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【おとな向け映画ガイド】

アメリカの選挙戦はクレイジーなエンタテインメント!『スイング・ステート』

ぴあ編集部 坂口英明
21/9/12(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(9/17〜18)に公開される映画は19本。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品が『マスカレード・ナイト』『レミニセンス』の2本。中規模公開、ミニシアター系の作品が17本です。今回はその中から『スイング・ステート』をご紹介します。

トランプに負けた民主党選挙参謀のとんでもない挽回策
『スイング・ステート』

衆議院議員小川淳也さんの奮闘を描き、話題となった大島新監督のドキュメンタリー、『なぜ君は総理大臣になれないのか』の続編が作られるそうです。タイトルは、小川さんの選挙区そのものずばり、『香川1区』です。彼を追い、この秋の総選挙での戦いぶりを描きます。どんな映画になるのか、楽しみです。選挙戦が始まると、俄然浮足立つ人がいます。誤解を恐れずに言うと、選挙は競技。競技者だけでなくその応援者、観戦者も興奮します。わかる気がします。

フィクション作品なら、その戦いをもっとドラマチックに演出して、さらに盛り上がるんじゃないかと思いますが、残念ながら日本映画の中に記憶に残るものがありません。コメディータッチな作りなのに、どこか嘘っぽくて笑えなかったり。そもそも、政界を扱ったフィクション映画で、政党やメディア名が実名で扱われることは、まずなくて、そのあたりでも気がそがれます。

その点、アメリカの作品は。実名がバシバシ出てきます。平気で茶化します。だからリアリティを感じて心底笑えます。この作品も、アメリカ特有の選挙戦を大胆にからかいまくっています。実際にあった選挙戦にヒントを得て、かなり誇張はありますが、選挙のプロが観ても、あってもおかしくない、という評価を受けたリアルさが、この映画のすごみです。

主人公は、民主党の選挙参謀ジマー(スティーヴ・カレル)。名前もキャラクターもオリジナルですが、立場ははっきりしています。民主党や共和党の名前はそのまま。CNNやFOXニュースなどメディアも実名のまま登場します。舞台となる町だけは架空です。

2016年の大統領選挙、彼が指揮をとり、クリントン圧勝という下馬評が一転、トランプに敗北した、あの選挙の後から、ドラマが始まります。ジマーは、選挙の敗因は、2大政党の支持率が拮抗する「スイング・ステート(激戦区)」での戦いに敗れたためと痛感。4年後に向けて、早速準備を始めている、という設定です。中西部ウィスコンシン州の小さな町の町長選挙に目をつけ、ここでの民主党勝利から好調な滑り出しを切ろうと目論みます。現役の町長は共和党。彼の町政に意見をいうために町議会にのりこんだ、退役軍人ジャック(クリス・クーパー)の映像をyoutubeで見て、彼こそが希望の星と定めます。

ここから始まる大騒動。ホテルにWi-Fiもない田舎町に、民主党の選挙のプロたちが集められます。一方の共和党も負けてはいられません。なんとジマーの宿敵、トランプの選挙参謀フェイス(ローズ・バーン)という超やり手の女性を送り込んできます。金と頭とノウハウのぶつかりあい、地元の民意なんてそっちのけ、狂乱の選挙戦です。

ジマー役のスティーヴ・カレルは、パロディ・ニュース番組『ザ・デイリー・ショー』や『サタデー・ナイト・ライブ』などで人気者になったコメディアン。フェイスを演じるローズ・バーンは「世界で最も美しい顔ランキング」の1位になったことのある美人コメディエンヌです。このふたりの、やりすぎ以外何物でもない戦いが笑えます。特に勝つために口からでまかせ嘘も平気という、チャーミングなやり手、フェイスの存在がいかにもアメリカっぽい。敵でありながら、おたがいのことが気になって仕方がない、ラブコメのようでもあります。

監督・脚本・プロデュースは、テレビの政治風刺番組の歴史を変えたといわれるジョン・スチュワート。『バイス』など、数々のヒット作を手掛けたブラッド・ピット率いる「プランB」が製作。ピットも製作総指揮に名を連ねています。

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