東京国際映画祭グランプリは「ヴェラは海の夢を見る」、イザベル・ユペールが賛辞贈る
第34回東京国際映画祭クロージングセレモニーの様子。
第34回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが本日11月8日に東京・TOHOシネマズ 日比谷で行われ、各部門の受賞結果が発表された。
コンペティション部門の東京グランプリ / 東京都知事賞に選ばれたのは、男性優位の環境に抵抗する女性を描く「ヴェラは海の夢を見る」。審査委員長のイザベル・ユペールは「勇気ある女性監督たちの作品群に、新たな1本が加わりました」と同作をたたえる。これが長編デビュー作となったコソボの監督カルトリナ・クラスニチは、受賞の知らせを受けた際の心境を「喜びのあまり、大声で叫び泣いてしまいました。この物語を実現させてくれた撮影チーム、キャスト、スタッフに感謝しています」と伝えた。
審査委員特別賞は、組織犯罪に巻き込まれた娘を捜す女性を捉えた「市民」に授けられた。監督のテオドラ・アナ・ミハイにとって制作に7年を要した思い入れのある作品だそうで、彼女は「デリケートでタイムリーなメキシコの問題を描きました。皆さんにこの国の問題を知って議論していただくことが大切だと思います」とビデオメッセージの中で語る。そして最優秀監督賞は「ある詩人」のダルジャン・オミルバエフ、最優秀女優賞は「もうひとりのトム」のフリア・チャべス、最優秀男優賞は「四つの壁」のアミル・アガエイ、ファティヒ・アル、バルシュ・ユルドゥズ、オヌル・ブルドゥがそれぞれ受賞した。
観客賞は、池松壮亮と伊藤沙莉のダブル主演作「ちょっと思い出しただけ」へ。監督の松居大悟は「こうして両手にトロフィーの重さを感じられているのがすごくうれしい」と胸いっぱいの様子で挨拶し、「過去と今を等しく抱きしめられるように作りました。尾崎世界観(クリープハイプ)くんの曲によって生まれた映画です。尾崎くんは明日誕生日なので、プレゼントとして受賞を伝えられる」とはにかんだ。
なおユペールは、総評の場で「“多様性の豊かさ”が強く印象に残っています。審査をするにあたっては、現代文化における映画の位置付けを考えることを求められました」と振り返る。映画祭チェアマンの安藤裕康は「あっという間に10日間が過ぎました。素晴らしい作品をお見せすることができて本当によかった」と充実感たっぷりの表情で述べ、映画祭に関わった人々に感謝を伝えた。
第34回東京国際映画祭 受賞結果
コンペティション部門
東京グランプリ / 東京都知事賞
「ヴェラは海の夢を見る」(監督:カルトリナ・クラスニチ)
審査委員特別賞
「市民」(監督:テオドラ・アナ・ミハイ)
最優秀監督賞
ダルジャン・オミルバエフ「ある詩人」
最優秀女優賞
フリア・チャべス「もうひとりのトム」
最優秀男優賞
アミル・アガエイ、ファティヒ・アル、バルシュ・ユルドゥズ、オヌル・ブルドゥ「四つの壁」
最優秀芸術貢献賞
「クレーン・ランタン」(監督:ヒラル・バイダロフ)
観客賞
「ちょっと思い出しただけ」(監督:松居大悟)
アジアの未来部門
アジアの未来作品賞
「世界、北半球」(監督:ホセイン・テヘラニ)
Amazon Prime Videoテイクワン賞
金允洙(キム・ユンス)「日曜日、凪」
Amazon Prime Videoテイクワン賞 審査委員特別賞
瑚海みどり「橋の下で」