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黒沢清、ジャ・ジャンクー作品の魅力を探る「なぜあんなにいきいきと撮れるのか?」

ナタリー

20/11/7(土) 16:38

左から市山尚三、黒沢清。モニタに映っているのはジャ・ジャンクーの事務所。

第33回東京国際映画祭のトークシリーズ「『アジア交流ラウンジ』ジャ・ジャンクー×黒沢清」が、本日11月7日に東京都内で開催され、黒沢清と映画プロデューサーの市山尚三が登壇した。

北京からオンラインで参加予定だったジャ・ジャンクーは、急な体調不良のためやむなく欠席に。黒沢は「時間があったらと思って、聞きたいことをメモしてきたものが役に立つとは思いませんでした」と笑い、作品のプロデュースを長年手がけている市山に質問を投げかけた。

黒沢は、ここ数年で中国映画のレベルが急激に上がったと感じているという。彼は「最大の理由はロケーション。古くも新しくもない開発途上のところだと、どうしてあんなにいきいきと映画が撮れるのか。そういった場所で一貫して映画を撮っている監督の代表がジャ・ジャンクーだと思います」と自らの考えを伝え、ロケ地と映画作りの関係性を尋ねる。市山いわくジャ・ジャンクーの映画にとってロケーションはとても大事な要素だそうで、彼は「脚本の第一稿が上がった段階で主要な撮影地がはっきりわかっているんです」と答え、「『長江哀歌』はドキュメンタリーを撮るつもりで撮影地を訪れたところさまざまなドラマを目撃して、劇映画を撮ろうとひらめいたそうです。あの場所を見なければあの映画自体はできていなかった」とロケ地からインスパイアを受けて作られた作品の例を挙げた。

続いて黒沢は「ジャンル映画的な表現をする際は、開発途上の場所に住む人間を撮るときとは違うテクニックや難しさがあるのでは?」と問う。市山は、リアリズムを重視して撮るのとは違う工夫があると言いながら「『帰れない二人』の殴り合いの場面ではアクション監督が来ていましたが、ジャ・ジャンクーが『ちょっと違う』と言い出して自分でやって見せたんです(笑)」と裏話を披露する。さらに黒沢は、かつてジャ・ジャンクーとともにジョニー・トーが開いたパーティへ行った際に、ジョニー・トーから熱烈なハグをされたことを思い出して「ジャ・ジャンクーも驚いていました。ほかの人には僕らがジョニー・トーの舎弟に見えたんじゃないかな」と懐かしんだ。

このイベントの模様はオンラインでも配信された。視聴者からの「印象に残っているジャ・ジャンクー作品は?」との質問に、黒沢は「『一瞬の夢』は最初に観たこともあって印象に残っています」と答え、「意外と忘れられないのが、『プラットホーム』で『ジンギスカン』という曲が延々と流れているシーン。何も思い入れがなかったけれどあのシーンを観て以来大好きな曲になりました。強烈でしたね」と続ける。自身がドキュメンタリー作品を手がける可能性について尋ねられた場面では「どういうものが撮れるのか、何が楽しくて困難なのかがまったくわかっておりません」「フィクションを構築していく以外の映画の作り方がわからないんです」と誠実に述べた。

「ぜひ撮ってみたいというロケーションは?」と聞かれると、黒沢は「ここで撮ってみたいという欲望は封印するようにしているんです。制作部が見つけてくれた場所で『ここなら撮りたいな』と思えるかがスタート」とコメント。しかし彼は渋谷に魅力を感じていると告げて「まったく新しいビルが立つ一方で、これまであった街並みが破壊されている。恐ろしいというか興味深い」とその理由を説明し、「あそこを使えば面白い映画が撮れるだろうなと思いつつも、いつも自制しながら渋谷を通過しております」とはにかんだ。

なお黒沢の監督作「スパイの妻(劇場版)」が全国で公開中。

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