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建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展

19/11/17(日)

普段、現代アートやモダンなグッズを信奉している者にとって、この展覧会は絶妙のアングルで攻めてくるだろう。 というのは、モダンセンスが生まれる前の「貴族的センス」とは?本物の貴族趣味がどんなものか?実はあやふやにしか認識されていないのではないか?「おとぎ話の宝物って本当はどんなもの?」現代と対比される、その前の文化がどうだったか?日本人である我々に、ヨーロッパ貴族の文化がなんたるかを教えてくれるのが本展覧会だ。 リヒテンシュタインは何といっても世界で唯一、侯爵家の家名が国名となっている国だ。スイスとオーストリアに挟まれた小国でありながら、その個人コレクションは世界屈指の規模という。 最初にジンと来るのが、ご子息達の肖像画。こんなに性格の良さそうな、育ちの良い印象の子供の肖像ってあるだろうか?と引き込まれる。お世辞に良く描いているのではない、と思わせる可愛らしさ。究極の良家の子女とはマジで魅力を有していたのではないか?と思わせる数点の絵であった。 絵画で驚いたのが、ヴァルトミュラーによる外光をシミュレーションした絵画。小品ではあるが、写真に限りなく近い驚くべき光の表現でありながら、写真ではけして出ない柔らかな世界観。複製品では味わえないので、ぜひ、本物を。 後半は、膨大な陶器、磁器。中国、日本から多数輸入された物をヨーロッパで加工して得られたコレクションで、陶器の歴史や技法の勉強になることがポイント。 輸入した東洋絵具による絵の磁器に、西洋絵具による精彩画を描いたり、金属の飾りをつけたりしたものが貴族に好まれた。 東洋絵具は、透明鉛ガラスの中に酸化金属の呈色剤を入れた絵具で、焼成前は灰色系統の不透明な色調である。焼いて初めてガラス質の鮮明な色が得られる。西洋絵具は、呈色剤にガラス質が少なく、薄く描くことが出来る。そのため、東洋絵具は透明水彩のよう。濃淡を出すには熱く盛り上げなければならず、細かなグラデーションの表現ができない。一方、洋絵具は、油絵のように不透明で焼成後の色の違いが少ない。 以上の理由から、貴族の用いた陶器・磁器は、見事に東洋と西洋が同居した作品になっている。 ちょっと細かい説明になったが、このような形で東洋と西洋の文化がミックスされたジャンルは、面白いではないか? ヨーロッパ貴族文化の華美さは好みではない、という向きもあるだろう。 しかし、そもそも貴族文化の内容は?その時代背景はどうだったか?好き嫌いを問わず、そんなことを楽しみながら学べる展覧会である。

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