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最終話で明らかになったテーマとは? 『先生を消す方程式。』は前例のないドラマに

リアルサウンド

20/12/20(日) 12:50

「義澤くん、今日から君は僕の生徒だ」

 ドラマの既成概念を覆す意欲的なチャレンジが幕を閉じた。『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)最終話では、ジェットコースターのような展開が想像のはるか上を行く結末を呼び込んだ(※以下ネタバレあり)

 静(松本まりか)を人質に取った朝日(山田裕貴)は、義経(田中圭)や刀矢(高橋文哉)たちの前で静を殺そうとした理由を話し出す。「先生を消す」一連の事件の発端には、自らが犯した過ちを消そうとする朝日の魂胆があった。

 朝日と対峙する義経。二転三転する攻防は方程式対決の様相を帯びる。最初に朝日が繰り出したのは「勇気―正気=恐怖」。静を手にかけることでいじめられっ子の立場を逆転した朝日は、それ以降、恐怖によって他人を支配するようになった。これに義経は「人生×愛すること=地獄」の方程式で対抗する。

 「人を好きになることと愛することは似ているようで違います」。義経最後の授業は愛がテーマ。愛することで人生は彩りを増す。その反面「自分が愛しているのに、その愛を向けられないことは地獄だ」。どれだけ愛してもその愛が届かない孤独は、義経が背負ってきたもの。しかし、義経はその愛を生徒たちに向けた。「目の前に愛すべき人たちがもっともっといる」。それを教えてくれたのも静だった。義経は生徒たちに「君たちに会えて幸せだ。愛してる」と語りかける。

 最終話で明らかになった本作のテーマ「愛」。意外なほどシンプルで奇をてらわないメッセージは、教え育むという行為が究極的に愛でしかないこと、『先生を消す方程式。』がまぎれもない学園ドラマであることを伝えていた。一方、朝日のように愛情が通じない相手もいる。朝日のような人間が孤独のうちに死んでいくしかないのなら、それは教育の敗北ではないのだろうか? 「絶対的な悪に対して教育は何ができるか」という問題提起もはらんでいた。

 鈴木おさむについて言えば、センセーショナルな言辞で耳目を引き付ける言葉の貫通力ともいうべき資質は、ドラマ本編・スピンオフを通じてまんべんなく発揮されていた。『会社は学校じゃねぇんだよ』(AbemaTV)などで示した既存の常識に一石を投じる姿から、鈴木は「モラルの破壊者」として見られがちだ。しかし、根底には普遍的なメッセージがある。不倫をテーマにしたドラマがラブストーリーを再定義するように、「先生を消す」という劇薬を投じることで教育の本質をえぐり出した。

 義経vs朝日、義経vs4C、朝日vs4C。スピンオフ『頼田朝日の方程式。』(ABEMAプレミアム)も含めて、至るところに対決構図がある『先生を消す方程式。』。先生対生徒の図式は学園ドラマの典型だが、2000年代以降、教師・生徒間の闘いは壮絶さを増し、サバイバルの様相を呈した。週刊少年ジャンプ原作でアニメ化、実写映画化された『暗殺教室』や、『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)は、ヒール的な要素を持つ教師と生徒の対決が見どころになった。

 「悪」の側にいるのが生徒で、教師が方程式を駆使して戦う点が本作の新しさであり、ゾンビ展開も含めて『先生を消す方程式。』は前例のないサバイバル学園ドラマとして記憶されることだろう。それらを可能にしたのがキャストの熱演だったことは間違いない。田中はインタビューで、鈴木の要求に対して「キャストのみんながどうやって打ち勝つかというのがドラマのポイント」(参考:田中圭が語る、『先生を消す方程式。』脚本家・鈴木おさむへの信頼 「僕にとって本当に貴重な人」)と語っていたが、見事にその期待に応えてみせた。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『先生を消す方程式。』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:田中圭、山田裕貴、高橋文哉、久保田紗友、森田想、高橋侃、秋谷郁甫、奥山かずさ、榊原有那、川瀬莉子、田中亨、松本まりか
脚本:鈴木おさむ
音楽:HAL
監督:小松隆志ほか
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:秋山貴人(テレビ朝日)、遠田孝一(MMJ)、小路美智子(MMJ)
制作:テレビ朝日/MMJ
(c)テレビ朝日
公式Twitter: https://twitter.com/senkesu5
公式Instagram: https://www.instagram.com/senkesu5/
YouTubeテレビ朝日公式チャンネル:https://www.youtube.com/user/tvasahi

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