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長澤まさみらの“新たな一面”に注目! 実際に起きた殺害事件を基にした映画『MOTHER マザー』

リアルサウンド

20/7/3(金) 18:00

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、長澤まさみと同い年で生年月日も1週間違いの宮川が、『MOTHER マザー』をプッシュします。

『MOTHER マザー』

 2014年3月、埼玉県川口市で当時17歳の少年が、祖父母を刺殺し、現金を奪う殺害事件が発生。少年は強盗殺人容疑で逮捕され、裁判で懲役15年の判決を受けた。

 本作『MOTHER マザー』は、この川口祖父母殺害事件に着想を得て、新たな物語として描いた人間ドラマ。『新聞記者』『宮本から君へ』などを手がけた河村光庸プロデューサーと、『光』『タロウのバカ』の大森立嗣監督がタッグを組み、フィクションを交えながら映像化した。

 この作品には、注目すべきポイントがいくつかある。まずは何よりも、主演の長澤まさみが挑んだ役柄だ。男たちと行きずりの関係を持ち、その場しのぎで生きてきた奔放な女性・秋子。彼女はシングルマザーで、実の息子である周平に対して、異様な執着心を持っている。その親子の関係性が、やがて上記のような殺害事件を生むことになってしまう。作品のトーンはひたすら暗く、そのトーンを決定づけているのが長澤の存在感。奇しくもシリーズ最新作となる映画が同月に公開となる『コンフィデンスマンJP』(7月23日公開『コンフィデンスマンJP プリンセス編』)で演じている、ハイテンションで明るいダー子とは真逆の役柄だと言えよう。怪我をした息子のひざを舐めたり、肌着でラブホテルのベッドに寝そべったり、うつろな目でタバコをふかしたり、海辺で刺身を食べたり……と、これまで彼女が演じてきた役柄の中で最もダークと言える、長澤まさみの新たな一面が見れるキャラクターとなっている。

 「新たな一面が見れる」といえば、長澤演じる秋子と内縁の夫になるホスト・遼役の阿部サダヲも同様だ。本人も「ここまでひどい役はやったことない」「自分の親とかはちょっと観ないでほしい」と語っているように、阿部サダヲ史上最低のキャラクターを見事に演じ切っている。長澤曰く「阿部サダヲがすべてをかけて挑んだ」というダンスシーンにも注目だ。

 そして、物語の鍵を握る重要な役である、母親・秋子の歪んだ愛情しか知らずに育った17歳の少年・周平を演じている奥平大兼。渋谷駅の改札で事務所から声をかけられスカウトされたことから俳優の道へ進み、「勉強のために」と初めて受けたオーディションで、今回の大役を掴んだ新人だ。スクリーンデビューはもちろん、本格的な演技もこの作品が初めてだという。そんな奥平のまだあどけなさの残るリアルな演技は、作品に新鮮さと緊張感をもたらしており、劇中での“ある変化”以降は、まるで別人のような雰囲気を醸し出していた。筆者が行ったインタビュー(参考:長澤まさみ×阿部サダヲ×奥平大兼の3人が挑んだ難役の裏側 映画『MOTHER マザー』を語り合う)では、この作品の経験によって、今後も俳優でやっていく決心がついたことを明かしてくれた奥平。その素顔は、長澤が言うような「素直な存在」として、場を盛り上げてくれる明るい少年だった。

 実在の事件を基にしているため、物語の結末はある程度予測できてしまうが、そこに至るまでの登場人物たちの思考や行動は到底理解できない部分がある。事件そのものはもちろん、その背景にある社会的な問題を考える上でも、いま観る価値のある作品ではないだろうか。

■公開情報
『MOTHER マザー』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
出演:長澤まさみ、阿部サダヲ、奥平大兼、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、木野花
監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣、港岳彦
音楽:岩代太郎
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
配給:スターサンズ、KADOKAWA
(c)2020「MOTHER」製作委員会
公式サイト:mother2020.jp

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