Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

綾野剛と[Alexandros]が掴んだ映画における主題歌の意味「『Beast』が息を吹き込んでくれた」

ぴあ

20/11/11(水) 7:00

『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』綾野剛&[Alexandros]インタビュー 撮影:奥田耕平

このコラボレーションを、多くの人が待っていた。

11月13日(金)公開の映画『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』は、130人もの患者を安楽死させた実在の医師をモデルに描かれた禁断のクライム・サスペンスだ。死を願う者の、望みを叶える。それは、はたして罪と呼べるのか。そんな究極の問いに、綾野剛と北川景子のタッグが挑む。

そして、映画を彩る主題歌には[Alexandros]を起用。この作品のために書き下ろしたという新曲『Beast』が容易に正解/不正解を容易に断じることのできないこの物語に厚みを加えている。

綾野と[Alexandros]といえば、2017年のCMで共演して以来、親交の深い間柄。待望のタッグを誰よりも喜んでいるのは、彼ら自身だった。綾野剛、そして[Alexandros]の川上洋平、磯部寛之、白井眞輝による貴重なクロストークをお届けする。

実は昔、剛ちゃんの髪型を真似していました(笑)

「[Alexandros]のみなさんとは、以前、CMでご一緒させてもらって。ただ、僕自身はその前から[Alexandros]の曲には触れていました。それこそ前のバンド名のときから知っていたので」(綾野)

「僕ももちろんご一緒させていただく前から知っていて。初めて剛ちゃんを観たのは『GANTZ』。登場の仕方が超カッコよくて、そのときはまだロン毛だったよね」(川上)

「完全ロン毛だったね」(綾野)

「正直、言いたくないけど、真似とかしてたんですよ、髪型とか(笑)」(川上)

「信じられない。びっくりだ(笑)」(綾野)

「美容院とかで『この人にしてください』って剛ちゃんの写真見せて(笑)。そしたら一緒にやったCMが剛ちゃんがうちらになりきるっていう設定で。あのとき、俺と剛ちゃんが似てるっていろんなところで言われていたみたいなんですけど、それはそうです、なぜなら俺が似せてたから(笑)」(川上)

「剛くんは本当にストイック。そのCMも洋平と剛くんが入れ替わるというシチュエーションだったんですけど、ギターは弾く振りでいいのに、ちゃんと剛くんはボーカルもギターもきっちり覚えてきてくれたんですよ。しかも、『洋平くんのクセってこうだよね』と研究までしてきてくれて。そんな細かいところまできっちりやってくれる人なんだって、めちゃくちゃ感激しました」(白井)

「僕は剛ちゃんの新作が毎回楽しみで。どの役をやっても毎回全然印象が違っていて。本当の綾野剛はどんな人なんだろうってまるでつかみどころがない。決して一言では言い表せないところが、綾野剛の魅力だなと思います」(川上)

そんな[Alexandros]からの声に、綾野は照れ臭そうに相好を崩す。

「[Alexandros]のみんなとは波長が合うんですよ。そして3人ともすごく優しい。3人とも体温があるところが僕は好きです」(綾野)

「その言葉、そっくりそのままお返ししますという思いです(笑)」(磯部)

「剛ちゃんからはことあるごとにLINEをいただいていて。うちのドラム(庄村聡泰)が病気になったときもすごく心配してくださったりとか」(川上)

「あのときはうれしかったね。忙しいはずなのに、僕らに何かあると必ず『大丈夫?』と連絡をくれるし、俺が何か送ったらどんなに忙しくてもすぐに返事をくれる。本当に優しくて、情に厚い男だなと思います」(磯部)

他愛のない話をしているときの剛ちゃんがすごく好き

仕事上の関係を超えて、友人同士として絆を温める4 人。プライベートでもよく飲みに行くことがあるのだそう。

「もちろん役者さんとして素晴らしい方なんですけど、僕は一緒にご飯を食べているときとか他愛のない話をしているときの剛ちゃんがすごく好きで、何かあると会いたくなるし、一緒にいるとすごく落ち着くんですよね」(磯部)

「磯やんとはいちばん飯に行ってるね。前に連れて行ってくれた、あの行きつけの焼き鳥屋。本当うまかった」(綾野)

「昔からの行きつけがあって、ぜひ剛ちゃんにも食べてもらいたいと思ったんですけど。そこがいわゆる赤ちょうちん系の小さなお店で。剛ちゃんの好みじゃないかなと思いつつダメ元で誘ったら普通に来てくれて。そういうところが好きですね」(磯部)

「そのお店がめちゃくちゃマニアックなところにあって。『こんなところに本当にあるの?』って疑いながら向かったら本当にあった(笑)。6人入ったらいっぱいになるような小さいお店なんだけど、本当おいしくって」(綾野)

「残念ながらもうそのお店は潰れちゃったんですけど、あのとき、剛ちゃんと一緒に飲み食いしながら、いろんな話ができたのはいい思い出です」(磯部)

「[Alexandros]のみんなの共通点は、3人とも可愛い。僕たちぐらいの年齢の男性に可愛いと言うのはどうかなという考えもあるかもしれないけど、僕はチャーミングさがあるかないかってかなり大事だと思っていて。僕の好きな人はみんなチャーミング。その人の可愛いところを知っているかどうかは、仲良くなる上ですごく重要。僕は3人の可愛いところをいっぱい知ってるし、雑誌とか見ててもよく『この写真の洋ちゃん可愛い』ってなってる。自分に人の可愛さを見つける能力はないと思っていたんですけど、意外と誰よりも長けていることに気づきました」(綾野)

僕らが辿り着けなかった部分を『Beast』が補完してくれた

そんな綾野剛と[Alexandros]が、主演俳優とその主題歌を歌うバンドとして、この『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』で競演する。無類の音楽好きとして知られる綾野に聞く[Alexandros]の音楽的魅力とは。

「楽曲に“刹那”がありますよね。普通音楽を聴くときって、歌詞に魅了されたり、音のリフや雰囲気に気持ちが同化していくものだと思うんですけど、[Alexandros]の楽曲にはそれとはまったく違う驚きがある。パソコン越しに聴いているのに、なぜかすぐそこでメンバーが演奏しているようなライブ感があって。今回の『Beast』も、うまく呼吸ができない苦しさをなんとか振り払おうとしている勢いが生々しく伝わってくる。ただ鳴らしているだけじゃない。ただ美しいだけじゃない。ドキッとする瞬間があるところが素敵です」(綾野)

良き友である綾野剛の主演映画で主題歌を歌うことは、[Alexandros]にとってもとても嬉しいことだった。 実はもともと想定していた主題歌は『Beast』のようなナンバーではなかった、と川上は明かす。

「プロデューサーさんからは、バラードがいいと言われていたんです。だけど、映画を観ていると、(綾野剛演じる)犬養の葛藤にどんどん自分ものめり込んでいって。安楽死なんて決して簡単に解決できる題材じゃないし、正解か間違いかなんて誰にもわからない。ドクター・デスのやっていることも、社会的に見れば批判されることかもしれないけど、そういうパブリックじゃないところ、もっと心の奥底ではこういう選択もあるかもしれないと思っている自分もいる。そんな葛藤が音となって溢れたとき、自然と激しめのリフになったんです。そうして生まれたのが『Beast』でした」(川上)

『Beast』は、バラードという当初のオーダーとはまったく異なるタイプの楽曲だ。そこで川上は当初想定していたバラードと『Beast』の2曲を用意して、プロデューサーに提案した。

「そしたら制作チームのみなさんも『どちらも良かったけど、こっちの激しめの曲がいいです』と言ってくれて、『Beast』に決まりました。映画の中に出てくる役者のみなさんを追っていると、自然と鳴ってくるものがあるんだなって。それは、僕にとってもすごく面白い経験でしたね」(川上)

物語が完結したとき、エンドロールと共に流れるのが主題歌だ。映画において、主題歌とはどんな存在なのか。そう尋ねると、綾野は迷いなくこう答えてくれた。

「“息吹”ですよね。作品を観ているときって、観客はただただひたすら受け止めるしかなくて、その間は自分で呼吸の仕方もコントロールできない状態になっている。映画というある種の悪魔性を持ったものが、その魔力によって人の呼吸を奪う。だから、苦しくなるし辛くもなるし高揚もする。それが、最後に『Beast』が流れた瞬間、ふっと呼吸ができた」(綾野)

本作はスリリングな展開で観客を惹きつけながら、安楽死という社会的問題について観客の胸を深くえぐる強度を持った作品だ。綾野自身も「この作品の強度に耐えうる表現ができているのか? と、自問自答の日々でした」とコメントしている。百戦錬磨の実力派でさえ苦しんだ衝撃作。その最後のピースを埋めてくれたのが、『Beast』だったという。

「この『Beast』が流れたとき、映画が完成したと思いました。僕たちが現場で試行錯誤しながらも辿り着けなかった部分を、『Beast』が補完してくれた。正直、ずっとこの作品についてどう語ればいいのか悩んでいました。安楽死の是非なんて僕らには問えない。かと言ってただのドキドキハラハラのエンターテインメントというだけでもない。どう作品について伝えればいいか、葛藤を抱えていました。でも、『Beast』が入った瞬間、これだと。『Beast』の持つ勢いに踊らされて、盛り上がって、でも最後のリフでドンッと来る。まさにこの映画そのものなんです。きっとみんな最後は生を体感する。その感覚ってすごく大事で、そう観客に思わせてくれるのが主題歌の力。[Alexandros]とやるなら絶対そういうものにしなきゃいけないと思っていたし、それができた自信があります。ぜひまた別の作品でもご一緒したいなと改めて想っています」(綾野)

『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』は11月13日(金)公開。
[Alexandros]のシングル『Beast』は、本日11月11日(水)リリース。詳しくはユニバーサルミュージック[Alexandros]特設サイトまで。


撮影/奥田耕平、取材・文/横川良明


アプリで読む