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柿澤勇人「今だからこその奇跡的な空間になる」『ジーザス・クライスト=スーパースタ― in コンサート』

ぴあ

柿澤勇人 撮影:源賀津己

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『ジーザス・クライスト=スーパースタ― in コンサート』が7月15日(木)から27日(火)まで開催される。本作は、ミュージカル界の⻤才、アンドリュー・ロイド=ウェバーの初期作品『ジーザス・クライスト=スーパースター』をコンサート形式で上演する作品で、2019年の初演は⽇本初となるオリジナル言語である英語での上演、そして世界のミュージカル・スターたちによる夢の共演が大きな話題となった。
その待望の再演は、ジーザス役に、ブロードウェイで活躍し現在は韓国ミュージカル界のトップスターとして絶大なる人気を誇るマイケル・K・リー、ユダ役に、ウエストエンドをベースとして世界中に多くのファンを持つラミン・カリムルーが初演に続き出演。さらにセリンダ・シューンマッカー、ロベール・マリアン、アーロン・ウォルポール、テリー・リアンと豪華キャストが来日する。⽇本人キャストは柿澤勇人、宮原浩暢(LE VELVETS)、藤岡正明。出演者のひとりである柿澤勇人に話を聞いた。

またこの作品の出演者になれることが嬉しい

──『ジーザス・クライスト=スーパースターinコンサート』に出演が決まっていかがですか。

僕にとってはすごく思い入れのある作品ですし、日本では劇団四季に戻らない限りは携わる機会のない作品だと思っていたので、これはなにかの縁だと感じています。しかも出演者はマイケル・K・リーやラミン・カリムルーをはじめすごい方たちばかり。きっとコテンパンにされるんだろうなと思っています(笑)。

『ジーザス・クライスト=スーパースター in コンサート』出演メンバー 最前列左から藤岡正明、柿澤勇人、ラミン・カリムルー、マイケル・K・リー、セリンダ・シューンマッカー、宮原浩暢(LE VELVETS)、階段手前からテリー・リアン、ロベール・マリアン、アーロン・ウォルポール 撮影:渡部孝弘

──コテンパンにされますか。

はい。「やっぱりすごい人はいっぱいいるんだな」と落ち込むことが多々あるだろうなと思いますね。以前、『ミュージカル・ミーツ・シンフォニー2018』というコンサートでノーム・ルイスやジョン・オーウェン=ジョーンズとご一緒したときも、落ち込んで落ち込んで(笑)。今回も同じようなことになるかもしれないですが、それでも自分の表現の糧にはなると思っています。技術面でも内面でも、学ぶことは多いんじゃないかな。

──最初におっしゃった「思い入れのある作品」というのは、劇団四季でのデビュー作だからということですか?

はい、それが一番大きいです。演者としても、スタッフとしても、参加した作品ですしね。携わっている期間が長かったんですよ。

──スタッフとしても参加されたのですか。

劇団四季の研究生の時に〈​ジャポネスク・バージョン〉のスタッフワークをしました。それが僕にとっての初舞台でしたね。そして〈​エルサレム・バージョン〉が初めて出演した作品です。その時はアンサンブルでした。だから劇団四季でも思い出がたくさんある作品ですし、僕はこの作品が本当に好きなんです。だからまたこの作品の出演者になれることが、やっぱり嬉しいです。

いつも、今日を一生懸命生きられればいいと思っている

──この作品は、曲をピックアップして歌うのではなく、衣装、道具、セットの転換は無いもののオーバーチュアからカーテンコールまで全幕演奏されるものです。そこはどのように思われますか?

もともと『ジーザス・クライスト=スーパースター』(以下、舞台版)も、曲と曲との間に芝居を挟まない、歌だけでつないでいくスタイルの作品ですからね。ただ、舞台版は目がいくつあっても足りないような演出なので、今回のコンサート版のシンプルさは、逆にお客様の想像が膨らみやすいかもしれないと思っています。

歌は間違いなくうまいわけなので、完全にアンドリュー・ロイド=ウェバーの音楽に集中して楽しんでいただけますし、ミュージカルが好きな人たちには絶好の機会なんじゃないかな。

──歌だけでみせていくことを柿澤さんご自身はどう思われていますか?

僕は本当はお芝居なしっていうのは苦手なんですよ。でも今回は本当に素晴らしい役者が揃っているので、きちんとハマれば面白いことになると思います。僕のところであれっと思われないようにがんばるしかないですね。

──さっきも「コテンパンに」とおっしゃっていましたし、歌の部分に不安があるのですか?

ありますよ。ミュージカルを仕事としてやっていると、それが年々、枷というかコンプレックスになってくるんですよね。歌に関しても、踊りに関しても、全く自信がないです。

──経験を重ねて自信がついたりしないものですか。

しないです。むしろ年々不安になっていきますね。でも楽しみでもありますよ。(舞台版に出演した)19歳の自分も思い出すだろうし。

──当時はスタッフやアンサンブルだったのに、今回はシモン役としてメインで出演されることに、感慨のようなものはありますか?

感慨深い気持ちになることは実はあまりないんです。僕は普段から「ここまでがんばった」とか思わなくて。でも実際に舞台に立ったらそう思うのかなあ……いやいやいや……。例えば今年、吉田鋼太郎さんと二人芝居(舞台『スルース~探偵~』​)をやらせてもらいましたが、もちろんやり切った達成感はあったけど「ここまできた」とかそういう感覚は全くありませんでした。目の前にあることを一生懸命やることしかないんですよね。今日を一生懸命生きられればいいかなっていう感覚なんです、いつも。

──先のことを考えたりされませんか?

計算もできないし、読めないので考えません。セルフプロデュースもできないタイプだから、そういうことは事務所に任せています。もちろん「ああしたい」「こうしたくない」みたいな話はしますけど、結局は一生懸命やるしかない、現場で闘うしかない、みたいな感じで生きてきたから。先のことはわからないんです。

──そういう日々って苦しいのですか?

いえいえ、面白いです。今回も楽しみですもん。はじめましての人と出会うのが僕はすごく好きだし。国も文化も違うので、考え方も違うだろうし、俳優としてどう向き合っているのかとか聞けたらいいなと思っています。

──柿澤さんってひとりで大丈夫そうに見えたりするんですけど、実際はそうじゃないんですかね。

強く見られがちなんですけど、全然強くないですよ(笑)。誰かに話を聞いてもらいたいし、人の話を聞きたいタイプです。

──役者としてはどうなりたいと思われていますか?

ジャンル問わず闘えるようになりたいです。以前、とある映画監督と話したことですが、例えば格闘技にも、柔道とか空手とか、ボクシング、K-1……といろいろありますよね。その全部で闘える人がいたら最強だと思うんです。役者の仕事も、監督や演出家によって正解も全く違うし、さらに言えば、映画もあるし、ドラマもあるし、ミュージカルも、演劇もある。僕はその全部でビビッドに反応して表現することができたらいいなという理想があります。まだ全然そんなふうにはできていませんけどね。

気軽に来てほしい気持ちと、心して来てほしい気持ちの両方

──作品ではイエス・キリストが十字架にかけられるまでの最期の7日間を描くストーリーが描かれ、柿澤さんが演じるのは、キリストの弟子「十二使徒」のひとり・シモンです。『狂信者シモン(Simon Zealotes)』という楽曲もあるようなキャラクターですが、シモンをどうつくっていこうと思われていますか?

そこは、コンサートとはいえ芝居だと思ってつくっていこうと思っています。シモンはめちゃくちゃ熱いし、ある意味狂っている人物で。それをどう出せるのかは、演出家とも話し合いながら考えていきたいです。

──アンドリュー・ロイド=ウェバーの若い頃の楽曲が素敵ですよね。

全部カッコいいですよね。ユダの楽曲は最初の『Heaven On Their Minds』もラストの『SUPERSTAR』もロイド=ウェバーの代表曲だし、じゃあそれだけかと思ったら、ジーザスの『GETHSEMANE』があり、シモンの『Simon Zealotes / Poor Jerusalem』があり、マリアの『I Don't Know How to Love Him』があって、それも代表曲ですからね。一体何曲あるんだ、この作品に、と思うんですけど、なぜか耳が痛くなるようなことは一切ない。それは物語と登場人物の心がリンクしているからだと思います。非常に観やすいし入り込みやすいメロディです。

──それを歌うのは?

めちゃくちゃ大変ですよ。男性にとってはとんでもなく高いキーが使われているので。ジーザスなんてもっとですけど。僕にはとても出ないようなキーを、ロック調でガーっと歌ったりするから。それはユダの曲も同じで。ジーザスとユダの曲を歌える人は、海外を含めなかなかいないと思います。それを完璧に操れるキャストが今回来日するので、歌を通して、いろんなものを吹っ飛ばしてくれるようなエネルギーが飛んでくると思います。

──シモンの曲も楽しみです。

シモンの曲は劇中で一番一体感を感じることができる曲だと思うんですよ。一緒になってお祭り騒ぎできるような曲なので、そこを一緒に楽しんでもらえたらいいなと思っています。

──最後に、柿澤さんがお客様に楽しみにしていてほしいことを聞かせてください。

世界中の劇場がクローズした状態が続いていて、来日キャストはうっぷんがたまりにたまった状態だと思うんです。だから今回は、世界レベルの声であることに加え、劇場への思いも乗せた声が聴ける思います。そういう特別な、奇跡的な空間になるんじゃないかな。と言いつつも、お客さんにはあまり深く考えずにロックライブを観るような感覚で楽しんでほしい気持ちもあるから……。気軽に観に来てほしいなって気持ちと、心して来てほしいなって気持ち、両方の気持ちでお待ちしています!(笑)

取材・文:中川實穗 撮影(柿澤勇人):源賀津己



『ジーザス・クライスト=スーパースタ― in コンサート』
【東京公演】
2021年7月15日(木)~7月27日(火)
会場:東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11F)
【大阪公演】
2021年7月31日(土)~8月1日(日)
会場:フェスティバルホール

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2170460

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