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「今起こってることを書きたい」a flood of circle 佐々木亮介が明かす、音楽との向き合い方

リアルサウンド

18/3/25(日) 10:00

 a flood of circleのフロントマン・佐々木亮介は、筋金入りのロックンローラーであると同時に、世界中の音楽にものすごく旺盛にアンテナを張ったリスナーでもある。海外のシーンのトレンドとの同時代性も意識しつつ、その上で日本語のオリジナルなロックンロールを生み出している。

 サポートをつとめていたギタリスト、アオキテツが加入して4人になった彼らは、先日、新作アルバム『a flood of circle』をリリースした。その背後にある様々な音楽の潮流をマッピングするインタビュー。彼らのファン以外にも、是非読んでみてほしい。(柴 那典)

(関連:a flood of circleは4つ目のピースを取り戻した 主催ライブイベントから感じた快進撃の始まり

■「周りの人が引いても、俺はラップと向き合わなきゃ」

――新作はいろんな切り口があるアルバムだと思いますが、個人的な感想としては4曲目の「One Way Blues」と8曲目の「Where Is My Freedom」が素晴らしいと思いました。

佐々木亮介(以下、佐々木):ありがとうございます。

――今、世界的に歌とラップの境界線がどんどん曖昧になっているトレンドがありますよね。アメリカでロックの売り上げをヒップホップとR&Bが上回ったというニュースもありました。そういう現状に日本のロックンロールバンドがどう食らいつくかというテーマを持っている曲だと思うんです。そういう感覚はありますか?

佐々木:そうですね。まあ、ずっとトライしてる最中なので、今も100点満点のことができたとは思っていないんですけど。自分もラップをよく聴いてるんですけど、去年ソロのレコーディングでアメリカに行ったこともすごく大きくて。自分が好きなソウルとかブルースのルーツにタッチしたのもあったし、まじでティーンエイジャーはリル・ヨッティが好きなんだなっていうことも感じたし。今面白いことが起こってるぞって感じはどうにか表現したいし、単純に好きなので、そこに向き合って楽曲を作りたいっていうのはありました。

――ラップ・ミュージックのどういうところが刺激になったんですか?

佐々木:ラップ自体は前から好きだったんですけど、取り入れ方に関してはソロの作品を作ったことが大きいですね。あれを作ってた頃はケンドリック・ラマ―が『To Pimp a Butterfly』でやったり、クリス・デイヴとビラルがやったりしたような、オーガニックなバンドサウンドに対してラップをはめていくみたいなことが好きで。あとはトラップもいろいろ聴いてたんですけど、とにかくポイントは歌だと思ってたんですね。歌で今までやってないニュアンスを出すことにこだわってる。あとはチャンス・ザ・ラッパーとかFrancis And The Lightsとか、ゴスペルっぽいハーモニーとリズムがどんどん進化しているのも好きでよく聴いてたんですね。そうしたら「ロックンロールバンドって、下手したらすげえつまんねえものになるぞ」って焦ってきて。そういうことを思いながらアメリカに行ったんです。

ーー昨年に出た佐々木亮介名義の『LEO』はアメリカのメンフィスで現地のミュージシャンとレコーディングしたんですよね。それはどういう体験だったんでしょう。

佐々木:みんな考え過ぎずに音楽を楽しんでるんですよ。ティーンエイジャーは夢中で聴いてるし、レコーディングしたメンバーは70年代からソウルやってるような70代の人もいたんですけど、スタジオでケンドリック・ラマ―の「i」をギターで弾いてたら盛り上がって。前から自分が面白いと思ってることが、やっぱりみんな好きで。だからラップが今の音楽を引っ張ってるっていう実感があったんです。ロックンロールやソウルをやってる人、俺が好きなプレイヤーもみんなそれを好きなんだって。だから自分の感覚は間違ってないって思いましたね。このアルバムを作るときにも、もしメンバーやスタッフや周りの人が引いても、俺はラップと向き合わなきゃだめだと思ったんですよ。今までは濁して、もっと喋りっぽいのに寄せたりして、ラップって思われないようにしてたんですけど、今回はちゃんと攻めようと思って。

――ソロではメンフィスでソウル・ミュージックを支えてきた第一線のミュージシャンをやったわけですよね。そして今回のアルバムもザブ(Xavier Stephenson/リアーナ、デヴィッド・ゲッタなどを手掛ける世界的エンジニア)と共に作っている。

佐々木:そうです。

――そういう海外の経験や視点を踏まえて改めてa flood of circle という日本のロックンロールバンドを見ると、おそらくバンド観も変わってくるものがあったんじゃないかと思うんです。

佐々木:そうですね。いざアメリカ的なるものに憧れてアメリカに行くとか、イギリス的なるものに憧れてイギリスに行くと、定番の日本人のアイデンティティにぶつかるんです。きれいにコピーしても全然つまんなくなるなって。メンフィスのメンバーは、一番上がアル・グリーンとかと一緒に70年代からやってる人たちで、ブー・ミッチェルっていうエンジニアは、マーク・ロンソンとブルーノ・マーズの「Uptown Funk」をやってる人なんです。だから、今のこともわかっている。そういうところに飛び込んじゃうと、普通にソングライティングして演奏するだけだと持ってかれちゃうんですよ。だから尊敬もしつつ、日本人としての自分の中にあるもので闘わないと、まじでつまんない音源になるなって思ったんですよね。その時に、やっぱり日本語ってすごく大事だなって思って。日本語の固い響きとか、それでやれる韻の感じとか、そういうものとどう混ぜるかを考えなきゃダメだなっていう。みんなをびっくりさせたかったんで。そこからa flood of circleに帰ってきたときに、パッと聴いて面白い! って思うリズムとか歌に辿り着ければいいなって考えたんですよね。ちょっと前までは、それを音楽的にマニアックなこととして捉えかけてたんですけど、あまりそういう小難しい理屈なく聴いても「なんか変だな」とか「面白いな」って思わせればいいんだっていう開き直りがあって。それはアメリカに行ったからだという感じはしますね。

――特に「Where Is My Freedom」って、ラップと歌の中間というか、もともと歌い手だからこそやれるスタイルのように思うんです。このへんはどういう風にやっているんでしょうか。

佐々木:感覚で言っちゃうと、俺、コダック・ブラック好きなんですけど、彼はめっちゃピッチがいいんですよね。日本で言うと、鎮座DOPENESSさんもピッチがいい。そういうピッチがいいラッパーが好きっていうのがあって。それと、自分もリフやコードに対してどういうピッチ感で歌うかは、技術的に気にしてるし、自分が気持ちいいポイントまで何回も試行錯誤するっていう。あとは、トラップのラップの特徴って、三連符を二文字で切るところじゃないですか。あれって、実は日本語とハマりがいいんですよ。英語の“R”みたいな流れていく音よりも、“か行”の響きがハマるんですよね。だから、トラップって日本人に向いてるんじゃないかなって思っていて。それで、二文字だけ踏んでいくとか、一文字だけ同じピッチで歌ってるところで韻を踏んでるとか、いろいろ仕掛けをちりばめてみているんですね。

――なるほど。無敵の「き」と、防弾チョッキの「キ」が同じ音程だったり、そういうところをかなり技巧的にやっていると。

佐々木:そういうのが細かく全部説明すればあるんだけど、パッと聴いた時に、変なラップだなって思われたい。「Where Is My Freedom」はそういうことを考えて作ってました。

■「ギターがもう一回、キラキラかっこよく響いて欲しい」

――踏み込んだ質問ですけど、トラップ以降のサウンドプロダクションって、ハイハットを細かく刻むことによって生まれるフィールが全般的にありますよね。そこにラップがのっかっている。

佐々木:そうですね。

――これは打ち込みじゃないと再現はできないことだと思うんですが、ドラムの渡邊(一丘)さんとのやり取りも含めて、バンドではどういう風にそのビートを解釈しましたか?

佐々木:トラップのビートに関しては、ナベちゃんはそんなに入ってないですね。俺も押し付けてないんです。でも、何でハットが細かいのが自由に感じるかっていうと、BPMが遅くて隙間がいっぱいあるからですよね。点と点の間が広いから、何が鳴ってても自由だし、その自由さで勝負してる。それで考えたのは、とにかくビートを半分にしようと。Led Zeppelinとかのロックンロール・バンドって、ビートが重いんですよ。そういう重いビートから入って隙間を多くして、ラップを細かく入れていくっていう。だからビートに関しては結構クラシックなロックのビートを叩いてもらってます。「Where Is My Freedom」で言うと、元々はカニエ・ウエストの「Black Skinhead」って曲が刺激になっていて。あれって、結構ブルースロックっぽいんですよね。リズムも土着的な感じで。カニエ・ウェストとかトラップから、ロックの要素を勝手に感じ取って、ロックに翻訳しやすい部分をナベちゃんに伝えて、それを叩いてもらってる感じです。

――なるほど。

佐々木:そのまま再現しても面白くないんですよ。単純にトラップのビートにギターリフを合わせてみてもしょうがなくて。どうやってバンドが肉体でやることに翻訳するかを考えるのがキモになってますね。ザ・ルーツみたいなやり方でもなくて、ロックバンドのパワーはあるんだけど、今のリズムの面白さが入ってるっていう。それをどうやったら発明できるかはかなり試行錯誤しました。ナベちゃんもそれは感じ取ってると思います。

――前のアルバムのインタビューが終わった後に、最近聴いてる曲の話をしたじゃないですか。その時にワットとポスト・マローンの「Burning Man」という曲の話をしたのを覚えていて。

佐々木:そうそう、しました。

――あの曲って、すごくa flood of circleっぽいなって思ってたんですよ。その後ポスト・マローンは「rockstar」でブレイクして、ワットはカミラ・カベロの「ハヴァナ」のコライトに参加したりと、それぞれ出世してるんですけど。

佐々木:すごいですよね。特にポスト・マローンにはびっくりしました。あの後、エモというか、バンドっぽいサウンドのトラップをやる人も出てきたじゃないですか。ギターがちょっと違う感じになっている。そこも面白いなって。

――たぶん、アメリカでもロックンロールやソウルのマインドを持った人が、今のティーンエイジャーがラップミュージックに熱狂している現状にどう応えるかというのに向き合っているんじゃないかと思うんです。だから「アメリカで流行っているラップやトラップをどう日本に持ってくるか」というよりも、すごく同時代感を感じるようなところがあります。

佐々木:そうですね。自分は今起こってることを書きたいんです。しかも、それを面白いと思っちゃってるから。そこは自分なりに取り入れてやりたいと思ってますね。SpotifyとかApple Musicとか見たら、世界中のいろんな新曲と同列に自分たちの曲がニューリリースとして出るわけじゃないですか。その時に、まじで面白い音源であってほしいんですよ。って思うと、やるのが面白いし、だからいろいろトライしてるっていう。

――先ほど「ギターがちょっと違う感じになってきている」と言いましたけれど、そのあたりはどう捉えていますか?

佐々木:二つの線があると思ってて。それこそカミラ・カベロとか、ジャスティン・ティンバーレイクの新作もギターが鳴ってるんですよ。わりと単音のフレーズが多くて、線が太いタイプの、ソウルっぽいルーツを持った、バンドっぽくないギターの聴かせ方があります。あともう一つは、90’sのオルタナっぽいやつ。ジュリア・マイケルズの「Uh Huh」とか、めっちゃPixiesなんですよね。それでグラミーの新人賞をとった。「これ、ありなんだ!」って。SZAとかもそうで。SZAのギターにはニルヴァーナ風のコーラスがかかってます。ロックバンドじゃない人の方が、ギターの聴かせ方が上手いんですよね。それは、俺らも意識してて。今回のアルバムで言うと、「Where Is My Freedom」はギターリフがトラップっぽい半音階になってて、単なるブルースロックっぽくしてないんですよ。で、「Summer Soda」って曲は、90’sのオルタナっぽい感じを今のやり方でやっている。

――確かにそうですね。

佐々木:もちろん、パッと聴いていい曲だなって思ってもらえたら、それでいいんですけど。ただ、ギターキッズの自分としては、ギターが好きだし、ギターが勝ってて欲しいんですよね。ギターがもう一回、キラキラかっこよく響いて欲しいっていう願いを込めて、作りました。

――先日ライブを見て感じたんですが、佐々木さんは「Blood & Bones」で、ギターを持たずにマイクを持って歌ってたじゃないですか。あれはバンドの新しいフォーマットになると思うんです。というのも、ギターを任せることができると、歌のリズムはより自由になるわけなので。そういう意味でも、アオキテツさんがメンバーとして加入したのは大きかった。

佐々木:そうなんですよ。安定してこいつに任せられるやつがいてくれると、歌のことをもっと考えられる。そういう意味で必要な展開だったし。パフォーマンス的にも、たとえばトラップの人たちのライブ映像を観ると、みんなダイブとかして、ロックバンドより全然激しいライブをしていて。それを見てすげえ悔しくて、対抗手段をいろいろ考えた挙句、ギター弾かないところに行っちゃったっていう。

――単にバンドの物語の中での新しいスタート地点っていうだけではなく、4人になったことが音楽的な試みともちゃんとリンクしていると。

佐々木:前までは俺が考えたのを弾いてもらってたけど、今はテツがフレージングしたり、自分で弾いてるものも結構あるので。全然違うんですよね。今までずっと思ってた「新しいロックンロールってこうなんじゃねえか」って、机上の空論みたいなものが形になったアルバムという感じですね。

■「『a flood of circle』ってつけるなら、今しかない」
――この話を踏まえた上で、「ミッドナイト・クローラー」について聞ければと思います。この曲はUNISON SQUARE GARDENの田淵智也さんがプロデュースを手掛けていますよね。

佐々木:はい。

――海外の音楽の同時代的なトレンドを抑えているということと、こういう曲をやっていることって、全く別のラインのことだと僕は思っていないんですね。そういうのを全部踏まえた上で、アニメソングも含めた日本のポップソング、ロックバンドのユニークさとか新しさを追求している曲だと思うんです。

佐々木:まさに。田淵さんがやってることは、日本でしか出てこないと思っていて。アニメソングはハマって聴けてはないんですけど、自分が感じてるのはとにかく情報量がハンパじゃないってことで。BPMも速いし構成も沢山ある。「ミッドナイト・クローラー」もそうしてるんですけど、このくらい構成が多いのって、違った意味で南アフリカの民族音楽とかくらいで。バンドフォーマットでこれだけ情報量が多いって異常だと思うんですよ。ザブ(エンジニア)と仕事した時にも「これは踊れはしないよね」って。でも、日本のロックフェスだとみんなこういう曲調でめちゃめちゃ盛り上がってるじゃないですか。それが面白い。

――ザブから見た「ミッドナイト・クローラー」はどういう感想でした?

佐々木:一言目が「めちゃめちゃごちゃごちゃしてる」っていう(笑)。田淵さんはもちろん海外の音楽を全然気にしないので、おそらくこれまでのバンドの歴史を見てきて「フラッドはこれ得意でしょ」っていうものとか、田淵さんが好きなものとかをぶち込んでくれたと思うんです。

――田淵さんは、彼が思うa flood of circleの良さを全部引き出そうと思ったわけですよね。

佐々木:そうです。その全部乗せっていう発想自体が、もしかしたらごちゃごちゃ感に繋がってるのかもしれないですけどね。ユニゾンの曲を聴いても、いい意味でごちゃっとしてますよね。キラキラ感じるくらい、全部明るいキーで作ってるけど、すごい構成が多いし、アレンジもすごく複雑で。まあ、めちゃくちゃ上手いともいえるんですけど。

――そうやって複雑な構成を持つ曲を、ジェットコースターに乗ってるみたいに勢いよく疾走感で聴かせてしまうのが、田淵さんのソングライティングの妙だと思っていて。その方法論でa flood of circleの良さを引き出したと。

佐々木:これは日本人のスタイルですよね。しかも、ザブとやるっていうのがあったので、そのバランスだったらすげえ面白いことができるかもと思ったんです。ザブはリアーナとかだけじゃなくて、Mastodonみたいなヘヴィなバンドもやってるんです。そこのセンスと田淵さんが混ざってくれたらいいなと思って。そうしたらザブには新鮮だったみたいで、「これはダンスミュージックではないな」って言われたんですけど、楽しんでやってたと思いますね。

――そして、わかりやすく今のバンドのモードや勢いが出てきているのが「Blood & Bones」。これはレゲトンやソカのビートを持つ曲ですけれども。

佐々木:レゲトンとかダンスホールみたいなこういうリズムは、2010年くらいから意識してやってきたことだったんですよね。このビートの感じで、ロックンロール的なコード進行とギターリフがバーンとぶつかってるものは、あんまないんじゃないかな、と。

――面白いのは、叩いてるのはラテンのビートなのに、浮かんでくるのは日本のロックフェスの風景であるという。これは一長一短でできることじゃなくて、渡邊さんの身体に染み付いたビートになっているからこそだと思います。

佐々木:祭り音頭になってるっていうかね。彼も「Human License」から8年ぐらいやってきたんで、身に染みてるんだと思います。得意なビートのひとつになってるんじゃないかな。

――この曲、歌詞にも<ロックンロール>という言葉がありますけれど、決して王道のロックンロールではないですよね。

佐々木:リフもチューニングも下がってるし、ビートも変だし、誰が聴いてもロックンロールじゃないんですよ(笑)。だけど、勝手にロックンロールを書き換えるっていう。ジョン・レノンも言ってたけど、「チャック・ベリーでロックンロールは完成してる」でいいんですよ。だけど、その後の世界をみんな生きてるから。「もしもロックンロールが○○だったら?」っていう大喜利をずっとやってる感じですよね。それで一番面白い答えを出したい。それを楽しみたいし、俺は俺の解釈で、今の世界でロックンロールをやったらこうなるはずだって思うので。そのズレみたいなものが、ギスギスしないで楽しめる世界だったらいいなと思います。

――そういうアルバムが『a flood of circle』というタイトルになった、というのは?

佐々木:最初は『a flood of circle』にするつもりは全然なかったんです。テツも、レコーディング終わった段階でメンバーになったんで、全然予定通りのタイトルじゃなかったんですよ。でも、全部出来上がって、テツが入るっていう流れができてから、一番パンチあるタイトルにしようと思って。『a flood of circle』ってつけるなら、今しかないんじゃないかって思った感じですね。ほんと、今がスタート地点って感じなんで。もっと面白いことが起こりそうだと思うし。将来振り返った時に、ここからはじまったねって言える作品になったとは思うので、デビューアルバムっぽいタイトルにしました。これからだぜ、って感じですね。
(取材・文=柴 那典)

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