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ザ・なつやすみバンド 中川理沙とMC.sirafuが語る、『Terminal』に結実した信頼感と制作の喜び

リアルサウンド

19/9/8(日) 7:00

 ザ・なつやすみバンドが初のミニアルバム『Terminal』を発表した。昨年、結成10周年を迎えひとつの区切りを迎えた彼らは、今作でこれまでにない「合宿」という制作スタイルを選んだ。実際、短期間で勢いよく作られたことによって、これまでと比べてアグレッシブな印象の作品になっている。ここではバンドの中核となるボーカル&ピアノの中川理沙と、スティールパン、トランペットなどを担当し、ソングライターとしても重要な役割を果たすMC.sirafuに、『Terminal』がザ・なつやすみバンドにとってどのようなアルバムになったのかを聞いた。(栗本斉)

メンバーに対する信頼感も強まってきました(中川理沙)

――前作のアルバム『映像』からおよそ1年ぶりの作品になりますが、今作『Terminal』の制作に至る経緯を教えてください。

中川理沙:今年に入って次作をどうしようかと考えていた時に、「とにかく毎年リリースをしよう」という話になりました。それで、「合宿でもして気軽に作ろう」ということになり、6月に小淵沢のスタジオで合宿することになったんです。

MC.sirafu:今ってリリースの仕方や、音楽そのものの聴かせ方も広がってきているじゃないですか。海外ではサブスクだけでアルバム配信するとか。現場感がそういった流れに変わってきているので、自分たちも作った曲をスピードを持たせてリリースしていけないかなと。それで、短期で作るために「合宿だ!」ってことになり、トントン拍子に進んでいきました。

――合宿をすることの狙いは何だったのでしょうか。

MC.sirafu:僕たちは曲ができてレコーディングするまで、アレンジを練って練習やリハを重ねるので、作り込むのに時間がかかるんです。でもそろそろ勢いで作ってみるのもいいかなと思ったのと、そうしてできたものを聴いてみたいというのもありました。結果的に結構作り込みましたが、笑。

――じゃあ、どういうアルバムを作ろうというのも決めていなかったということですか。

中川理沙:そうですね。これまでの曲作りはアルバム全体のイメージをしっかり固めてから作業していたのですが、今回はそういうことは一切考えず自由に曲を作っていきました。押し曲のようなポップな曲はどれかなとか、いつも考えるんですけれど、今回はそういったこともなかったです。

MC.sirafu:これまでのアルバム制作では、曲順など全体のストーリーを大切にしていたんです。でも今回はどういう並びであってもリリースすることに意義があったし、曲順もレコーディングが終わってから決めました。

――実際にレコーディングに入ってみて、これまでと違うと感じたことはありますか。

中川理沙:レコーディングっていつも気が張り詰めていて、この音楽を誰かに届けないといけないという使命感もあるのですが、今回はかなり気楽に作れたと思います。あとは、咋年10周年を迎えたことで、メンバーに対する信頼感も強まってきましたね。

――信頼感とは具体的にはどういうことですか。

中川理沙:「こうしてほしい」と伝えたら、思ったとおりにやってくれるという信頼感ですね。それも、自分が言ったままではなく、メンバーそれぞれの個性を通して、バンドとの調和を取ってくれるというか。その部分は安心してメンバーに伝えることができるようになりました。

MC.sirafu:ここ数年やってきた、自分のバンド以外のミュージシャンとの交流やコラボも大きいと思います。他の表現者がどういう作り方をしているかを、間近で見ることができたのは重要なことだと思います。

――具体的な楽曲作りの手順をうかがってもいいですか。

中川理沙:私は詞曲がほぼ同時にできるので、その状態で弾き語りでデモを作りました。その時点でアレンジもある程度決まっていて、コーラスもデモに入れましたね。

MC.sirafu:僕は曲が先で詞が後なのですが、デモの段階で6割くらいは作り込んで、あとの4割はレコーディングまで決めずに、メンバーに好きにやってもらいました。

――昨年のインタビュー(ザ・なつやすみバンド 中川理沙が語る、ブラジル音楽の魅力と自作への影響)では、ブラジル音楽に凝っているというお話でしたが、今回も冒頭の「雨」にミルトン・ナシメントの影響を感じました。

中川理沙:たしかにこの曲を作った時は、ミルトンばかり聴いていました。曲がなかなかできなくて落ち込んでいた時期で、雨が降っていたんです。それでメロディがふっと浮かんだから少し気持ちが前向きになって、歌詞もすっと出てきました。

――最初は優しい王道ポップスというイメージなのに、間奏でちょっとスリリングになるのが面白いですね。

中川理沙:そうなんです。そういう感覚を狙いました。

――次の「赤いワンピース」もサンバやラテンの雰囲気があって、でもコーラスがちょっと変わっている面白い楽曲ですね。

MC.sirafu:コーラスのサイケデリックな感じは僕の好みです。ムタンチスやAquariusといったブラジリアンサイケ、レアグルーヴが好きなので、そういったテイストが出ているかもしれないですね。

――前回のインタビューで中川さんは、sirafuさんからブラジル音楽を教えてもらったとおっしゃっていました。

MC.sirafu:でも僕は、そういった音楽をブラジルというよりも、サイケやアバンギャルドの側面から聴いていたので、普通とは違うかもしれないですね。サン・ラの流れでエルメート・パスコアールを聴いたりとか。

――ただ、「赤いワンピース」は躍動感があって色彩も感じられて、とてもポップで夏っぽく仕上がっていますね。

中川理沙:まさにそういう曲が作りたかったんです。これはfoufouというブランドが毎年夏だけ真っ赤なワンピースを販売していて、そのイメージソングです。軽やかで明るくて、〈ドラマチックな夏〉というフレーズを入れて、女の子が夏を楽しんでいるイメージで作りました。THE BOOMの「風になりたい」みたいに盛り上がる曲を作ってみたいというのもありましたね。

作品を作る喜びに溢れている状況を手に入れてしまった(MC.sirafu)

――続く「水の戦記」もどこかエキゾチックでブラジルっぽさも感じられます。

MC.sirafu:かなりボーダレスミュージックであることを意識したのと、ツインギター編成がポイントです。今回、僕も中川もエレキギターを弾いているんですけど、ようやくこれで普通のバンド編成ができたというか。普通のバンドが最初に感じるであろうロックの初期衝動みたいなものを、今になってやっと味わえました(笑)。

中川理沙:私もエレキギターを演奏してレコーディングしたのが初めてだったので、そこはサウンド的にもいつもと違うところですね。

MC.sirafu:ロック特有の言葉にできないグルーブも、今回は出せたかなとも思います。

――たしかに、今回のアルバムはこれまで以上に躍動感を感じます。

中川理沙:たしかに、今までとはちょっと違う雰囲気があると思います。こういうのもできるんだなっていう。

MC.sirafu:まさにそれがロックなんですよ。今更ですが(笑)。

――あとコーラスがすごく印象的ですね。「旅のしおり」とか。

中川理沙:この曲のコーラスはアントニオ・カルロス・ジョビンの女性コーラスのようなものを入れたいなって思って作りました。アルバム全体的に、隙間があればコーラスを詰め込むっていうくらい入れまくりました(笑)。

――かと思えば「星の日(STAR DAYS)」はチェロが入っていて、室内楽風のアレンジが印象に残りました。

MC.sirafu:実はこの曲は、アレンジはノープランで作り始めました。途中のエモーショナルな展開のところはチェロが入るといいなと思ったんですけれど、曲全体にどう組み込むのかはまったくイメージしていなくて。でも、いつもサポートしてくれている関口(将史)くんならうまくやってくれるだろうってことで、彼に丸投げしました。

――それは意外ですね。事前にきっちりアレンジしたのかと思いました。

MC.sirafu:今回はそういうことがしたかったんですよ。関口くんだけでなく、フルートの池田若菜やパーカッションのチャーベ(松田“CHABE”岳二)さんもそうなんですけれど、基本的に丸投げです。サポートメンバーのダビングは合宿ではなく東京で行ったのですが、その部分の受け皿を敢えて残して、小淵沢での作業を終えたという感じでしたね。

――アルバムが仕上がって、どういう作品になったと感じますか。

中川理沙:実は3部作にしようと考えているんです。だから、毎年1枚ミニアルバムを作っていく計画です。『Terminal』というタイトルも、3部作でザ・なつやすみバンドの頭文字の「T・N・B」になるように「T」で始まる言葉を探したんです。

MC.sirafu:これまでのアルバム制作は作らなきゃいけないという感覚もあって、しかもフルアルバムってめちゃくちゃエネルギーを使うんです。でも、今回はミニアルバムというサイズだったので楽しいという感覚しかなかった。だからもう、早く次の作品を作りたい。作品を作る喜びに溢れている状況を手に入れてしまったので、本当に幸せですよ(笑)。ミニアルバムだと何をやっても自由なわけだし、もしかしたら1曲30分のみという作品を作るかもしれない。それくらい未来が見えないことが、楽しくてしょうがないですね。

中川理沙:合宿も初めてだったし、ワイワイと楽しく、それこそ夏休みの自由研究をみんなでやったという感覚です。それでバンドがまた仲良くなったという感じもあって。バンドも10年続けるといろんなことがあるし、ぴりぴりしていた時期も実際にあったんですけれど、今はすごくまとまっていますね。それも今回のレコーディングの大きな成果だったと思います。

――ツアーも始まりますが、『Terminal』での成果は生かされそうですか。

中川理沙:合宿でみんなちょっとずつ上手くなった気はします(笑)。あとはやはり、バンドの状態の良さが、きっとライヴでも感じられるんじゃないかと思います。

MC.sirafu:今回の制作を経て楽曲の幅がかなり広がった感覚があるので、セットリストもずいぶん変わってくるんじゃないかな。あと、ビルボードライブ東京の1stセットはデビュー作の『TNB!』をメインに演奏するという企画なのですが、再現ではなく今のモードで演奏することになると思います。古い曲や今まであまりやっていなかった曲も新鮮な感覚でできることがとても楽しみですね。

(取材・文=栗本斉)

■リリース情報
『Terminal』
1. 雨
lyric&music 中川理沙
2. 赤いワンピース
lyric&music 中川理沙
3. 水の戦記
lyric&music MC.sirafu
4. 黒い犬
lyric&music 中川理沙
5. 旅のしおり
lyric&music MC.sirafu
6. 星の日(STAR DAYS)
lyric&music 中川理沙、MC.sirafu
7. ネバーエンディング通り
lyric&music MC.sirafu

価格:¥2,500(税抜)
※ツアー会場限定特典写真集付き

『TNB!』
12inch LP
価格:¥2,700(税抜)
9月16日 ツアー会場先行販売開始
10月2日 一般発売

■ツアー情報
『ザ・なつやすみバンド『Terminal』リリース記念
夏のしおりツアー2019』
9月16日(月・祝)
<大阪公演>
大阪十三 246 LIVE HOUSE GABU
17:30開場/18:00開演
前売:3,500円(税別)/当日:4,000円(税別)※共に1ドリンク別

9月17日(火)
<名古屋公演>
TOKUZO
18:30開場/19:30開演
前売:3,500円(税込)/当日:4,000円(税込)※共に1ドリンク別

9月24日(火)
<東京公演>
ビルボードライブ東京
1stステージ『TNB! 』再現プラスα
開場17:30/開演18:30
2ndステージ 『Terminal』リリース記念ライブ
開場20:30/開演21:30
サービスエリア:6,500円(税込)
カジュアルエリア:5,500円(税込)※1ドリンク付

公式サイト

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