演が続くとそんなふうに感じてしまうこともあって。今は「明日公演がある」「明日も本番がある」ということが、自分にとってはすごく元気が出るものだなと思います。それはやっぱりお客さんが求めてくださるからこそで。そこはより一層感じています。

──『ジャック・ザ・リッパー』も楽しみです。

今はまだ未知の世界にそわそわしています。きっと今までやってきたことだけだと通用しないと思うので、なにか一歩大きく踏み出すつもりです。記念すべき日本初演の本公演、是非劇場で見届けてください!



取材・文:中川實穗 撮影:杉映貴子

ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』
作曲:Vaso Patejdl
作詞:Eduard Krecmar
脚本:Ivan Hejna
演出:白井晃

出演
ダニエル:木村達成・小野賢章(Wキャスト)
アンダーソン:加藤和樹・松下優也(Wキャスト)
ジャック:加藤和樹・堂珍嘉邦(Wキャスト)
グロリア:May'n
ポリー:エリアンナ
モンロー:田代万里生


【東京公演】
2021年9月9日(木)~2021年9月29日(水)
会場:日生劇場
【大阪公演】
2021年10月8日(金)~10月10日(日)
堺市民芸術文化ホール(フェニーチェ堺) 大ホール

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2171079

アプリで読む