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原田泰造、“はぐれ刑事”を引き継ぐ? さまざまな作品で魅せる抜きんでた主演力

リアルサウンド

20/10/15(木) 8:00

 藤田まことさん主演の大人気長寿番組『はぐれ刑事純情派』(テレビ朝日系)が帰ってくる。主演のバトンを引き継ぐのは、原田泰造だ。お笑い芸人が俳優に挑戦する例は珍しくないものの、彼はそれとは訳が違う。今回の『はぐれ刑事三世』(テレビ朝日系)だけでなく、これまでも数多くの作品で主演として抜擢され、大河ドラマにも3作出演を果たしている。

 スタイルも良く、顔の造形もしっかりとしていて美形でなくとも“舞台映え”し、“男臭さ”を感じさせる出立ちに加えて、声質も良い。そして彼が歯を出してニッと笑うチャーミングな笑顔には人を惹きつける力があり、その憎めなさ、人たらしっぷりは天性のもののように思われる。

 彼の最大の魅力は何と言っても“隙があること”、言い換えれば“隙を作れること”ではないだろうか。お笑い芸人としても、そもそも「ボケ担当」ということもあるだろうが、誰かをけなしたり貶めたりして笑いをとっているところを見たことがない。バラエティ番組でも、ゲストの不思議なキャラクターをいじるというよりは、興味・関心から質問を重ね、一緒に自分もボケる誰も傷付かないスタイルをとっている。彼は「否定」から入ることがなく、常に「受容」の姿勢だ。リズムを刻み即興でダンスや替え歌を真顔で披露することの多い彼は、確かに“喋り”で笑わせているというよりは“身体表現”で笑わせていると言えるかもしれない。

 “隙”があるからこそ共演者との間に予定調和ではない“間合い”や“掛け合い”を生み出せる。『奥さまは魔女』(TBS系)では米倉涼子演じる人間界にやって来た魔女と結婚する広告代理店マンを好演。突拍子もない設定にあっても、原田の持つ“どこにでもいそうな普通っぽさ”“会社員ぽさ”があるからこそ成立するストーリーだった。

 その“隙”ゆえの優しさから、厄介に巻き込まれそれを引き受ける、あるいは他人から大切なものを“託される”役どころというのも彼の得意とするところである。『水曜日の情事』(フジテレビ系)での作家・前園耕作役や、彼の主演映画『ミッドナイト・バス』で演じる新潟〜東京間を運行する長距離深夜バス運転手・高宮利一役が挙げられるだろう。どこにでもいそうなバツイチ中年男性を演じつつ、東京では再婚を考える年下の彼女が待っている「男の顔」、歯車が狂ってしまった家族がいる新潟では「父親の顔」という2つを行ったり来たりする姿が淡々と、本当に静かに淡々と描かれる。

 また、映画『ボクの妻と結婚してください。』はその最たる例だと言える。余命半年の主人公が自身の妻の再婚相手を探すという設定だが、その再婚相手として白羽の矢が立ったのが原田演じる伊東正蔵だった。近くで誰かの報われなさや想いを目の当たりにし、やがて共鳴し、結果手を差し伸べる役どころ。そして、相手に「本当にそれでいいのか?」と覚悟を引き出し、問う重要な役柄でもある。毎回言葉少なな役どころが多い中で、彼の真っ直ぐに相手を見据える視線が印象的だ。原田の演技力の真髄は、この役の向こう側にある「人間臭さ」や「人間的魅力」を押し付けがましくなく、同情を煽ったりもせずに自然に見せてくれるところだろう。だからこそ、同居する切なさもやるせなさも滲ませられて、芸人で珍しく色気を宿している数少ない一人だと思う。

 ただ、そんな原田も大河ドラマでは全く違う表情を見せる。初の大河ドラマ『篤姫』(NHK総合)での大久保利通役では田舎侍から維新の英傑に育っていく過程を見事演じ切り、最終回で暗殺される最期のシーンも話題となった。また、『龍馬伝』(NHK総合)での新撰組の近藤勇役、使命感に突き動かされ狂気寸前の殺意が漲っており、迫力が尋常ではなかった。ちなみに『花燃ゆ』(NHK総合)での吉田松陰の兄・杉梅太郎役では彼の持ち味である人情味が抜群にマッチしていた。

 実は原田自身、無類の映画好きとしても知られており、映画についての対談コーナーも担当している。またかなりの読書家、かつ歴史好きらしく、大河ドラマの配役発表後のインタビューでは「大河ドラマって、歴史小説を読んでその人のことを知って、撮影現場に行ってその人物になれる楽しさがあります」と語っていた(参考:【花燃ゆインタビュー】原田泰造「松陰を家族がどう支えたかを見てほしい」 吉田松陰を温かく見守り続けた兄の杉梅太郎役|エンタメOVO)。役作りのために偉人の墓参りや所縁のある場所を訪問したり、資料集めまでするようだ。ここでも彼の大切なもの、つまり偉人たちの熱量や志、使命感を“託される”側だという受容体質がいかんなく発揮されている。

ドラマスペシャル『はぐれ刑事三世』 2020年10月15日(木)放送 予告動画

 そう考えると今回の『はぐれ刑事三世』での原田の抜擢も改めて頷ける。予告編でも「史上最も騙される刑事」「超お人好し」の言葉が並んでいたが、原田演じる浦安刑事は“普段はとぼけて昼行燈を演じているものの、実は敏腕な男”ということで、これぞ原田泰造本人に近しいキャラクターと言えるかもしれない。先代が築いてきた本シリーズの素材を彼がどのように調理して、自分のものとして昇華させるのか、相棒役の内田理央、妻役の真飛聖との掛け合いと共に今から楽しみだ。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『はぐれ刑事三世』
テレビ朝日系にて、10月15日(木)20:00~21:48放送
出演:原田泰造、内田理央、立川談春、真飛聖、しゅはまはるみ、紺野まひる、佐戸井けん太、忍成修吾、藤井美菜、逢沢りな
脚本:大上忠稔
監督:大谷健太郎
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:浜田壮瑛(テレビ朝日)、島田薫(東映)
制作:テレビ朝日、東映
(c)テレビ朝日

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