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古田新太、朝ドラ『エール』廿日市役で発揮する俯瞰力 『半沢直樹』新シーズンにも期待

リアルサウンド

20/6/24(水) 6:00

 『エール』(NHK総合)でコロンブスレコードのディレクター・廿日市誉を演じている古田新太。廿日市はヒット曲の出ない裕一(窪田正孝)にチクリと小言を言ったかと思えば、大御所の小山田耕三(志村けん)や双浦環(柴咲コウ)にはガラリと態度を変える。古田の朝ドラ出演は『あまちゃん』、『とと姉ちゃん』(NHK総合)に続いて3作目。『あまちゃん』では芸能事務所の社長でプロデューサーの荒巻太一を演じており、業界人の廿日市は荒巻の再来として話題になった。

参考:『エール』山崎育三郎、古川雄大との“にらみ合い”語る 「奇想天外なシーンになっています!」

 主演から脇役まで自在に演じ分ける古田は日本の演劇界を代表する俳優だ。大阪芸術大学在学中に渡辺いっけいに誘われて劇団☆新感線に参加すると、看板俳優として同劇団の人気をけん引した。25歳で本格的に拠点を東京に移すと、野田秀樹やケラリーノ・サンドロヴィッチらが手がける外部公演、『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)をはじめとするラジオのパーソナリティ、『木更津キャッツアイ』(TBS系)ほか多数のドラマ、映画に出演し、多方面にその才能を発揮してきた。

 どんな役でも演じられるのが古田の真骨頂。女装家の高校教師(『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系))やネイティブアメリカン(『ギャルサー』(日本テレビ系))にはじまり、ゾウ(『夢をかなえるゾウ』(日本テレビ))やカワウソ(『伝染るんです』(BeeTV))まで、無茶ぶりと思える役柄にも難なく対応してきた。それを可能にしているのは、舞台で鍛え上げた演技力だ。観客を前にして、編集の効かない舞台で主役と悪役を一人二役で演じ、名だたる演出家たちのリクエストにも臨機応変に応えてきた。

 俳優としての古田は、舞台上で起きていることをすべて把握していると言われる。『川柳居酒屋なつみ』(テレビ朝日系)にゲスト出演した際、常連客(ホスト)のムロツヨシが紹介したエピソードは、そのことを物語って余りある。共演した俳優の堤真一が舞台の感想を聞く唯一の相手が古田であり、堤によれば、その理由は「全部教えてくれるから」で「ずっと芝居を俯瞰で見ている」ためだという。

 古田自身の言葉を借りると「僕はオモシロ劇団出身なので、役に入り込むことがない。ツッコミ、ボケ、トーン……全部決めて演じないと笑いがとれないから、俯瞰で見るクセがある」(引用:劇団☆新感線の看板俳優・古田新太が、現場を“掌握”する|映画.com)とのことだが、「長いことやっていると、舞台に立つ位置の黄金律が分かるようになるんです」(引用:古田新太さんにインタビュー|リビング大阪Web)と、舞台での経験が全体を俯瞰する視点を培ったことがわかる。

 古田の俯瞰は人物造形でもいかんなく発揮される。『エール』の廿日市に目をやると、善人キャラが多い中で、裕一の前に立ちはだかるヒール役としての存在感が絶妙だ。出世と売上げのことしか頭になく、木枯(野田洋次郎)に「金のことしか頭にない」と毒づかれる廿日市だが、根っからの悪人というわけではなく、どの会社にも1人はいるような憎まれっ子ぶりが板についている。『あまちゃん』の荒巻も敏腕プロデューサーではあるが、世間体を気にして右往左往する様子がリアルだった。

 『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の沼田もそうだが、どのキャラクターも他の登場人物との兼ね合いでちょうど良い位置に収まっているように見える。これらは全体を俯瞰する古田の視点があってこそだろう。相手役を生かすことで定評があり、共演オファーが途切れないのは理由があるのだ。その上で、どの役も適度に面白さを感じさせるのだから心憎い。

 舞台では主役を務める反面、映像の世界では長らくバイプレイヤーとして主役を支え続けてきた古田。最近では主演で起用される機会も増えており、何でも演じられる古田に時代が追い付いてきた感がある。7月19日から放送開始される『半沢直樹』(TBS系)では、半沢(堺雅人)と対立する副頭取の三笠洋一郎役での出演も決まっている。怪優が真の実力を示すのはこれからかもしれない。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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