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カートゥーン・サルーン監督が日本のファンと交流、新作は「かぐや姫の物語」の影響も

ナタリー

20/10/6(火) 11:14

「ウルフウォーカー」公開記念オンライントークイベントの様子。上段左から土居伸彰、ポール・ヤング。下段がトム・ムーア。

アイルランドのアニメーションスタジオ、カートゥーン・サルーン最新作「ウルフウォーカー」の公開記念オンライントークイベントが10月5日に行われた。

「ブレンダンとケルズの秘密」「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」に続き、ケルト3部作の完結編にあたる「ウルフウォーカー」。アイルランドの言い伝えをもとに、ウルフハンターを父に持つ少女ロビンと、人間とオオカミが体に共存する“ウルフウォーカー”の少女メーヴの物語が紡がれる。トム・ムーアとロス・スチュアートが共同監督を務めた。

イベントゲストにはアイルランドにいるムーアに加え、用事のため欠席となったスチュアートの代わりにプロデューサーのポール・ヤングが出席。日本からは司会進行としてニューディアー代表 / 新千歳空港国際アニメーション映画祭フェスティバルディレクターの土居伸彰が参加し、視聴者からの質問を交えながらトークを展開させていった。冒頭、トラブルのため5分ほど遅れてきたムーアは、これまでのイメージと異なり、ひげを伸ばしたワイルドな風貌で登場。土居からツッコまれると「“ウルフウォーカー風”のルックスになりました」とニヤッと笑い、和やかなムードでイベントを再開させる。

カートゥーン・サルーンはこれまで、アイルランドの歴史や伝承をもとにした作品世界を2Dアニメーションによって表現してきた。ムーアは“手描き”にこだわる訳を「まさにこの仕事をしている理由でもある」と述べ、「イラストレーション、コミックス、手描きアニメを愛していて、絵で生計を立てたかったんです。“手描き”という言語はまだまだ掘り下げられるんじゃないかと思っています」と愛情を伝える。自身のTwitterで「海獣の子供」に言及したことにも触れ、また今作で影響を受けたという高畑勲の「かぐや姫の物語」についても「線画でここまで表現できるんだと改めてハッとさせられました」とその偉大さを口にした。

ヤングはムーアと大学の同級生であり、スタジオの設立メンバーでもある。プロデューサーとして作品に関わってきた彼は「監督のビジョンをできるだけ形にする、それが自分の仕事です」と話す。「僕も大学でアートデザインを学んだし、今もときどき絵を描きます。だからイラストやアートへの愛を反映する作品を、オリジナル性のある形で作っていきたい。コンセプトを考えてからストーリーが固まるまで8年掛かることもある。メッセージ性を含めて自分たちが情熱を感じられる物語があるかが大事なのです」と製作のうえで重視していることを語った。

スタジオ風景を交えたメイキング映像が披露されると、新作「ウルフウォーカー」の話題へ。本作を鑑賞した土居は「これまでの監督の作品と比べてもビジュアルがすごい。いろいろなテクニックの百貨店のようでした」と絶賛する。また本作では少女たちの関係が描かれているが、ムーアは「初稿ではロビンは少年でした」と告白。しかしなぜか行き詰まり、設定を少女に変えたらうまく進められたという。「主人公はハンターになりたいという設定。当時、男の子は比較的なんでもできましたが、女の子は制限が多くそこから生まれる葛藤もありました。その感情から主人公の道のりを掘り下げていったのです」と説明。「僕の妻もロビンのベースになっています。昔自分がやりたかったけど社会的によく思われなかったこと、20世紀以降でさえそうだったという話を聞いて取り入れていきました」とも語った。

後半のアクションシーンも見どころの1つであり、ムーアは「大きな挑戦だった。背景がどんどん変わるので作業量は増えるけど、演出は楽しかったです。『もののけ姫』のような美しいアドベンチャーアクションを目指しました」と満足げに振り返る。また土居は「日本とアイルランドの精神性には共通している点があるように感じます」という質問をピックアップ。ムーアは「いろんな国の民間伝承に興味があります。宮崎駿監督が神道やアニミズムのような、自然の中に精霊を見るという話をしていると共感します。アイルランドにも迷信が残っていますし、2つの国の文化にはつながりがあるかもしれません」と同意した。

最後は2人から日本のファンにメッセージが。ムーアは「このような状況で来日は叶いませんでしたが、もっと質問があればTwitterでぶつけてください!」と呼びかけ、ヤングも「早く日本へ行きたいです。皆さん応援ありがとうございます」と感謝を示した。

「ウルフウォーカー」は10月30日より東京・YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次ロードショー。

(c)WolfWalkers 2020

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