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長澤まさみ×阿部サダヲ×奥平大兼の3人が挑んだ難役の裏側 映画『MOTHER マザー』を語り合う

リアルサウンド

20/7/2(木) 18:00

 映画『MOTHER マザー』が7月3日に公開される。『新聞記者』『宮本から君へ』などを手がけた河村光庸プロデューサーと『光』『タロウのバカ』の大森立嗣監督がタッグを組み、実際に起きた「少年による祖父母殺害事件」に着想を得て、新たな物語として映画化した本作では、主演の長澤まさみがシングルマザーの秋子を演じ、社会の闇へ堕ちていく母親役に挑戦。さらに、秋子と内縁の夫になるホスト・遼を阿部サダヲ、息子・周平役を新人・奥平大兼が演じている。

参考:長澤まさみ主演映画『MOTHER マザー』息子目線のショート予告公開 公開日は7月3日に決定

 今回リアルサウンド映画部では、長澤、阿部、奥平の3人に、お互いの印象や撮影時のエピソードについて話を聞いた。

ーー数年前に実際に起こった事件がもとになっている今回の作品、最初に話を聞いたときはどのような反応でしたか?

長澤まさみ:(以下、長澤):実際の事件のことは知らなかったんですけど、脚本を読んですぐに出演を決めました。自分が演じるであろう役柄に共感はなかったのですが、何かつかまれる感じがあって、心の中にすごく残るものがありました。

阿部サダヲ(以下、阿部):事件のことは僕も知らなかったです。お話をいただいて、まず誰が秋子を演じるのか聞いたら、長澤さんだというので、出演を決めました。

長澤:(笑)。そのときは決まってなかったでしょ?

阿部:いや、ほんとに聞いたあとに決めたんだよ(笑)。最初は脚本だけもらったので、「誰が秋子をやるんですか?」って聞いたら、「長澤さんみたいです」って言われたので、「はい、やらせてください」って。

長澤:私も、阿部さんが遼役をやると聞いて、意外だなと思いました。

阿部:ここまでひどい役はやったことないですから(笑)。

長澤:今までは“おもしろくて鋭い人”を演じられていた印象です。

阿部:そう。今までやってきた役は、どこかに救いがあったんだけど、遼にはない。長澤さんも、秋子みたいな役をやるイメージが全然なくて。長澤さんが“子どもを持つ母親”を演じる時点で、ちょっと見てみたいと思いました。それで、見れるんだったら間近で見たいなって(笑)。

長澤:(笑)

ーー奥平さんはこの作品がデビュー作となるわけですが、演技自体も初めてだったんですか?

奥平大兼(以下、奥平):初めてでした。オーディションの1カ月くらい前にちょっと練習したぐらいで、それ以外は演技経験もまったくありませんでした。だから、プレッシャーもすごかったです。脚本の読み方も分からないぐらいだったので、とりあえずミスだけはないように……という感じでした。

ーーオーディションの時点で、長澤さんや阿部さんが出演するのは知っていたんですか?

奥平:いえ、知りませんでした。周平役に決まってちょっと時間が経ってから、他のキャストの方々の名前を教えていただいたんですけど、怖かったですね。当時、長澤さんが出演されていた『キングダム』がヒットしていて、友達の間でも話題になっていたんです。まさか実際にお会いできるとは思っていなかったので、ビックリしました。そして、阿部さんに関しては、僕が初めて名前を知った俳優さんだったんです。

阿部: えっ、そうなの? すごい!(笑)

奥平:そうですよ!(笑)『マルモのおきて』(フジテレビ系)がきっかけでした。

長澤:『マルモのおきて』のとき何歳だったの?

奥平:7歳で小学2年生だったと思います。

阿部:僕からすると緒形拳さんみたいな感じですよ。初めて名前を覚えた俳優ってすごいですね!

長澤: 私はともさかりえさんかな。

ーーそんな憧れに近い存在だったお2人と実際にお会いしてみてどうでしたか?

奥平:長澤さんは一番最初に会ったときにめちゃくちゃ緊張してしまって、目が合わせられなかったんです。2回目からは大丈夫だったんですけど……。

阿部:早いな!

長澤:すぐ大丈夫になっちゃった(笑)。

奥平:(笑)。阿部さんはドラマで見ていた“いいお父さん”というイメージがあったのですが、初めてお会いしたのが撮影中で、阿部さんがすごく怒鳴るシーンだったので、「こんな演技もされるんだ!」という感じでした。

長澤・阿部:ははは(笑)。

長澤:こんなふうに、まだあまり現場慣れしていない普通の子で、すごくおもしろいんです。業界慣れしている子が多い中で、こういう素直な存在ってなかなかいないと思うんですよね。

ーーお芝居も生々しくてすごくリアルでした。

阿部:なんであんなにリアルにできるの?

奥平:何も分からないので、考えたらダメだなと思って。とりあえず自然にやろうと思っていました。

阿部:すごいよね。

奥平:よかった……んですかね?

阿部:いいと思いますよ。僕は周平が坊主になってからを知らなかったから、その後もすごくよかった。坊主の方が良いかなぁ。

奥平:じゃあまた坊主にします!

長澤:髪型の問題?(笑)

一同:(笑)

ーー特に役作りもしなかったということですよね。

奥平:食事制限はしたんですけど、お芝居の経験がなかったので、役作りのためにこうしなきゃっていうのがまずわからなかったんです。監督から「周平として自然に思ったことを表現すればいいよ」と言われたので、指示どおりにしました。

長澤:この作品で、もう俳優やるって決めたんだもんね?

阿部:あ、決めたの? 空手はもうやらない?

奥平:空手はちょっともう……。

長澤:撮影中も、友達に何も言えなかったんだよね。

奥平:何も言わずに急にいなくなって、戻ってきたらいきなり坊主になってる、みたいな(笑)。

長澤:おもしろいよね(笑)。

ーーこの作品の撮影をしているときまでは、今後俳優でやっていこうというのは決めていなかった?

奥平:あまり考えていなかったですね。もともとは、そこまで俳優の仕事をやりたいとは思っていなかったんです。でも、実際にやってみたらすごく楽しくて。撮影が終わってから今後も俳優のお仕事を頑張ろうと思いました。

阿部:きっとそういう人が向いてるんですよね。

ーー逆に長澤さんと阿部さんは今までやられたことのないような役柄だったと思います。それぞれ秋子と遼を演じるにあたって、何か今までと違うアプローチはされましたか?

長澤:本当に今までやったことのないような役柄だったので、自分のアプローチ以前に、この人をどう理解すればいいんだろうと毎日悩んでいました。ただ怒って泣きわめいてる人になっちゃうと、それはちょっと意味が違うなと思っていたので、秋子のことは到底理解できないんですけど、物語の中の人として、その思いを掴めたらなと思って日々向き合っていました。

阿部:僕は、お客さんが見て「こいつ嫌だな」と思う人にしたいなと思っていました。でも実際、遼という人物が何者なのかよくわからないんですよね。どういうところで育てられたのかもわからないし、名古屋でホストをやってるって言っても、本当にそうなのかわからない。実態がよくわからない人だから、観客の皆さんが「こいつムカつく」「なんなのこの人」って思ってもらえれば、芝居としては成功かなと思います。実際に僕も完成した映画を観て、暴力シーンで嫌な気持ちになったので、たぶん……成功したのかなと思います。

ーー確かに嫌な気持ちになるシーンが多かったです。

阿部:自分でも嫌でしたから。自分の親とかはちょっと観ないでほしいと思ったくらいです。途中で「もう出てこなくていいよ!」って思いますから。

長澤:(笑)。

ーーダンスシーンもすごく印象的でした。

長澤:阿部さんが大好きなシーンですよ! 阿部さん、そのシーンにすべてをかけてましたもんね(笑)。

阿部:そうですね……(笑)。一番難しかったです。

ーーあのシーンは脚本どおりなんですか?

阿部:後半は書いてなかったんじゃないかな?

長澤:後半は書いてなかったです。監督から「ここも踊ってほしいんです」って言われたとき、すごく嫌そうでしたよね(笑)。

阿部:そうそう(笑)。最初の方にゲーセンでもダンスをやってて、あまりできなかったのでそれすら嫌だったんですけど、監督が「お別れのダンスを……」みたいな感じでおっしゃったんですよね。

長澤:(笑)

ーー(笑)。でもすごくいいシーンだったと思います。

阿部:ほんとですか? あれは怖かったな……。

ーー長澤さん、奥平さんはあのシーンいかがでしたか?

長澤:台本を読んでるときは、すごく楽しみなシーンだったんです。ちゃんとした踊りというよりかは、人が能動的に動いている感じがダンスをしているように見えるという印象で、すごくいいシーンだなと思っていて。でも、やる方は本当に大変だろうなと思っていました。実際、阿部さんがすごく恥ずかしそうだったし、その気持ちはわかるし、私があの立場にいたら、本当にやりたくない(笑)。

奥平:僕はそのシーンを撮影しているとき現場にいなかったんですけど、皆さんから「阿部さんのダンスがおもしろい!」と聞いていたので、すごく楽しみにしてました。完成した作品を実際に観てみたら、予想していなかったところでそのシーンが来たので、観ながら笑ってしまいました。

長澤:笑っちゃったんだ(笑)。

阿部:大人になったらああいうこともやるんだよ!(笑)

奥平:恥ずかしいですね……(笑)。

ーー長澤さんと阿部さんが今回初共演というのも意外でした。実際に共演してみていかがでしたか?

長澤:私はずっと阿部さんのファンだったので、いつか一緒にお仕事したいなと思っていたんです。なので、今回共演できると知ったときはすごくうれしかったですね。まさか恋人役で共演できるとは考えていませんでしたけど(笑)。阿部さんに毎日会えるのが楽しみでした。

阿部:ありがとうございます。僕もすごく楽しかったです。またご一緒したいですね。なかなかないであろうこういう役で共演できたのはよかったです。

ーー最後に、長澤さんはこの作品をとおして、どのようなことを考えられましたか?

長澤:この作品の話をいただいて、最初に脚本を読んだときに考えさせられたのは、親が子を作るという責任についてでした。実際に女である私は、1人の女性として、いつか子どもを産むかもしれないという立場にあって、秋子のことが他人事とは思えない部分もありました。自分自身も実際に母親から受けた影響はすごく大きいし、そこについて知らないふりができないという思いがこの作品にもあって。秋子と同じ境遇にいる人は少ないかもしれないけれど、そういう“人の責任”についてとても考えさせられる作品だと思います。特に大人や同世代の方々に観ていただきたいです。(取材・文=宮川翔)

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