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奈緒「誰かと一緒にものを作りたいからここにいる」 女優として大事にしている、師匠からの言葉

リアルサウンド

20/1/4(土) 8:00

 リアルサウンド映画部では、2020年新春特別企画として、連日に渡り、今注目したい俳優たちのインタビューをお届け。今回は、2018年にNHKの朝ドラ『半分、青い。』でヒロインの幼馴染役として注目を集め、2019年には『あなたの番です』(日本テレビ系)でミステリアスなキャラ、“尾野ちゃん”を演じ話題をさらった女優、奈緒。

 『あなたの番です』出演後には主演映画『ハルカの陶』の公開や、舞台『終わりのない』の稽古と公演など、“初めて”が続いた奈緒の2019年、そして、1月21日から放送がスタートする藤ヶ谷太輔主演のシンドラ『やめるときも、すこやかなるときも』(日本テレビ系)でのヒロイン役への意気込みを語ってもらった。

【写真】奈緒撮り下ろしカット(フイルム)

■「貪欲に学ぶことだけは欲を持って」

ーー『あなたの番です』放送後にお話を聞かせてもらいましたが、舞台『終わりのない』の千秋楽を終えて初舞台はどうでしたか?

奈緒:終わってみて、初めての舞台が今回だったことが本当に幸せなことだったと今すごく感じています。今回は先輩たちに付いて行くのに必死で、これだけ色んなことを教えてもらって吸収できたのは今回のカンパニーだったからだなって。

舞台は、毎日本番で同じことをやって毎日完成はするんですけど、どんどん変わっていくし、初日と最終日では全然違うものになっているんです。自分自身の変化も作品の変化もものすごく感じました。また次に舞台をやるときは今回終盤の公演で自由に楽しくやれたように、なるべく初めから型を作らずにやりたいなと思っています。

ーー終盤に自由度が上がったのは、何か変化があったのですか?

奈緒:私、初日は全然緊張してなかったんです。稽古もいっぱいやってセリフも入ってるから、映像みたいに今日初めて会う方と芝居をするという緊張もなく、たぶん、分からなさすぎて全く緊張してなくて(笑)。でも、公演期間中の中盤で急に「あ、私今日緊張してるな」って気付いて。それを舞台袖にいる時に藁にもすがりたい気持ちで浜田(信也)さんに言ったら、「大丈夫だよ。緊張した時ほど相手のセリフ聞いてごらん」って言われて。「わかりました」と返してそのまま舞台に立ったら、その日から脚本・演出の前川(知大)さんが「奈緒ちゃんこの間からすごく自由になったね」と言ってくださって。意識して舞台に出るようになったら自分のセリフに集中しなくなった分、確かにすごく自由になれたんです。舞台に立っていることをどこかちょっと楽しめていた気持ちが生まれてきた。「それまでは再現度はすごく高くて、毎日同じことをやってくれる安心感はあったんだけど、あの日から外れないようにとする道がすごく広がった感じがした」と言葉をもらって、あの緊張があったからこそ自由になれていたんだと思うと、今までにない体験をさせてもらったなと思います。

ーー今回に限らず、ドラマや映画などこれまでの現場でもやっぱり先輩から学ぶことは多いですか?

奈緒:多いですね。すごい先輩たちばかりに囲まれてやらせてもらってるので、絶対に学ぶことがあります。でもそれを教えられるわけではないので、自分から学びに行かないといけない。今回は分かりやすく言葉をもらいに行ったんですけど、先輩たちは現場の居方だったり、その姿を見てるだけでも教えてもらえることがとてもあります。だから、もし自分が気付けていない時とか、実は吸収できたことも見逃したりしてるんじゃないかと思うことも多くて。常に貪欲に学ぶことだけは欲を持って現場に入ろうと今は思っています。

■「野島さんの言葉は私のお守り」

ーーその学びの姿勢、見習いたいです。舞台、主演映画、話題のドラマ出演と続いた今年はどんな年でしたか?

奈緒:初めてのことがたくさんあって、知らないことばかりと出会って、刺激的な一年でした。自分のこともよく知れたからこそ、怖いなと思うことも増えました。2回目の舞台の方が怖いでしょうし、映画で初めて主演をやって、お客さんが入るのかと不安にも思いました。こういう感覚は今までなく、次ドラマでヒロインやらせてもらうのもやっぱり少し怖いなと。2019年はそういう気持ちといっぱい出会ったので、今年は怖いなと思うこととうまく付き合って負けないように過ごせたらいいなと思ってます(笑)。

ーー知らない方が強かったなと思う時ってありますよね。そういう怖さやプレッシャーに対して、どうやって解消するんですか?

奈緒:その怖さはなくならないというのが分かって、消す方法を考えなくなりました。緊張したり怖いな、不安だなって思った時に、初めて見えるものがあったりするんです。だからこれをなくすために時間を割こうと癒しを求めたりすることはなくなりました。ただワンちゃんを飼い始めて、それは癒しになっています。

ーーうおたにさん(魚谷燦)、Instagramで見ました! ネーミングセンスがいいですね(笑)。

奈緒:ありがとうございます(笑)。かわいくて、この子のために頑張ろうってすごい思わせてくれるので、朝起きるのも辛くなくなりました(笑)。ご飯も何時にあげるって決めていて、その時間になったらご飯食べてるうおちゃんが見れるから頑張ろうとか。すごい頑張れる存在になってくれていますね。

ーーいいですね。女優としての自信とか手応えみたいなものはありますか?

奈緒:年々自信がなくなってきているんですよね。私、10代の時にものすごい根拠のない、自分でも不思議なくらい自信があったんです(笑)。けどそれは、やってなかったからだと最近気付いて、知らなかったから自分の力を信じられている部分があったんだなと。

ーー今年の反響は、自信に繋がりませんでしたか?

奈緒:だんだんと予想外の反響をもらって、急に自分が持っている自信を大幅に上回った言葉をたくさんいただいた時にすごく冷静になっちゃって。今回はたまたまで、ラッキーだった、自分の実力じゃないなという思考に入ってしまいました。

でも、私が大好きなナタリー・ポートマンが『ブラック・スワン』をやっていた時に、“みんなは絶対無理だと言ったけど、自分は自分のことを知らないからああいう役ができたんだ”と話していて。“自分のことを知っていたら限界を決めちゃうから、やれるって思わなかった。知らなかったからこそ私はできると思ってみんなが決めた限界を超えれた”という言葉が好きで、今まさに思い返す言葉でもあります。今年からもう一回、自分のことを知らない状態に戻りたいなと考えてます。1月1日からリセットして、2020年は限界を決めずにやっていきたいなって思います。

ーー前回お話伺った時に、師匠として脚本家の野島伸司さんを挙げられていましたが、今でも野島さんから習ったことで自分の軸になっているものはありますか?

奈緒:アクターズスクールに通っていた時、野島さんから「奈緒にとっての華は自信だよ」と教えてくださったことがありました。私はいつも当たり前のように不安と隣合わせなんですが、その「そこが見えなくなった時に奈緒は華が出るんだよ」という言葉は今もずっと心の中に置いています。今でも現場に入る前はどこまで準備をしたら自分は自信を持って行けるのかなとかすごく考えます。野島さんの言葉は私のお守りです。

■「一人でやんちゃな冒険をする年にしたい」

ーー奈緒さんが女優をやっていて楽しいなと思う瞬間は?

奈緒:現場がやっぱり1番楽しいし、一緒にやってる人たちの顔を見るためにやっているなって思います。もちろんお芝居自体が楽しくて自分のためにやっていることですが、きついことや1人では乗り越えられないことも、誰かと今この場所で一緒に乗り越えたり、完成したものを見て喜んだり。その時に、私は誰かと一緒にものを作りたいからここにいるんだなとすごく感じます。

ーー1月のドラマ『やめるときも、すこやかなるときも』の撮影中と聞きましたが、現場の雰囲気はどうですか?

奈緒:わりと短い撮影期間なのですが、この現場が終わるのが寂しいとスタッフさんも感じてくださっていて、それが本当に寂しいけど嬉しいですね。『あなたの番です』の時にご一緒したスタッフさんたちが多く入っているので、去年半年間一緒にいたメンバーと今また一緒にいて、もうちょっとでもう一年近く顔を合わせていることになるんですよね。自分自身の1年の流れを知ってくださっているスタッフさんたちが見守ってくれている中で、また全然違う役でお芝居ができて、絶対に良い作品にしたいって思います。

ーー主人公の桜子に共感する部分とかはありますか?

奈緒:桜子は自己評価がすごく低くて、自分に自信がない女の子なんです(笑)。だからまた自信の話になるんですけど(笑)、私は克服をできたけれど、桜子はどこか自分に一番自信がなかった時と重なる部分はあって、他人事とは思えない役です。枝分かれした自分の人生があったとしたら、桜子みたいになってたかもしれない。

ーー今までラブストーリーをやったことは?

奈緒:単発では何回かありますが、連続ドラマでラブストーリーをやるのは初めてです。ラブストーリーはやっぱり新鮮で、お話を聞いた時に、ちょっと緊張するなと思っていたんですけど、原作を読ませていただいて、これは自分がやっていいラブストーリーだと思えて、ぜひやりたいと思いました。恋愛って本当に難しいし、でも誰しも1回はしたことがある、全ての人にその物語があるのがラブストーリーだと思うんですけど、お姫様と王子様が出てくるようなラブストーリーは私自身もお腹いっぱいなところがあって。今回は桜子も壱晴(藤ヶ谷太輔)も全然お姫様でも王子様でもなくて、傷を抱えた2人で何か希望のある明るいラブストーリーを奏でられたらいいなと思います。

ーー2020年は映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』、『みをつくし料理帖』、舞台『今が、オールタイムベスト』といくつもの作品が発表されていますね。2019年に奈緒さんを知った方に対して、今年の奈緒さん自身の注目してほしいところを教えてください。

奈緒:2019年は多くの方に名前を覚えてもらった年でした。今年の作品は、おそらく私が出てると知らずに見る方もたくさんいると思うんです。その時に「これも奈緒だったんだ!」って思われるように一つ一つの役を丁寧にやりたいなと思っています。ここにも奈緒がいると思われるような存在になりたいです。

ーー女優としての目標はありますか?

奈緒:「もういい、もうやり尽くした!」と言って最後に引退することです。きっとそうはならないと思うんですけど、目標は大きければ大きいほどいいと思っているので、それぐらいの気持ちでやりたいです。

ーー2019年はやはり体感としてはあっという間だったんでしょうか。

奈緒:そうですね。日の境目がわからないぐらい密度の濃ゆい日々が続いた時もあったので、ざっくり1週間で1日ぐらいの感覚だった時もあって(笑)。舞台の時期は、毎日決まった時間に稽古があるので、ルーティンが生まれたのは新鮮でした。

ーーお仕事の合間など、リラックスしたい時は奈緒さんは何をしていますか?

奈緒:最近は寝ることと、映画館に行きます。映画って夢があるなと思うんです。もちろん小さい時もそう感じていましたが、歳を重ねていっても、きっと映画ってずっと夢を見させてくれるものなんだろうなと。私自身も映画に助けられたこともあるので、1人でもそういう人が増えたら人生が楽しくなると思っていて、ちょっとでもその瞬間に立ち会えたらいいなと感じています。

ーー最後に2020年、奈緒さん自身の、女優としてではなく、一人の人間としての豊富を教えてください。

奈緒:2020年はもう少しやんちゃになりたいです。私は一度一緒にお仕事した人たちのことがすごく好きになってしまって、時間が足りなくなる時があって。それを一度休憩して、1人の時間で人に迷惑をかけずにいろんな挑戦をしてみたいと思っています。みんなが私と話して楽しいとか面白いと思ってくれるように、一人でやんちゃな冒険をする年にしたいですね。

(取材・文=大和田茉椰)

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