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Destroyer、Andy Shauf、Cindy Lee……US/カナダのインディーシーンで個性的な歌を聞かせる5作

リアルサウンド

20/3/8(日) 6:00

・Destroyer『Have We Met』
・Andy Shauf『The Neon Skyline』
・Cindy Lee『What’s Tonight To Eternity』
・John Moreland『Lp5』
・Ryan Power『Mind The Neighbors』

 ロマンティックな伊達男、麗しいドラァグクイーン、無骨な巨漢シンガーなど、US/カナダのインディーシーンから届けられた、個性的な歌を聞かせる作品を紹介。

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■Destroyer『Have We Met』

 カナダのシンガーソングライター、ダン・ベヤルのソロプロジェクト・Destroyer。前作『Poison Season』ではバンドサウンドにオーケストラを取り入れるなど、重厚でスケール感がある音作りを聞かせていたが、今回はシンセサイザーやプログラミングを中心にしたサウンドへと変化した。付き合いの長いジョン・コリンズがサウンドプロダクションを担当。エレクトロニックなサウンドながら、自宅のキッチンで宅録したベヤルの哀愁を帯びた歌声の魅力は健在で、Destroyerらしいロマンティックでダンディなムードを漂わせている。80年代の映画や音楽にインスパイアされたそうだが、シンセの麗しい音色と官能的な歌声の組みわせは、レナード・コーエン『I’m Your Man』あたりを彷彿とさせたりも。

■Andy Shauf『The Neon Skyline』

 昨年初来日して、素晴らしいショーを見せてくれたカナダ出身のシンガーソングライター、アンディー・シャウフ。前作『Party』ではストリングスをフィーチャーして、本人いわく「Steely Danを意識したけど気がついたら奇妙なサウンドになっていた」という緻密な音作りが魅力的だったが、今回はギターの弾き語りを中心にしたシンプルなサウンドに。アップテンポで躍動感がある曲が並ぶなか、前作でも活躍していたクラリネットの温かな音色がアクセントになっている。曲の展開やアレンジのユニークさに独自の語り口を感じさせるが、乾いたドラムが生み出すグルーヴも心地良い。アルバムを通じて描かれるのは、「ネオン・スカイライン」というバーを舞台にした一夜の物語だとか。レイモンド・カーヴァーやカート・ボネガット.Jrといった作家がお気に入りだというアンディーの歌詞にも注目。

■Cindy Lee『What’s Tonight To Eternity』

 ギタリストの死によって解散したカナダのインディーバンド、Woman。そのフロトマンでボーカルだったパトリック・フレーゲルが女装してスタートさせたソロプロジェクト、Cindy Leeの最新作。リバーブをたっぷり効かせた空間のなか、ギターのフィードバックノイズが吹き荒れ、シークエンサーが淡々とリズムを刻むなか、性を超越したCindy Leeことパトリック・フレーゲルのエンジェリックな歌声が降り注ぐ。暴力性とロマンティシズムが溶け合った甘美な歌は、Suicideに通じる感触もあり。ローファイなサウンドからは、60年代のガレージロックやガールズポップの幻影も浮かび上がってくる。亡くなったWomanのギタリト、クリストファー・ライマーに捧げたラストナンバー「Heavy Metal」に涙。

■Cindy Lee『What’s Tonight To Eternity』

 テキサス生まれの巨漢のシンガーソングライター。10代の頃はハードコアバンドで活動していたが、スティーヴ・アールの音楽に出会ったことで、フォーキーなサウンドにシフト。自主制作でアルバムをリリースしてきた。前作『Big Bad Luv』で老舗インディーレーベル<4AD>と契約したのには驚かされたが、新作は<4AD>を離れた模様。アコースティックギターの弾き語りにドラムやキーボードを添えたミニマムなサウンドながら、アレンジはモダンでアメリカンゴシックな美しさも感じさせる。そんななか、しゃがれた歌声は無骨さのなかに叙情を感じさせて、聴けば聴くほどルーツミュージックの旨味が染み渡っていくアルバムだ。

■Ryan Power『Mind The Neighbors』

 エレクトロ、R&B、ヒップホップなど、多彩な音楽性を自由自在に取り入れたカラフルなポップセンスで奇才ぶりするバーモント出身のシンガーソングライター、ライアン・パワー。前作『They Sell Doomsday』でアコースティックなサウンドに変化。新作『Mind The Neighbors』は、その路線をさらに追求したものになった。思いついたアイデアをそのまま実行していたような初期に比べて、メロディを大切にしつつ、ストリングスやホーンを盛り込んで丁寧に練られたアレンジが曲にデリケートな質感を与えている。その洗練されたサウンドはジャズやボサノバからの影響を感じさせて、ライアンのボーカルも繊細で内省的。こうした緻密なプロダクションに、もともと持っているポップセンスが加わったら面白いことになりそうで、今後の展開が楽しみだ。(村尾泰郎)

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