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パノラマパナマタウンが表明した“選んで足を運ぶこと”のかけがえのなさ 『渦:渦 vol.2』東京編レポ

リアルサウンド

19/10/5(土) 8:00

 パノラマパナマタウン(以下、パノパナ)の自主企画『渦:渦 vol.2~東京編~』が9月27日、新宿LOFTにてゲストアーティストに忘れらんねえよを迎えて開催された。ちなみに大阪編はPOLYSICS、昨年10月のvol.1には山嵐とSUSHIBOYSを迎えた同企画。テーマはジャンルや世代も超え、リスペクトするアーティストとの競演というシンプルなもの。ちなみに忘れらんねえよは共通の知人バンドがいるわけでもなく、正真正銘の初顔合わせ。ライブ中、柴田隆浩(Vo/Gt)はパノパナの「ずっとマイペース」の歌詞の1フレーズ〈あいつの方が先にいるように見えるけど空から見りゃ同じとこ〉に、「天才だわ! くっそロックンロールだね」と、自身が召喚されたことに納得していた。

 いつもどおりの熱演を忘れらんねえよが見せつけたあと、パノパナが登場。2バンドどちらのステージもオープンに楽しもうとするオーディエンスが多いことが場の風通しを良くしている。『渦:渦』という企画名は何も出演バンド同士だけじゃなく、ここにいる人間一人ひとりが渦になって、アウトプットとインプットを相互に行い、影響も与え合うーーそういう磁場を目指していることがわかる。パノパナのリスペクトの表明は1曲目から「世界最後になる歌は」を披露したことにも明らかだった。この曲は彼らが自分で言葉を発し音楽として鳴らし続けていく上で、その純度や強度を更新し続けていく覚悟のナンバーだと私は受け取っている。それを対バン企画の1曲目に持ってくる矜持。そして先ほど柴田が「天才」と形容した歌詞を持つ「ずっとマイペース」。岩渕想太(Vo/Gt)のラップが一語一句明快に聴こえるのは彼の発語のクリアさもあるが、バンドアンサンブルの抜き差しの絶妙さもあるだろう。もともとべたっとした音像ではないバンドだが、アルバム『情熱とユーモア』のリリースタイミングより、バンドの生楽器とヒップホップのバランスが俄然良くなった印象を持った。さらに今夏の新曲「HEAT ADDICTION~灼熱中毒~」ではMV同様、汗まみれな上にムートンコートを着込むというトゥーマッチな演出に半ばあ然としながらも、サーフ&ヒップホップな演奏は冴えを見せるという、笑いながら拳をあげたくなるカオスな空間が出現した。

 新旧織り交ぜたセットリストは軽妙さの種類は違えど、言葉が畳み掛けられる「マジカルケミカル」、「月の裏側」と違和感なく続き、ハードボイルドなマイナーチューン「ラプチャー」と会場がある歌舞伎町との相性の良さを再認識。岩渕想太曰く、上京してみて、地元・北九州と最も似た感覚を覚えるのが新宿であり、次第に観光地化され均されていく様子に一抹の寂しさを感じるが、それでもまだカオティックなこの街が好きだという。加えて新宿LOFTはバンドのメジャーデビューを発表した場所でもある。バラバラなバックボーンを持った人間がごちゃごちゃ存在している街とパノパナ、そしてこの『渦:渦』の企画趣旨がハマる理由が体感できた。

 終盤は「ほっといてくれ」のシンガロングが起こる「フカンショウ」、数多のライブを経てビートがグッとタイトになった「めちゃめちゃ生きてる」では、フロア前方が“自分こそがめちゃめちゃ生きてる”ことを自然発生的なリアクションで見せる。様々な諦め、輝いていた出来事は色あせていくーーそんなラップ部分から、サビの〈何だってできるなんて強がりも虚勢も味方に変えて〉がメロディに乗った時、シンガロングする声に篭った個々のエモーションを確かに肌で感じた。そして岩渕は「ほんとはここで終わってもいいんだけど、プレゼントとして受け止めて」と、新曲「Dive to Mars」を披露。ギターリフで作るロックサウンドのファンクやヒップホップで、一瞬、Beastie Boys、Fatboy Slimなどビッグビート的なジャンルのミックステイストを感じたが、明らかにこれまでのパノパナ流ミクスチャーとはまた違う。タイトルからして宇宙、だ。一度では噛み砕けなかったが、アンコールで二度目の演奏。さらにこの日の深夜0時から配信がスタートしたが、音源の情報量の多さをまだ消化しきれずにいる。

 パノパナから忘れらんねえよへのリスペクトはMCではなく、アンコールで「この高鳴りをなんと呼ぶ」のカバーの中の平歌部分で岩淵がラップをしたことが全てで、この場所を選んで足を運ぶことのかけがえのなさを表明していたと思う。オンラインの世界に辟易していてもしょうがない、知恵を使ってオフラインの世界で何か一つでも手応えを掴んで帰って欲しいーーそのスタンスに共振する人が確実に増えつつあることを確認したライブだった。加えて新作ミニアルバムのタイトル当てクイズをTwitter上で展開したり、アンコールでは次回ツアー内容を岩渕のスマホからAirDropでフロアに拡散したり(通信速度の影響か一気にとはいかなかったが)、何かと自力でできるアイデアを盛り込んでくる彼ら。SNSやデジタルデバイスに辟易しながらも前向きに使う、そのスタンスもこのバンドらしい。

(撮影=Atsuko Tanaka)

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

パノラマパナマタウン オフィシャルサイト

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