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稲葉友の「話はかわるけど」

あの頃×今時×発掘【後編】

毎週連載

第121回

舞台に立つ側・見る側として、そして情報発信をする側として、エンターティメントを愛する稲葉さん。懐古主義では新しい感動に出会えません。ワクワクを保つ重要性を語ります。

生きていて毎回正しい判断ができているかと言えば当然そんなことはない。たくさん取りこぼしながら生きている。最近は改めていろいろ体に入れ直さなければと今の思考や思惑みたいなものを確認してやることやって発信していかないとイカンなと思う。 つい「あの頃は良かったな」思うのはわかる。でもそういうことを言わない人の方が面白い気がする。

選択肢から選ぶものが時代に合っているかという立ち止まりは必要。自分が最先端ではないと自覚しなければと。若いころは自分の思考が古いとか新しいとか正しいとか正しくないとか何も考えずに新しいことを飲み込んでいたし「それ、わかりません!」と言える快感もあった。そうすると上の人も「え?これ知らないの!?」とちょっと嬉しそうに教えてくれたりね。でもだんだんとそうもいかなくなっていく。

例えばSNSだとTikTokには全くついていけていない。一応アプリを落として動画見て「こういうものか」と認識はした。それでアプリを消したら、仕事で必要になってまた落として仕事の後もう使わないと思って再度消したら、また仕事で必要になって、とそんな感じ。あんまりちゃんと付き合えていない。TikTokがわからないんじゃなくて、自分なりに理解している範囲を知っているというか。サブスクもそうだし、流行っているものに関してはここまではわかるけど、その先は分からない。ただ興味があることに関しては、最新情報に近い所にいると思う。日本のHIP-HOPに関しては10代の若手もわかる。

今はちょうど狭間の年齢なんだと思う。若いけど若くはない。年だけどそんなに年を取っていない。だからこそどっちの気持ちにも歩数少なめで歩み寄れる世代かもしれないとも思う。少し頑張れば発信も受信も先端に行ける。

僕らの世代は今、自主的に発信している人多くてちゃんとクリエイトしているなと思う。僕自身も敏感でありたい。割と鈍感でいいやと思う時期もあって、それはそれで自分の中にあるものを洗い出して組み立て直していた時期だからそれはそれでよかった。でも今は改めて何でも入ってこいというマインドになっている。

自分の“あの頃”をあてにしたくはないけど、同時に否定もしない。そして現状の否定もしない。自分より若い世代からもらえるものはもらうし、先輩たちからも何かをいいとこどりしたい。いらないものはいらない。ミーハーという意味でなくアンテナをちゃんと張り直して「知らない」を減らしたい。興味がないものなら無理に深掘りしなくていいけど「そういうものがある」ということは知っておきたい。何に生きてくるか分からないから本当に。

結局はバランスなんだろうな。そして僕自身が今、そういう世代なんだろうな。先の時代に歩いて行けるし以前の良さも知っている。平成生まれだけど昭和の残り香も嗅いでいるんだよな90年代生まれは。

演劇にしろHIP-HOPにしろ自分の好きなジャンルに対しては深さも凝り方も今までと変わらずにいたい。そのうえで何か新しいものへの好奇心を高めたい。昨今は人にも会う機会が激減しているし、自分より若い世代と話して新情報を得る機会も少ないので殊更意識していきたい。

最近のHIP-HOPの世界で僕がすごくいいなと思った沖縄の若手クルーがいる。「SugLawd Familiar」という全員18歳くらいなんだけど「久しぶりにちゃんと言葉が聞こえる、日本の若手が出てきた!」と嬉しかった。近年のJapanese HIP-HOPでは海外の詞の乗せ方でトラップというのが流行っている。日本語と英語を両方使って音は気持ち良いけど何を言っているか分からないものが多い。トラックやフロウは凄いカッコいいんだけど僕には洋楽を聴いているように感じられて、なら洋楽を聴こうかなと思ってしまう。

でもこのSugLawd Familiarは英語は当然混じえつつもしっかり日本語が聞こえる。インタビューなどを読むとJapanese HIP-HOPというジャンルに置ける中堅のカッコいい人たちの影響を受けているのもまたいい。自分が好きなものを源流に感じる。言葉も乗せ方もいい。こういう若い人が出てるんだ、それで僕に刺さるんだってことにすごく感動した。

好みはあるけど、そういうことも含めて見直し時で吸収し時なんだろうな。以前までは片っ端からライブに足を運んで何度か観るうちに好きになったりしていた。King Gnuとかまさにそうで、メジャーデビュー前に何組か出るイベントで見て「なんだこの人ら!」と衝撃を受けた。自分の中でそういう出会いが増えるのは嬉しい。早くライブが行きやすい時期になってほしい。若手もベテランも生で観たい。

仕事の関係でライブや観劇には行けなかったり、それまで得られていた周囲からの理解が得られず「今行くの?」と言われてしまったりするのは仕方がない。僕は舞台をやる人間で、みんなにエンターティメントを見てほしいから僕自身も多くの作品を見なければと思っている。自分が舞台をやるときは「行くね、詳細を送って」と言ってくれた人にだけ情報を送る。行くかどうか迷っている人に気を遣わせたら悪いし、今の世の中、誰も彼もと誘えないのはわかっているから。動ける範囲での受信の感度を上げていきたい今日この頃です。

次回の更新は5月5日(水)です。お楽しみに!

プロフィール

稲葉友(いなばゆう)

1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。
2010年、ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)で俳優デビュー後、ドラマ、映画、舞台と幅広く活動。
主な出演作に、ドラマ『仮面ライダードライブ』(‘14~’15 EX)、『MARS~ただ、君を愛してる~』(’16 NTV)、『ひぐらしのなく頃に』(’16 BSスカパー!)、『レンタル救世主』(’16 NTV)、『将棋めし』(’17 CX)、映画『ワンダフルワールドエンド』(’15)、『HiGH&LOW』シリーズ、『N.Y.マックスマン』(’18)、『私の人生なのに』(’18)、舞台『すべての四月のために』(’17)、映画『春待つ僕ら』(’19)『この道』(’19)など。
J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(毎週金曜11:30~16:00生放送)ではレギュラーパーソナリティ―を務める。

衣装協力/ストライプシャツ¥35,200/ディスカバード(ディスカバード TEL:03-3463-3082)
Vネックシャツ¥39,600/アン(アン TEL:085-921-5420)
中に着たトラックジャケット¥44,000/クルニ
リング各¥74,800/シンゴクズノ(ともにシアン PR TEL:03-6662-5525)
パンツ¥34,100/ケンイチ(サカス PR TEL:03-6447-2762)
シューズ¥28,600/ウォルシュ(カメイ・プロアクト株式会社 TEL:03-6450-1515)
IDチェーンブレスレット(右手)¥44,000/トゥエンティー エイティー、
ハンマーバングル(左手)¥13,200、コッパーバングル(左手)¥5,500/ともにノース ワークス(ともにヘムト PR TEL:03-6721-0882)

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