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大塚紗英、鬼頭明里、伊藤美来、水瀬いのり……冬アニメでも注目集める声優アーティスト楽曲をピックアップ

リアルサウンド

20/2/26(水) 6:00

 “冬アニメ”と称される現在放送中のTVアニメも折り返しの時期を迎え、各作品の主題歌収録シングルなども次々と発売されてきた。ストリーミングサービスの本格稼動後、作品のフィジカルリリースを前に、TVアニメサイズでの楽曲視聴が可能となるケースは増えたものの、それでも最も話題性が高まるのは、カップリング収録曲を含めて、作品として完全な形でリスナーの手元に届くリリースタイミングだろう。そこで本稿では、この1カ月間で発売された声優アーティスト作品を、カップリング曲などにも触れながら振り返りたい。

(参考:伊藤美来がライブで表現した『PopSkip』の世界観 癒しの歌声届けた5thワンマン

 まずは、声優アーティストとして“新人”の枠組みに収まるだろう2名より紹介しよう。本日2月26日に、デビューミニアルバム『アバンタイトル』を発売する大塚紗英。声優としてのキャリアはまだ発展途上ながら、デビュー作『BanG Dream!(バンドリ!)』より誕生したPoppin’Partyのメンバーとしてすでに知名度は高い。

 そんな大塚は、5歳で初めて作詞を経験し、15歳の頃より地元・横浜でストリートライブをしてきた生粋のシンガーソングライター。『アバンタイトル』には、TVアニメ『エッグカー』(テレビ東京系)主題歌「What’s your Identity?」のほか、ライブ人気曲「ぬか漬け」を収録している。

 「ぬか漬け」の歌詞は、この4文字からは想像もできないような、周囲の環境に踠きながらも“自分を見つけてほしい”と歌う、切れ味鋭いアイロニカルさを含んだもの。大塚は以前に、自身の人生の主軸として「自分の伝えたいことや言いたいこと」を「音楽にして届けるために生きていきたい」と語っていたが、その説得力は計り知れない。多忙な現在も1週間に最低1曲は制作するという大塚。彼女の刻む歌詞は口だけではない、人生に裏打ちされた作品であり、本作はデビュー作ながらも、これまでの“集大成”に相応しい一作となるのだろう。

 続いて、昨年10月にシングル『Swinging Heart』で音楽活動をスタートした鬼頭明里。彼女も本日2月26日に、2ndシングル『Desire Again』を発売する。学生時代よりカラオケで自身の歌声を録音し、その出来栄えを日常的にチェックしていたという彼女。その習慣がすでにアーティスト然としており、特技に「歌うこと」を挙げるのにもしっかりと頷ける。

 今作『Desire Again』には、TVアニメ『地縛少年花子くん』(TBS系)エンディングテーマ「Tiny Light」を収録。流れるようなピアノの旋律に始まり、サビから徐々にバンドサウンドが重なるドラマティックな構成に。彼女のハイトーンボイスも非常にマッチした一曲だ。あわせて、3曲目「Closer」にも注目しよう。前作シングルの「Always Going My Way」に続き、今回もライブ映えするアッパーチューンが収められた作品のラストナンバー枠。彼女曰く「苦手で避けてきた」という英語詞が特徴的な「Closer」は、とても流暢な発音が気持ちよく、ライブでの一体感が今から楽しみだ。

 彼女たちと比較して、“キャリア組”になるだろう2名の話題に移りたい。まずは、2月5日に8thシングル『ココロソマリ』を発売し、今年12月に音楽活動5周年を迎える水瀬いのり。自身作詞の表題曲を含めて、とにかく語りどころの多い同作だが、その詳細は以下の記事にて満遍なく拾われているため、ここではその紹介のみに留めたい(参考:TAKU INOUE、篠崎あやと、ケビン・ペンキン……クリエイター陣が魅力を際立たせるアニメ/声優ソング)。

 本題は、伊藤美来が2月12日に発売した6thアルバム『Plunderer』だ。表題曲「Plunderer」は、TVアニメ『プランダラ』(TOKYO MXほか)オープニングテーマ。疾走感あるロックなサウンドにストリングスが重なった、これまでの伊藤のラインナップにはありそうでなかった一曲。今回のタイアップを機に、音楽活動の新たな扉を開いたことを実感できる。

 そして何よりも特筆したいのが、カップリング曲「hello new pink」だ。同曲で編曲を担当したのは、昨年7月発売の2ndアルバム『PopSkip』リード曲「PEARL」の制作をはじめ、彼女と活動初期からの付き合いである水口浩次。思わず肩を揺らしたくなるスキャットがとても心地よく、“伊藤美来のポップス”を掲げた『PopSkip』とも地続きな、いわゆる“渋谷系シティポップ”に分類される一曲だ。

 また、作詞作曲は伊藤のレーベルメイト・ゆいにしおによるもの。今回の楽曲を機に、にしおの楽曲に出会ったという伊藤だが、昨年12月の自身のLINE LIVEにて「歌詞のワードのチョイスがすごく文学的でいい曲なの」と大絶賛。自身の好きな曲として、にしおの「マスカラ」や「帰路」を挙げながら、前者のワンフレーズを空で歌う場面まであった。

 実際に、にしおの綴る歌詞は伊藤が今まさに築き上げているアーティスト感とも親和性が非常に高い。前述の「PEARL」で描かれた街の景観をはじめ、伊藤の音楽作品では歌詞の情景描写に重きを置く傾向がある。その作風は「マスカラ」に代表されるように、身近なアイテムから好きな男性への想いへと徐々に近づけて結びつけるにしおの歌詞にも合致する。

 例えば〈でも無理やり染められて/ブリーチして痛み続けた私の心は?〉という「hello new pink」のワンフレーズでは、“なんでわかってくれないの?”と空回りしながらも彼に尽くしてしまう女性の想いを描写。伊藤と同世代のにしおだからこそ綴れる珠玉の歌詞であり、水口によるジャジーで“抜け感”に優れたトラックの上でさらなる輝きを放ってくれる。間違いなく、今後の伊藤の活動の“担える”楽曲であり、この3名での次のリリースはもちろん、ライブでの共演機会などもあればと願うばかりだ。

 “春アニメ”の放送も中盤となる今年5月には、また新たなリリースラッシュが始まるのだろう。その間にもシングル/アルバムを問わず、数多くの声優アーティストが手塩にかけた作品を発表してくれるはずだ。2020年も声優アーティストによる充実した楽曲リリースに、今から胸が高まってしまう。(一条皓太)

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