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大川良太郎、大塚宣幸、渋谷天笑 『おちょやん』星田英利率いる天海天海一座の男たち

リアルサウンド

20/12/26(土) 6:00

 現在放送中の連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)を盛り上げた人気喜劇一座の天海天海一座。第4週では、初代・天海天海(茂山宗彦)の亡き後、息子の一平(成田凌)と須賀廼家千之助(星田英利)が率いる天海天海一座が久しぶりに道頓堀で芝居を行うことになる。ヒロイン・千代(杉咲花)の今後にも影響を与えていくであろう、人を笑わせることに全力な彼らの魅力を紹介したい。

天海天海一座を率いる喜劇界のアドリブ王、須賀廼家千之助

 千之助は、一平の父、天海天海と喜劇一座を率いていた男であり、日本でいちばんおもしろいのは自分という自負がある。千代の父・テルヲ(トータス松本)にぶつかられ、突っかかるテルヲに対して彼が発した台詞は「死ぬまで笑かしたろか、コラ」だった。千之助の食ってかかる表情から感じとれる力強い圧と「笑かす」という台詞のギャップに思わず笑ってしまった。

 千之助を演じる星田英利は、2018年に吉本興業の俳優部に移籍。移籍前から多数のドラマや映画に出演しており、朝ドラには、2012年放送の『カーネーション』、2015年放送の『まれ』にも出演している。

 今一つ芝居に身が入っていない一平と衝突を繰り返し、酒の席では千代に「お前に喜劇の何が分かるっちゅうねん」と絡み、ライバルである須賀廼家万太郎(板尾創路)一座の看板の前に立つと「満員御礼」の札を荒々しく剥ぎとるなど、破天荒でトラブルメーカーな一面が覗く千之助。だが、それらはすべて笑いに命を賭けているからこそ。彼の言動には圧があり、時に人を萎縮させるほどだが、観ている視聴者には彼の笑いへの情熱がひしひしと伝わってくる。

 笑いに命を懸ける千之助と一平の間には温度差があり、2人のやりとりにはハラハラさせられたが、彼は彼なりに喜劇への情熱を一平に伝えたかったのではないだろうか。

その名に反して雨男? 須賀廼家天晴

 天晴を演じる渋谷天笑は松竹新喜劇の団員であり、平成29年9月公演より二代目渋谷天笑を襲名。松竹新喜劇の公式ツイッターでは、元旦から始まる南座公演へ向けて稽古に励んでいる様子が発信されている。劇団きっての若手二枚目俳優として、今後も注目の俳優だ。

 初代・天海天海の時代からの座員で、一座のまとめ役を担っている。彼の朗らかな表情と度々起こる千之助と一平の衝突をなだめる姿が印象的だ。須賀廼家万太郎一座に比べて客足が遠のいている現状に「初日はこないなもんやろ」「うちかてよう入ったほうや」と、座員の士気が下がらないような言葉をかける姿からは、彼の穏やかな人物像が感じとれる。

 須賀廼家徳利とのやりとりで、その名に反して雨男であるエピソードが明かされた天晴だが、第19回で急遽舞台に上がり、最後まで舞台に立ち続けた千代にかけた「人生 “雨のち晴れ” や」という台詞は、天海天海一座の舞台に立ち続け、一座と一座を率いる彼らの情熱を見続けてきた天晴にしか口にできない見事な台詞である。この粋な一言にSNS上では「天晴さんかっこいい」「惚れるわ」と声があがっていた。

お酒よりビールが好き、須賀廼家徳利

 徳利のような髪型がトレードマークで、徳利という名前なのにお酒よりビールが好き、というキャラの立った須賀廼家徳利を演じるのは、2013年放送の『ごちそうさん』、2014年放送の『マッサン』にも出演していた大塚宣幸。

 大塚の表情豊かな演技は、一座のムードメーカーである徳利の魅力を引き出している。そんな彼の良さが最も輝くのは、やはり天晴との掛け合いシーンだろう。天晴の雨男エピソードを話す徳利は、喜劇役者らしい間合いを使って千代を笑わせていた。公演初日を終えた後の酒の席では「年々客足遠のいてまっせ」と天晴とは対照的な意見を口にし、この2人のやりとりからは天海天海一座の現状がうかがえる場面だった。千之助が行方不明になり、天晴が一座のまとめ役となると、雨男・天晴をからかっていた立場が逆転し、天晴がツッコミ、徳利がボケのようになったのも印象に残る。

舞台に立つと圧倒的な美しさ、漆原要二郎

 漆原は、体は大きめだが、舞台に立つと圧倒的な美しさを誇る女形の役者だ。彼は舞台に立っていない時でも表情や所作に気品が漂っている。

 漆原を演じるのは、7歳で初舞台を踏み、現在は大衆演劇の劇団、劇団九州男の座長をつとめる大川良太郎。大川は自身の劇団で女形も立ち役(女形・子役以外の男の役)も演じている。大川は、漆原に焦点を置いたシーン以外でも、ちょっとした仕草や視線の運びによって、独特な色気がある漆原のキャラクター像を鮮明にしている。彼の存在感に目を引かれた視聴者は少なくないはずだ。

 雰囲気ある漆原にも心惹かれるが、千秋楽公演前にぎっくり腰になり、楽屋に一人取り残される姿も「ちょっと笑っちゃった」「ジワジワくる」と話題になっていた。

 第19回で、一座を率いてきた千之助が千秋楽前に行方をくらまし、ピンチに陥った時、天晴、徳利、漆原らは一平に千之助の役をやらせた。初代・天海天海の時代からの座員である彼らは、幼い頃から役者を務めてきた一平を見守ってきた。一平の葛藤を知っているからこそ、彼を見込み、大役を務めさせたのだろう。天晴が一平に最後の挨拶を促すと、一平は「必ずここに戻ってきます」 と頭を下げる。その言葉を聞いた天晴と徳利、楽屋で横たわる漆原は安堵しているように見えた。

 千之助の行方は分からぬままだが、今後新しい喜劇を作り出す千代と一平の前に再び現れることだろう。道頓堀を出た千代と、天海天海一座の再会が今から楽しみだ。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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