Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

中村倫也が持つ役者としての責任感 『美食探偵 明智吾郎』に至るまでの必見3作品を振り返る

リアルサウンド

20/4/19(日) 6:00

 新作ドラマの放送開始が延期になっている昨今だが、『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)はそんな状況下で通常通りに放送がスタートした。主演は中村倫也。2005年にデビューし、その後、さまざまな作品に出演してきた中村倫也だからこそ、彼に注目するきっかけとなったドラマは、人それぞれなのではないだろうか。彼の印象的な出演作を振り返ってみたい。

参考:中村倫也が語る、30代の役者としての人生観 「“まーくん”や“江口さん”とインプットされることが名誉」

●『闇金ウシジマくん Season3』

 筆者の場合は、2016年の『闇金ウシジマくん Season3』(MBS/TBS)の神堂役が思い浮かんだ。一見真面目そうな風貌の結婚詐欺師が、どんどんその本性を見せていき、最終回では山田孝之演じるウシジマにボコボコにされて、見るも無残な風貌になる。この映像の衝撃が今でも頭を離れない。

 ウシジマたちに追い詰められた神堂は、薄暗い部屋の中で首をつられ、足元には水の入ったペットボトルを積み重ねた台のみで、気を抜けば死が待っている。そんな中でも、最後まで屁理屈をこね、口が減らないその執念もさることながら、そこでなんとか生き延び、顔がボコボコに腫れた状態でも「明日からは新しい名前で新しい人生をはじめましょう」とある種の優雅さもみせる。その「悪」の力強さ、しぶとさが、人間の滑稽さにも見えた。

 筆者が『GALAC』で行ったインタビューでも、「『Season3』にはウシジマ自体があまり出てこないので、引っ張る存在が必要だなと思って、その責任を全うしようと思いました」と語っていた。あのインパクトは、「中村倫也」という存在を世に知らしめようというよりも、ドラマ全体を考えた上での責任感から生まれていたのだと後に知った。

●『伊藤くん A to E』

 2017年放送の『伊藤くん A to E』(MBS/TBS)は、4年前にヒット作を作った女性ドラマ脚本家(木村文乃)が、A、B、C、Dと4人の女性たちから恋愛話を聞いていく物語だ。しかし奇妙なことに、それぞれが「伊藤くん」という同じ名前の男子の話をしているが、これは果たして偶然なのか……。

 脚本家は、4人の女性の話す伊藤くんの話を聞いて想像をめぐらせる。彼女の想像の中では、彼女の身の回りにいる4人の男性が「伊藤くん」を演じている。その4人の「伊藤くん」を演じたのが山田裕貴、田中圭、岡田将生、そして中村倫也。今考えると豪華すぎるキャストだったのだ。

 この中で中村の演じる「伊藤くん」は、女性B(志田未来)の働く塾の同僚。しかし、思い込みが激しく、勝手に頭をポンポンしたりしたりもする勘違い男で、そんな行為を嫌がると逆上したりするストーカー的な人物。『ウシジマくん』のときとはまた一味違う人間の不気味さを感じさせる役である。

 このドラマが面白いのは、もともとの中村が演じている役は、脚本家の周囲にいる人物であるから、「伊藤くん」以外にもうひとつ「クズケン」という役も演じているということだ。このクズケンのほうは、ストーカー的な「伊藤くん」とは違い、至って「イイ奴」である。好きな女性Dが処女を捨てたいと思っていることを知って、彼女を本当に好きである気持ちを押し隠して、協力しようとする姿が健気だった。

 ウシジマ君の結婚詐欺師も、想像の中の「伊藤くん」も誇張されたようなキャラクターだったが、このクズケンの優しさは、生身の人間っぽさやリアリティがあり、また違った意味で身近なキャラクターを演じる中村倫也というものが印象付けられた作品だった。

●『半分、青い。』

 先の二本などでの活躍を経て、中村倫也が大ブレイクした作品がNHK連続テレビ小説『半分、青い。』だ。この作品で演じた「マアくん(朝井正人)」は、重めの前髪に、セーター姿。喋り方もおっとりした「ゆるふわ」キャラ。しかし、当時(作品初登場時は1990年前後)のボディコン・ワンレンギャルにモテモテで、彼女たちが家の前に現われても、あっさり袖にしたりする危険なモテ男でもあるという役どころだった。

 こうした若い男女の恋愛模様を描いたドラマでは、単にヒロインに尽くし、優しいだけでふられて退場してしまうような“二番手当て馬キャラ”というのも多いが、転んでもただで起きない感じのキャラクターなのが中村倫也らしい。

 劇中、ヒロインの鈴愛(永野芽郁)といい感じになったかと思えば、そのいい感じMAXのところでヒロインを突き飛ばす酷い男っぷりにびっくりもしたが、そんな展開を見せた直後にドラマから一旦退場すると、その思惑通りに「マアくん」ロス現象を生み出した。

 もっとも、これについても中村は『GALAC』のインタビューで「脚本を読んで、魅力のあるキャラクターだからこそ、役者の使命としてロスを起こさないといけないと思った」と語っている。やはり責任感が感じられる。

 常に自分という存在を、作品がより良くなるために置いているような発言が多い中村倫也だが、今後は作品の真ん中にいることも多くなるだろう。ゴールデン・プライムの帯ドラマで初主演である『美食探偵 明智五郎』での活躍も楽しみである。(西森路代)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む