Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

没後50年 成瀬巳喜男の世界

19/12/6(金)

『石中先生行状記』 (12/7〜12/17) 神保町シアター「没後50年 成瀬巳喜男の世界」(11/9〜12/20)で上映。 原作者の石坂洋次郎が戦時中に疎開していた故郷青森で見聞した牧歌的なエピソードを綴った短編小説を、三話で構成したオムニバス映画。後期の重苦しい成瀬作品とはまったく異なる小作だが、見る者をほのぼのとした幸福感に包み込む珠玉の名作だ。 三話とも青森県弘前でロケをしている。 一話の「りんご園」、二話の「芝居小屋」、三話の「農村」、郷愁を誘う風景はどれも弘前の実景で、そこを歩く石中先生は原作者の石坂である。 三作の中で最も楽しいのは第三話の「千草ぐるまの巻」。若い娘ヨシ子(若山セツ子)は、入院した姉を見舞った帰路、知り合いの荷車に乗せてもらう。途中の茶屋で休息した後、一眠りしようと乗り込んだ荷車は、別人のものだった。 夕方、見知らぬ農家の前で目覚めたヨシ子の前にいたのは、髭もじゃで無骨な男、貞作(三船敏郎)。 その晩、彼の家に泊めてもらうことになったヨシ子は、飾らぬ貞作の家族の人柄に親しみを覚えていく(母親役の飯田蝶子が素晴らしい)。 翌朝、一緒に村祭りに出かけた貞作は、天真爛漫なヨシ子に徐々に心を開いていく。 最後には前年のヒット作『青い山脈』の主題歌を三船と若山が合唱する大サービスのシーンがあり、見る者の幸福感は最高潮に達する。 女子ゴルファー渋野日向子の笑顔もいいが、若山セツ子の笑顔はその何倍もいい。彼女の笑顔を見るだけでも一見の価値がある。

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む