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浜崎あゆみが綴る、相手への思いが色濃く表れた歌詞 ドラマ『M 愛すべき人がいて』に反映されたフレーズにも注目

リアルサウンド

20/5/9(土) 12:00

 土曜ナイトドラマ枠で放映中の『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系・毎週土曜23時15分~)が、SNSを中心に盛り上がりを見せている。本作は昨年出版された小松成美による同名小説の実写化。2018年に歌手デビュー20周年を迎えた浜崎あゆみへの取材を基に、“事実に基づくフィクション”として著された物語で、主人公・アユが敏腕プロデューサーに見出され、スターダムへと駆け上がっていく様と、彼との禁断の恋を描いている。主演には、昨年デビューしたばかりの新鋭・安斉かれんが抜擢されたほか、プロデューサーのマサ役を三浦翔平が務め、歌姫誕生の前日譚を活写。大映ドラマを彷彿とさせるトンデモ展開や、濃いめのサブキャラを演じる田中みな実、水野美紀らの怪演も相まって、初回5.6%と深夜帯としてはなかなかの高視聴率を叩き出した。

(関連:浜崎あゆみ「appears」MV

 本作の見どころというと、やはり楽曲の使われ方だろう。まずタイトルに掲げられた「M」自体が浜崎の黄金期を象徴するナンバー。2000年末に発売され、累計131万枚を売り上げる大ヒットを記録した。当時、「M」とはサビに登場する“マリア”の頭文字と考えられていたが、原作本の中で現在エイベックスのCEOを務める松浦勝人氏(ドラマではマサと名乗る)のイニシャルであることを明言。ドラマでは浜崎本人の歌唱するバージョンが主題歌に起用され、物語の結末を暗示する役目も担っている。

 ストーリーと楽曲とのリンクもところどころに散りばめられており、たとえば1話でマサがアユに電話するシーンでは、〈初めての電話は受話器を/持つ手が震えていた 2回目の電話はルスデンに/メッセージが残っていた/7回目の電話で今から会おうよって/そんなふつうの毎日の中始まった〉という「appears」の歌詞をなぞったような展開が描かれた。また、1話、2話ともにドラマの終盤、アユとマサが見上げる空に虹がかかる演出は、2002年にリリースするアルバム『RAINBOW』への布石とも見て取れるし、収録曲の「everywhere nowhere」には〈空は少し遠いけど/虹の終わり探しに行こう/誰も見たことのない/景色を探しに〉というフレーズもがあることからも“虹”がスターへの道を表していると想像がつく。さらに、3話ではアユが砂浜に「あなたの愛が欲しいよ」とデビュー曲「poker face」の歌詞の一部をしたためるシーンも登場し、ファンを沸かせた。

 浜崎あゆみは、歌手デビュー以来、ほぼ全ての楽曲の作詞を自身で手がけてきた。そしてその多くが実体験を基にしているという。特に、『M 愛すべき人がいて』で描かれるデビューから一躍トップスターへと上りつめるまでの数年間にリリースした楽曲には、想いを寄せる相手への思いが色濃く反映されており、裏側を知ってしまった今改めて読み返すとどの曲も特定の相手へのラブレターのように見えてくる。しかし、そんな個人的な恋愛体験を綴った楽曲に当時の若者たちの共感が集まったところを見ると、浜崎が紡ぐ言葉そのものに普遍的な力があったことは疑うべくもない。何者でもなかった自分を信じ、力強く導いてくれるプロデューサーと、それに応えるかのように高みへと羽ばたいていった少女。ドラマ『M 愛すべき人がいて』では時代を彩った歌姫の実像とともに、ヒットチャートを総ナメしていた楽曲の背景にも迫っていくことになるだろう。スキャンダラスでぶっ飛んだ演出こそあれ、当時の浜崎がアーティストとひとりの女性の間で苦悩していた姿が描かれれば、改めて楽曲にも光が当たるのは間違いない。

 5月9日に放送予定だった4話ではいよいよデビューに向けて一歩を踏み出したアユに、さらなる困難が立ちはだかる……、と予告されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で撮影スケジュールに変更が生じたことを理由に急遽放送延期が決定。代わりに同ドラマの視聴者を代表して伊集院光と社会学者の古市憲寿によるオーディオコメンタリーを加えた第1話の特別編を放送する。初回を見逃し、ネット上の盛り上がりに付いていけなかった人はもちろん、もう一度あの衝撃を体験したい人にも見逃せないものとなりそうだ。(渡部あきこ)

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