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KREVA、“新たなライブ様式”に向けた粋な試みの数々 ストリーミングライブ『①(マルイチ)』レポート

リアルサウンド

20/6/29(月) 18:00

 6月24日、KREVAがストリーミングライブ『①(マルイチ)』を開催した。

 全国ホール&アリーナツアー『KREVA CONCERT TOUR 2019-2020『敵がいない国』』は新型コロナウイルス感染拡大防止のため無期限延期。本来なら横浜アリーナ公演が行われていたはずのこの日に行われたのが、新ライブ配信サービス「Thumva(サムバ)」のこけら落とし公演となったこのライブだ。

 「Thumva」とは、株式会社フェイスが立ち上げたライブ配信のプラットフォーム。各社が同様のライブ配信サービスをスタートさせているが、「Thumva」の大きな特徴は、「グループ視聴」という機能にある。このモードに入ると、メインのライブ配信画面の下にリモート会議のように参加メンバーの顔を映した小さな画面が並び、8名までの友人同士のグループでビデオ通話やチャットをしながらライブを観ることができる。もちろんこのモードを使わず、フルスクリーンのライブ配信画面で視聴することや、オープンなライブチャットでコメントすることもできる。購入したポイントでアーティストにギフトを送信できるギフティングの機能もある。オンラインライブの「参加」や「応援」の新たな体験の形をもたらすサービスと言えるだろう。

 ライブは9:08にスタート。映像は調理場からスタートし、コック姿で登場したKREVAが用意されたケーキに大きな「①」のデコレーションを描く。ジャケットに着替えサングラスを身につけて移動すると、そこはBillboard Live TOKYOのエントランス。ステージにスタンバイしていたバンドメンバーの白根佳尚(Dr)、熊井吾郎(DJ/ MPC)、SONOMI(Cho/Key)、大神田智彦(Ba)、田中義人(Gt)、タケウチカズタケ(Key)がイントロダクションのセッションを奏で、そこにKREVAが合流する。メンバー同士のソーシャルディスタンスを保つため、通常のステージと無観客のフロアを使っての布陣だ。

 ライブは「パーティはIZUKO? 〜2019 Ver.〜」からスタート。曲中では、フロアに置かれたPCに映し出されたライブ配信画面をKREVAが覗き込みチャットのコメントを読み上げていくことで、リアルタイムで時間を共有しているライブ感が生まれる。リアルライブでは定番となっているこの曲での「パーティーはどこだ?」「ここだ!」のコールアンドレスポンスの代わりに、KREVAはライブチャットのコメント欄に「こ」「こ」「だ」「!」を打ち込んで「ここだ!」のフレーズを作ろうと提案。流れが早すぎて見えないほどの文字でコメントが埋め尽くされる。

 さらにはインタールードで即興演奏するコードをコメントで募集するなどオーディエンスとコミュニケーションをとりながら、「国民的行事」、「王者の休日~2019 Ver.~」と続けていく。

 全曲バンドスタイルでの演奏が繰り広げられたこの日のライブ。セットリストはニューアルバム『AFTERMIXTAPE』の収録曲というよりも、過去の様々な作品から幅広く選ばれた内容だ。MCでも、もともとツアーのために用意していたものではなく今回の「①(マルイチ)」のために新しく構成したものだとKREVAは語っていた。序盤は「基準 〜2019 Ver.〜」や「ストロングスタイル 〜2019 Ver.〜」などアグレッシブな曲調もあったが、全体的にはゆったりとしたメロウな楽曲が中心。Billboard Live TOKYOという場所だからこそとも言えるし、画面越しのコミュニケーションになるオンラインライブだからこそのセットリストとも言えるだろう。

 後半も「瞬間speechless」でフロアからバーカウンターに移動して歌ったり、「EGAO」で客席のテーブルに置かれたMIDI Fighterを演奏しながら歌ったり、KREVAはBillboard Live TOKYOのスペースをフルに活用したパフォーマンスを繰り広げていく。

 終盤には、この6月24日にリリースされた新曲「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」も披露した。KREVAはMCで「メンバーが持ってるビンテージ楽器にインスパイアされてこの曲を作った」と歳を重ねることをポジティブに捉える曲を作ったきっかけを語り、ギターやベースやシンバル、ウーリッツァーなどメンバーたちが所有するビンテージ楽器を紹介する。そのふくよかな音色を奏でてから、SONOMIをフロアに招いて並んで座りこの曲を歌う。そして、新曲のもうひとつのきっかけが「SONOMIと歌う“声が一つになる感じ”をもう一度やりたいと思った」ことだと語り、やはりSONOMIと自然体の歌声を重ねる「涙止まれよ feat. SONOMI」を続ける。

 ラストは「音色 〜2019 Ver.〜」。「俺がドクターK、これがマルイチ!」とKREVAが高らかに告げ、全曲が終了。メンバー紹介を終えると先日6月18日に誕生日を迎えたばかりのKREVAにサプライズでケーキが振る舞われ、晴れやかなムードのなか終演となった。

 こうしてライブが終了したのだが、サプライズはそれだけではなかった。KREVAとバンドメンバーがステージを降りると、フロアには食事とシャンパンが用意され、そのまま乾杯して打ち上げへ。どうやらKREVAのライブ後の打ち上げは終わったばかりのライブの映像をスタッフとメンバー全員で観ながら歓談するのが通例とのことだが、それをファンと共に行うという粋な試みだ。

 結果、リラックスしたムードで繰り広げられた“打ち上げ配信”も1時間以上たっぷり行われ、肩の力が抜けたムードでライブの裏側を垣間見せる貴重な場となっていた。

 「配信ライブの正解って、まだ誰も見えてないじゃないですか」とKREVAも語っていたが、おそらく様々なアーティストがオンラインならではの演出を模索している時期である今。ストリーミングライブ『①(マルイチ)』は、“新たなライブ様式”への一つのヒントになったと言えるかもしれない。

KREVA オフィシャルサイト

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter

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