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“親しみ”のある主人公を描く。ジェームズ・ワン監督が語る『アクアマン』

ぴあ

19/2/9(土) 10:05

撮影現場のキャストとジェームズ・ワン監督 (C)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved “TM & cDC Comics”

超大作映画『アクアマン』が日本での公開をスタートさせた。“アクアマン”ことアーサーは筋骨隆々の男で、目つきは鋭く、少し怖そうに見える。しかし、本作の監督を務めたジェームズ・ワンは「アーサーはすごく普通の男で、人間味があって共感できるヤツなんだ」と笑う。本当に? アーサーは初対面でバットマンの胸倉を掴んでいたヤツじゃなかったか? 「確かにみんなアーサーを“タフな男”だと思ってる。だからこそ僕はこの映画で彼の“知られていない面”を描きたいと思ったんだ」

アクアマンは1941年にコミックスに登場して以来、大人気を誇るキャラクターで、過去に幾度かアニメーションや映画に登場しているが、今回の映画『アクアマン』は予備知識がまったくなくても作品を完全に楽しめるように製作された。「だからこそ、この映画ではオープニングがとても重要になると思った」とワン監督は振り返る。そこで彼は、映画の冒頭にアクアマン=アーサーではなく、アーサーの“両親”の物語を描くことにした。「映画の冒頭にアーサーの父と母のラブストーリーが描かれ、このドラマが映画全体の“背骨”になっているんだ」

灯台守をしている人間の男性と、海の底にある帝国の王女がいかにして出会い、恋に落ち、ふたりの間に愛する息子“アーサー”が誕生したかは劇場で観るまでのお楽しみだが、ワン監督は「アーサーがなぜいろんなことに不満を持っているのか? なぜ、彼が海底世界の人たちのことを信用していないのか? そのすべてが冒頭の5分間に描かれている」と明かす。「こんなことが可能になったのも、アーサーの母をニコール・キッドマンという素晴らしい女優が演じてくれたから。彼女はこの映画の感情面の中心を担っていると思うし、最初にラブ・ストーリーを描けたことで、この映画のすべての要素がとてもエモーショナルなものになったと思うよ」

アーサーは地上で暮らしながら、海の世界では自由自在に動きまわり、海の生き物たちを味方にできる能力をもつ男に成長した。そこで彼は地上で困っている人のために戦う“アクアマン”として活動しているが、海底の王国とは距離を置き、自身の地位や身分にはまったく興味がないようだ。「そうなんだ! 僕がアーサーに惹かれたのはまさにその点なんだ! アーサーははすごく普通の男で、人間味があって共感できるヤツなんだ! 王女の子として生まれたけど自分は王様になんかなりたくなくて、ビールを飲んでる方が楽しい男なんだよ(笑)。確かにみんなアーサーを“タフな男”だと思ってる。だからこそ僕はこの映画で彼の“知られていない面”を描きたいと思ったんだ」

ところが、彼の弟オームが海の世界を束ね、地上の世界に反旗を翻そうとしたことから事態は一変する。アーサーは状況を打開しようと奔走するが、まだ未熟で力が足りず、海底王国の王女メラと長い旅を続ける中で成長していく。「最初、アーサーは王になんかなりたくなかった。でも彼は旅を続ける中で、自分が王として行動しなきゃいけないと気づいていくんだ。実は映画の冒頭のアーサーは人間の世界にも海の世界にもなじめていない。でも、彼は旅を通して自分がふたつの異なる世界の“架け橋”になれることに気づいていく。僕はこのテーマがとっても気に入ってるよ」

そこでワン監督と脚本家チームは、アーサーが共感できる男で、成長を遂げて“ヒーロー”になる過程を無理なく描けるよう脚本を練ったが、その一方で、海中バトルをどのようにして描くべきか撮影、視覚効果、音響の各チームと準備を重ねた。「この映画では水中の世界が最も大事だから、ここが上手に描けないと映画が成立しないと思っていた。『スター・ウォーズ』で宇宙の描写が信じられなかったら、ダメなのと同じだよ(笑)。でも、これこそがこの映画の最大の挑戦で、本当に本当に大変だった! 観客が“海中の世界だ”と信じられる世界を作り上げるために多くのリサーチや開発をすることになった」

本作の海中シーンでは、キャラクターが水の中を縦横無尽に動きまわるため、カメラも“天と地”の区別なく設置され、それぞれのキャラクターが水の中で動き、移動し、戦う様を、これまでに見たこともないアングルで捉えていく。「水の中でキャラクターが動くとコスチュームや小道具にはどんな影響があるのか? 髪の毛はどんな風に動くのか? 喋った時には口から気泡が出るのか? ……あらゆることを話し合ってビジュアルを作り上げていった。もちろん、音響も! “観客が信じられる世界”をつくることに力を注いだんだ」

ちなみに、ワン監督は観客を“翻弄”する術に長けている男だ。本作ではドラマとアクションの緩急が絶妙で、アッという間にクライマックスまでたどり着く。「僕はキャリアの中でホラー映画を作るトレーニングを受けてきたからね(笑)。シーンをデザインするときでも“観客に少しリラックスしてもらおう”とか“ひと息ついて油断しているからジェットコースターに乗せてしまおう”とか(笑)バランスを大事に組んでいけるんだよ」

ワン監督の技とこだわりが結実し、『アクアマン』は親しみのある主人公の成長ドラマと、斬新なアクションシーンが融合した一大エンタメ大作になった。「これだけ壮大なファンタジーの世界で繰り広げられる物語だからこそ、僕は主人公に親しみがあって、共感できることが本当に大事だと思う!」

『アクアマン』
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