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girl in red、beabadoobee、King Princess…高橋芳朗が選ぶ、注目の女性SSW作品7タイトル

リアルサウンド

19/1/13(日) 18:00

 Mitski、Courtney Barnett、Snail Mail、Soccer Mommy、Clairoなど、女性シンガーソングライターの活躍が目立った2018年のポップミュージックシーン。はたして、この流れは2019年にも継承されていくことになるのでしょうか? というわけで、今回の新譜キュレーションではここ2カ月ほどでリリースされた注目の女性シンガーソングライター作品をピックアップ。欧米の新進アーティストを中心に計7タイトル選んでみました。

 まずはすでにSpotifyで100万を超えるPVを記録しているというノルウェー出身の19歳、Marie Ulvenのソロプロジェクトとなるgirl in redの両A面のニューシングル『We Fell in Love in October / Forget Her』より「We Fell in Love in October」。2017年からコンスタントにシングルをリリースしている彼女、これまでにも友人のHannahへの想いを綴った「I Wanna Be Your Girlfriend」や〈I’m not talkin’ bout boys, I’m not talkin’ bout girls〉と歌う「Girls」などで自身のセクシャリティをオープンにしてきましたが、それは〈You will be my girl〉と繰り返す今回の新曲にしても同様(MVにはガールフレンドとの熱烈なキスシーンも)。そんなバックグラウンドや年齢からSnail Mailと比較されることも多いようですが、こちらはより陶酔感のあるベッドルームポップ/ドリームポップを志向しています。現状「ネクストClairo」の最右翼といえる存在。

girl in red – we fell in love in october
girl in red – girls

 そのgirl in redとコラボシングル『eleanor and park』を出したこともあるロンドン出身フィリピン系の18歳、Bea KristiのソロプロジェクトであるbeabadoobeeのデビューEP『Patched Up』。2017年にデビューした彼女もすでにSpotifyでミリオン超のPVを誇る注目株。昨年夏にはThe 1975、Wolf Alice、Pale Wavesらを擁するDirty Hitと契約を交わしていることもあり、その名が広く知れ渡るのは時間の問題でしょう。影響を受けたアーティストに挙げているのはKaren O、さらにスパイク・ジョーンズ監督の映画『her/世界でひとつの彼女』の挿入歌「The Moon Song」をカバーしたこともある、という情報からピンときた方にとってはまちがいないアーティストかと。ほぼ全編がキュートなベッドルームフォークで占められるなか、ギターポップの「If You Want To」が良いアクセントになっています。

beabadoobee – Dance With Me
girl in red & beabadoobee – eleanor and park

 Mark Ronsonがソニー傘下に興した<Zelig Records>より昨年デビューしたブルックリン出身の20歳、King Princessのニューシングル『Pussy Is God』。2015年に映画化されたパトリシア・ハイスミスによるLGBTQ小説の古典『キャロル』へのトリビュートとしてリリースしたデビュー曲「1950」がいきなりアメリカでゴールドディスクを獲得、一躍新時代のクィアアイコンになった彼女ですが、Janelle Monáeのあの「Pynk」とも共振する今回の新曲はそんな状況にさらに拍車をかけることになりそう。荘厳な「1950」から一転してのファンキーなサウンドプロダクションとの相性も良好で、ダンスミュージックへの対応力が高いとなってくると今後はボスのMark Ronsonとの絡みに期待が高まります。なお、King PrincessことMikaela Strausは現在女優のAmandla Stenbergと交際中ですが、この「Pussy Is God」には共作者としてAmandlaの名前もクレジットされています。

King Princess – Pussy Is God

 2013年にアルバム『Run and Tell』でデビューしたアトランタ出身の21歳、Faye Websterがニューシングル『Kingston』をリリース。アメリカーナの強い影響下にありながらもAaliyahをアイドルとして崇めるという異色の音楽的バックグラウンド(このあたりは彼女がフェイバリットに挙げるNatalie Prassの音楽趣味を彷彿させます)、ミュージシャンの傍らフォトグラファーとしてLil YachtyやOffset、D.R.A.M.らラッパーのポートレートを手掛ける多彩な活動(彼女が撮影した写真は『Billboard』や『Rolling Stone』に使用されたことがあるとのこと)など、とにかく興味深い要素がもりだくさんなアーティストですが、<Secretly Canadian>移籍第一弾となる今回の新曲はぐっとソウル度がアップ。サックスをフィーチャーしたシルキーでメロウな味わいは「Music」など初期のCarole King作品に通じるところもあるのではないかと。この路線、ぜひとも推し進めていただきたいです。

Faye Webster – Kingston

 こちらも<Secretly Canadian>より、2017年のEP『Thrush Metal』一発で衆目を引き寄せたオーストラリアはパース出身の26歳、Stella Donnelly。3月8日リリース予定の彼女のデビューアルバム『Beware of the Dogs』から先行トラックの「Old Man」のミュージックビデオが公開になりました。これがシンプルなベッドルームフォークだった『Thrush Metal』のイメージを覆す、抜けのいいバンドサウンドでびっくり。もっとも歌詞はミソジニーや性的暴行を扱っていた『Thrush Metal』の流れを汲むもので、時代錯誤なセクハラおやじに痛烈な一撃を浴びせています。これは2019年の台風の目になるかも?

stella donnelly – Old Man

 シャネルのフレグランス「ガブリエル」のキャンペーンに起用されるなどモデルとしても活躍中のベルギー出身(現在の活動拠点はパリ)の24歳、Claire LaffutのデビューEP『Mojo』。ディスコビートの気だるいシンセポップ「Vérité」、トライバルなビートのなかにジャジーなフィーリングをたたえた「Gare du Nord」、Lauryn Hillの影響もうかがわせるフォーキーソウル調の「La Fessée」など、4曲入りながら非常に密度の濃いEPですが、なかでも強烈なインパクトを残すのがニューウェイブ流儀なレゲエ解釈にしびれるタイトルトラックの「Mojo」。まだまだおもしろいアイデアをたくさん持っていそうな気配がびんびんに伝わってくるので、ぜひともこの成果をアルバムにまでつなげていってもらいたいところ。

Claire Laffut – Mojo
Claire Laffut – Gare du Nord

 前作『On Your Own Love Again』から4年ぶりとなるJessica Prattの通算3枚目のニューアルバム『Quiet Signs』が2月8日にリリース決定。先行で「This Time Around」と「Poly Blue」の2曲が公開されていますが、個人的に推したいのは断然後者。相変わらず惚れ惚れするほどに見事な70年代アシッドフォークのオマージュを披露していますが、このコケティッシュなボーカルとボサノバ調のリズムが相俟ったまどろみのなかにいるような音世界はドリームポップ好きはもちろん、往年のソフトロックフリークの皆さんにも強くアピールするはず。今回の<Mexican Summer>への移籍を受けて、こうした彼女のポップな魅力がより前面に出てくることを期待しています。

Jessica Pratt – Poly Blue
Jessica Pratt – This Time Around

■高橋芳朗
1969年生まれ。東京都港区出身。ヒップホップ誌『blast』の編集を経て、2002年からフリーの音楽ジャーナリストに。Eminem、JAY-Z、カニエ・ウェスト、Beastie Boysらのオフィシャル取材の傍ら、マイケル・ジャクソンや星野源などライナーノーツも多数執筆。共著に『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』や 『R&B馬鹿リリック大行進~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』など。2011年からは活動の場をラジオに広げ、『高橋芳朗 HAPPY SAD』『高橋芳朗 星影JUKEBOX』『ザ・トップ5』(すべてTBSラジオ)などでパーソナリティーを担当。現在はTBSラジオの昼ワイド『ジェーン・スー 生活は踊る』の選曲も手掛けている。

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