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瀬戸康史の絶大な安心感 『私の家政夫ナギサさん』田所優太はこれ以上ないハマり役に

リアルサウンド

20/7/21(火) 6:00

 火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)で主人公・相原メイ(多部未華子)の恋のお相手候補として、スーパー家政夫ナギサさん(大森南明)と共に人気を二分しているのが、ライバル会社のエース社員・田所優太を演じる瀬戸康史だ。

参考:『私の家政夫のナギサさん』が突きつける、時代の変化と価値観のアップデート

 外資系製薬会社「アーノルド製薬」のMRで性格もルックスも完璧、おまけに仕事もデキるという、非の打ちどころのない田所は、瀬戸康史にとってこれ以上ないほどのハマり役。誠実な人柄で、「患者さんファースト」だと医師や営業先から絶大な信頼を得ている根っからの人たらし。誰に対しても分け隔てなく接し、メイにとっては掴みどころがなく、まだ扱い兼ねている新入社員の瀬川(眞栄田郷敦)からも一目で気に入られ慕われるほど。鼻にかけたところがなく、同性からの人気まで高い。こう書くと嫌味なほどなのに、それを微塵も感じさせない。また、ここまで揃えば「胡散臭さ」のようなものが垣間見えてもおかしくないはずなのに、彼にはそれが全くない。完璧なのにそこはかとない人間味がある。等身大でいながら王子様的存在であり続けられる。控え目でありながらも香り立ってしまう、生まれながらのサラブレッド要素を持ち合わせる。甘いマスクと重厚な声質が、彼から醸し出される絶大な安心感に繋がっているのかもしれない。

 『ルパンの娘』(フジテレビ系)でも、警察一家・桜庭家長男の和馬を演じ、婚約者である泥棒一家“Lの一族”の娘でもある華(深田恭子)との許されぬ恋のために翻弄される役どころを演じた。彼女が警察一族の人間でないという理由から、両親から結婚を猛反対される中、自身のアイデンティティーである桜庭家に対しても、また愛する華に対しても常に真摯であろうとする彼の姿に、思わず応援したくなってしまう視聴者も多かったのではないだろうか。華は自身の本来の姿をずっと彼に打ち明けられずにいたが、それは彼を信じられなかったからではない。信用に足りすぎる相手であるからこそ、真実を知ってしまえば自分と家族との間で悩む彼の姿が安易に想像できすぎてしまうが故のことだった。また、警察官という役柄のため鍛え上げられた身体、増量して臨んだ本格的なアクションシーンも印象的だった。

 同じく好感度の高い青年役という点では『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)で、山本美月演じるヒロインに一途に想いを寄せ続ける幼なじみ・是枝洋貴役を好演。なるほど、この高純度青年をことごとく報われない恋をするという配役に回すことで、物語に一気に切なさを増幅させていた。ヒロインの交際相手の鮎川(松坂桃李)は義足になり、気持ちも塞ぎ込みがち、少し卑屈になってしまっているところも垣間見える。そんな鮎川に太鼓判を押される恋敵を持ってこようと思うと、瀬戸康史だからこそ演じられる「陰りのないピュアさ」「嘘偽りのない相手ファースト、思いやり」なしにはそもそも成立し得ない役どころで、彼がそのポジションに選ばれたのも必然だったわけである。

 さて、ここまでの役どころと毛色が違うのが『海月姫』(フジテレビ系)で見せた女装姿だ。東村アキコの人気コミックが原作だが、漫画内でのみ成立するかと思えた美しい女装男子・蔵之介という存在をそのまま、というより期待以上のクオリティーで現実でも全くの違和感なしに体現して見せてくれた。大物政治家の息子ながら、人の目や他人の意見に左右されず自身の信念を持って進む力強さを、柔和な見た目の中に矛盾なく共存させられたのは、瀬戸が持つ演技の幅広さゆえのことだろう。同じく“大物政治家の息子”ながらそれを感じさせず奔放に生きている役どころとして『デジタル・タトゥー』(NHK総合)での人気ユーチューバー・タイガ役が挙げられる。静かに反骨心を内包させながら、どちらが表面でどちらが裏面かなんて意識させずにそのどちらもを地続きに見せてくれるのだから、彼は現実離れしたような役柄であっても決して嘘臭くないのだ。

 「犬っぽい」「愛され犬系男子」と評されることがある瀬戸だが、そこから連想されるのは『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(TBS系)で主人公の女医(中谷美紀)を翻弄する年下のデリバリー屋役。当時この年下男子のアプローチに「可愛い」という声が多数挙がっていたが、瀬戸は「可愛い系男子」が上手く歳を重ね、それだけに終わらなかった、ある意味稀有な成功例とも言えるだろう。彼が持つ「人懐っこさ」「可愛さ」というのが異性のみならず、老若男女に対して向けられるものだというところは大きいように思われる。同性人気の高さを見せつけたのは連続テレビ小説『まんぷく』(NHK総合)での神部役。少し抜けている部分もあるが実直で責任感も強く、萬平(長谷川博己)が興した会社で従業員をまとめるリーダーとして奮闘する。また、男性ばかりが集う暑苦しくなりがちなシーンにあっても画面に彼がフレームインすることで華になるのはもちろんのこと、一気に求心力も増す貴重な存在感を発揮していた。

 これから『私の家政夫ナギサさん』でもメイにとって仕事、恋愛双方の面でどんな嵐をもたらしてくれるのか。メイの仕事以外のダメっぷりを知ったときにどんな反応をするのか。田所自身にもできないことはあるのか、少しの綻びを見せてほしい気もしながら楽しみに見守りたい。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。

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