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鬼頭明里がソロ音楽活動で表現するものとは? デビューから最新シングルまでを考察

リアルサウンド

20/3/4(水) 6:00

 昨年10月にシングル『Swinging Heart』でアーティストデビューを果たした声優・鬼頭明里が、2月26日に2ndシングル『Desire Again』をリリース。声優として社会現象になったアニメ『鬼滅の刃』の竈門禰豆子役をはじめ、放送中のアニメ『虚構推理』の岩永琴子や『地縛少年花子くん』の八尋寧々など人気アニメのヒロイン役を次々と演じて注目を集めている。その一方で、『Re:ステージ!』や『ブレンド・S』、『ウマ娘 プリティーダービー』などのゲームやアニメなど多くの作品でキャラクターソングを担当し、その歌声には定評があった。アニメ化も決定している『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の近江彼方役として、1月に開催された『ラブライブ!フェス』でμ’sやAqoursとの共演も果たしている。そんな彼女が、ソロ音楽活動で表現するものとは。

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■期待と不安に揺れる心を歌ったソロデビュー曲

 2014年から声優としての活動をスタートさせた鬼頭明里。少女らしい可愛さがありながら、その真ん中にしっかりとした芯のある、凛とした声が魅力だ。これまでに数多くのアニメやゲームでキャラクターソングに携わったことが、音楽活動のベースになった。契機になったのはメディアミックス作品『Re:ステージ!プリズムステップ』で、劇中グループ・KiRaReのメンバー月坂紗由として2016年から活動。

 また、9周年を迎えて未だ人気の『ラブライブ!』シリーズのμ’s、Aqoursに続くグループ・虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の近江彼方としても2017年から活動し、どちらもすでに多くの楽曲をリリースしライブ活動も行っている。他にも『UQ HOLDER! ~魔法先生ネギま!2~』や『ブレンド・S』、『ウマ娘 プリティーダービー』など、約6年の間に彼女が携わったキャラクターソングは枚挙にいとまがない。この実績は、彼女がソロデビューする上での大きな根拠になったと言えるだろう。

 そんな鬼頭明里は昨年10月、シングル『Swinging Heart』でのソロメジャーデビューを果たした。表題曲の「Swinging Heart」は、数多くのキャラクターソングや声優楽曲を手がけているTime Files ,incの3人が作詞・作編曲を手がけた、激しいバンドサウンドのロックチューン。クールさのあるAメロから徐々に熱を増し、サビで爆発するように展開するキャッチーなメロディが魅力だ。

 彼女の歌声も今までにない力強さがあり実に爽快。MVではバンドを従えて歌う姿やクールなブラックの衣装に身を包んだ姿などが映し出され、これまで彼女が歌ってきた、フワフワ&キラキラしたキャラクターソングとは一線を画したアプローチで、多くのファンを驚かせた。歌詞はソロメジャーデビューに際しての、期待と不安の間で揺れる動く心情が表現され、〈明日笑顔になれるパワー キミに届け〉〈行こう もっと先へ〉というフレーズからは、彼女の音楽活動におけるテーマが感じ取れた。

 同作のカップリングには、本人初アニメタイアップとなるTVアニメ『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』EDテーマ「dear my distance」と、「Always Going My Way」を収録。「dear my distance」は、切なさ溢れるミディアムバラードで、歌詞は、アニメの登場人物の心情と重ねながら、未来への漠然とした不安が歌われた。自分に自信が持てない弱さを抱えながら、それでも前を向いて進み続ける健気さが胸を打つ楽曲だ。

 また「Always Going My Way」は、ライブを意識したノリの良いロックナンバー。歌詞には聴く人の気持ちをアゲてくれるワードが盛り込まれ、〈Are you ready? Let’s go!〉などかけ声や〈Wow wow〉と一緒に歌えるパート、さらに曲の後半にはクラップで一体となるパートもある。可愛らしい声色やニュアンスで聴かせる部分もあって、声優・鬼頭明里とアーティスト・鬼頭明里が融合した曲だと言えるだろう。

■変幻自在にジャンルを超える醍醐味

 デビューシングルから約4カ月を経て、2月26日にリリースされた2ndシングル『Desire Again』は、「Swinging Heart」とは一転、ソリッドなギターロックに乗せて、クールなボーカルを効かせている。印象的なギターフレージングを始め、メリハリの効いた展開や高音に飛ぶキャッチーなサビメロなど、ネット世代にフィットしそうな要素が満載だ。

 作曲のmonoは、アニメ『ひとりぼっちの○○生活』のオープニングテーマ「ひとりぼっちのモノローグ」を作曲した田之上護の別名義で、同曲は鬼頭も他キャストと共に歌っていたという縁もある。作詞は、キャラクターソングの他に田所あずさ、井上苑子、水瀬いのりなどの作曲や編曲を担当している新田目駿(HANO)で、作詞のみの提供はこれが初とのこと。何かに押しつぶされそうになってもがきながら、明日をつかみ取ろうとする力強く前向きなスピリットが歌われている。〈目の前のドアを開けてみよう その両手で〉という歌詞に背中を押されるファンもきっと多いだろう。またMVでは、夜のビル群の合間を物憂げに彷徨うシーンがあり、ストリート系の私服風衣装が新鮮だ。荒廃した場所に横たわりながら光を掴もうと手を伸ばすシーンもあり、何かを決意したような鋭い眼差しが実に印象的だ。

 カップリングには、鬼頭自身がヒロインの八尋寧々役で出演するTVアニメ『地縛少年花子くん』EDテーマ「Tiny Light」と、ピコピコとした打ち込みからブラスなど、様々な音が出て来る洋楽ガールズポップ調の「Closer」を収録。「Tiny Light」は、美しいピアノとボーカルから始まり、途中からビートが入ってどんどん音が分厚くなっていく構成がドラマチック。作詞作曲編曲を、藍井エイルなどを手がけて知られるSakuが担当。

 鬼頭はファルセット気味の浮遊感のある歌声を聴かせ、細かいニュアンスが今にも泣き出しそうな切ない想いを表現している。そして「Closer」は、数多くのアニソンを手がけるshiloが作詞作曲を担当。グルービーなロックをベースに、様々な楽器が入り交じった遊び心たっぷりの楽曲で、ジャンルの垣根を跳び越えたものになった。英語と日本語が入り交じった歌詞を、鬼頭は時に色っぽく時にワイルドに多彩な歌声を聴かせていて、ラストのハイトーンのフェイクも聴き応えがある。今まで誰も聴いたことのなかった新しい鬼頭明里に、ファンはきっと驚いただろう。

 キャラクターとしてアイドルソングを歌い、ソロではロック、バラード、洋楽テイストなど、変幻自在に様々な楽曲を歌えるのは声優であればこそ。キャラソンでは見せたことのない表情を見せることが出来るのもソロ活動の醍醐味であり、キャラソンとのギャップが良い相乗効果を生んでいるようだ。また今後は、自身による作詞にも期待が寄せられており、どんなジャンルの楽曲に挑戦しどんな新しい歌声を聴かせてくれるのか、鬼頭明里のソロ活動に注目が集まっている。(榑林史章)

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