瑛人による1stアルバム『すっからかん』全曲解説 すべてをさらけ出した作品に詰め込んだ“瑛人という人間と音楽”
21/1/7(木) 9:30
瑛人は、いつもニコニコしているただの「ピース野郎」ではない。
たくさんの自己嫌悪を抱えながらも、とりあえず笑顔を浮かべておくことで目の前のしんどい現実をなんとか誤魔化して乗り越え続け、自分にも他人にも余計な苦痛や心配を与えないよう振る舞ってきた、そんな人物だ。彼の音楽を聴くと、影に潜ませている哀愁をひしひしと感じさせられる。でも笑顔とピースサインを向けられると、一瞬でこちらも笑顔になってしまうような陽の光を持っているのもまた事実だ。
瑛人の音楽が日本中の耳と心にスッと入っていった理由は、その歌詞やメロディの表面的要素だけでなく、そこに彼の人間的なエネルギーが染み込んでいるからだろう。「ノーテンキには笑えないけど、とりあえず笑うところから始めるしかなくない?」といったマインドや、自己肯定感が十分にあるわけではないけどそれでもなんとか立ち続けていかなければならないという姿勢が、今の時代を生きる人たちにハマったのだとも言えると思う。
1月1日・元旦にリリースされた1stアルバム『すっからかん』は、瑛人という人間・音楽に詰まっている中身をすべてさらけ出した作品として完成した。(矢島由佳子)
状況が大変化した1年。でも、音楽に対するスタンスや喜びは変わらない
ーー2020年は、瑛人さんにとって変化の大きい1年でしたよね。
瑛人:大変化です!
ーー想像していましたか? こんなにたくさんの人が自分の曲を口ずさんで、テレビからもバンバン流れて、という日がくることを。
瑛人:いえ、まったく想像してなかったです。全部嬉しいですね。こうやってアルバムを出せることも、コカ・コーラやスーパーカップのCMソングをやらせてもらえることも、もう全部嬉しいです。
ーー「瑛人」という名前が広まるまでは、何のために、どういったモチベーションで音楽活動をされていましたか。
瑛人:これまでは特に何のためでもなくやってました。ただ楽しいからって。
ーー瑛人さんにとって音楽の楽しさの種類や形にも、この1年で変化がありましたか?
瑛人:歌ってるときの楽しさは一緒ですね。何も考えずにただ楽しい時間が過ぎるからすごく好きだという気持ちは、今も前も変わらないです。
ーー音楽活動の環境や状況が変わっても、音楽に対するスタンスや喜びは変わらない?
瑛人:なんとか、音楽に関しては今のところキープできてます。面倒だなと思うことが起きたりもするけど、音楽には何も関係ないです。ただ、前までは人が少ないところばかりだったので、いっぱい人がいる中で歌うのは不思議な時間でもあって……それを超楽しめるようになるのはこれからかなって思ってます。
ーー今までのように仲間内で作品を作って自主リリースしていく選択肢もあったと思うのですが、事務所に入ってメジャーのレコード会社と組むことを選んだのは、どういう想いがあったからですか?
瑛人:それはすごく悩んで……別に入らなくてもいいのかな? とか。TuneCoreもあるし、またそれを使ってどんどんやっていこうかなとも思ったのですが……やっぱり、自分では対応できないことがいっぱい起きてきて、誰か必要だなと感じて。「これはもうだめだ!」と。
ーーただ、メジャーでやる中でも小野寺淳之介さんやHOTDOGS、松本千夏さんなどこれまでの仲間との制作を続けられていますが、それはどういった想いからでしょう。
瑛人:これからも大事にしていきたい。だから、これまでの仲間もみんなこのアルバムに入ってます。みんなで最後にハッピーになりたいなと思ってます。みんなが「いい人生だなぁ」って思えるように。1人だけ「いい人生だなぁ」と思うのは違うなって。
ーーそんな仲間たちも参加している1stアルバムを『すっからかん』と名付けた理由や経緯は?
瑛人:「ハッピーになれよ」の歌詞で〈すっからかん〉と使ってて。Kさん(御徒町凧)と話してて、「『すっからかん』がいいんじゃね?」みたいになって、たしかにと。すっからかんって俺っぽいし、これで本当にすっからかんだしと思って。
ーー本当にすっからかん、というのは?
瑛人:(アルバムに収録された)オリジナル12曲、これを出したらストック曲がゼロ!
ーーなるほど(笑)。持っているものを全部出し切ったんですね。
瑛人:これ以上曲がないです(笑)。またゼロからです、本当に。
ーー「香水」という曲に対しては今どういう気持ちがありますか。
瑛人:最近はあまり歌ってないから、歌いたいなと思ってます。この間までは「香水」を歌ってたけど、最近は「ライナウ」をよく歌ってて、「香水」を歌う機会は減ってるんですよね。なので少し寂しくなってきています。大好きですから。「ありがとう」って感じですね。「『香水』くん」のせいで、って思うときもあるし、「『香水』くん」のおかげで、って言うときもあるし。
ーー「僕はバカ」は、origami PRODUCTIONSに所属する関口シンゴさんがアレンジを務められていますね。
瑛人:そうです、むっちゃいいアレンジにしてくれました。シンゴさんは常にあったかいし、優しいし、冷静で、かっこよかったです。
ーーリアルな歌詞を書くことも大事にされていますが、こうやってフィクションで映画のように歌詞を書くのも楽しい?
瑛人:楽しかったですね。でも映画の観過ぎというのは本当だし、妄想とリアルを混ぜてます。これは、最初にメロディができたんです。それで、何がハマるかなと思いながら、〈隣の部屋から聞こえる壁を通して〉って歌詞を入れたら、「この曲、妄想でできそうだな」と思って作りました。隣にすっごい可愛い女の子が住んでる設定で(笑)。
ーー(笑)。聴いていて、画や映像が浮かんでくる曲だなと思います。
瑛人:ミュージックビデオでは、俺が主人公で飯豊まりえさんと共演できたんですよ。妄想していた夢が撮影で叶いました(笑)。
瑛人が笑顔でいる理由
ーーアルバムタイトルにもなった歌詞も入っている「ハッピーになれよ」は、今作のキーとなる1曲だとも思います。これは、自伝を歌にしたような曲ですよね。
瑛人:そうですね。2020年8月にBuzzFeedから取材を受けたときに「小学4年生のときにワンフレーズだけ曲を作ったことがあるんですよ」って話をして、そこから「これ、曲にできるな」と思い返して詰めて作っていきました。
ーー小4のときのエピソードを聞かせていただけますか。
瑛人:小2のときに親が離婚して、小4のときに俺だけ父ちゃん家へ遊びに行ってたんですよ。日曜日、野球帰りに。そこで父ちゃんに彼女ができたっていうのを知ったんですね。なんとなく、それを母ちゃんに教えてあげようとして、でも小4だからちょっと気まずいしどうやって教えようかなと思って、お風呂で歌ってあげたんです。〈2年前はいつも一緒だったけど 2年経った今は一緒じゃないけど〉って。で、最後に「ハッピーになれよ」って歌ってあげたんですよ。だからこの曲は、小4の自分とコラボしてるみたいですね。
ーーここで書いているストーリーや景色は、瑛人少年にとって強烈に記憶に残るものだったんでしょうね。
瑛人:そうですね、記憶にはあります。
ーーこの曲を聴いても改めて思ったのですが、瑛人さんの音楽を聴いていると、アーティスト写真に写っているような笑顔に奥深さを感じるというか。すごくいいスマイルだけど、どこか哀愁を感じる、いろんなことをこの笑顔でなんとか耐えてきたゆえの笑顔なんだということを感じます。ただのピース野郎ではない。
瑛人:ああ……(自分で自分の写真を見ながら)たしかに、この笑顔ってどこか逃げ道の顔をしているときの顔ですね。
ーー笑うことで自分に逃げ道を作ってきた、みたいな?
瑛人:緊張してても笑っちゃうし、怒ってても笑っちゃうし、悲しくても笑うんですよね。「あはは」って笑うんじゃなくて、顔が笑い顔になっちゃうだけ。本当は面白くないけど、ニヤニヤしてしまう。もちろん、作り笑いとかではなくて本当に面白いときもあるんですけど。
ーーどういう想いや考えがあって、そういう行動を取ってしまうんだと思いますか。
瑛人:なんでだろうな……でも、母ちゃんもわりとそうです。真ん中の兄貴も。怒ってても笑う。逆に笑った瞬間に「あ、怒った」ってわかる、みたいな。感情が入るとそうなるんですよね。
ーー笑顔を浮かべることで、負の感情をなんとか誤魔化そう、なんとか立ち続けよう、という心の表れでもあるんですかね。
瑛人:それはあると思います。「チェスト」という曲で〈出会いと別れが急すぎて ほんとうかわからない時もある/そんな時はただひらすら 笑っていればいいよ〉って歌ってるんですけど、そこには自分が思ってることを書きました。超軽く聴こえるかもしれませんが、本当にそうだなって俺は思ってます。
ーー軽はずみな〈笑っていればいいよ〉ではなくて、そうしないと何も始められない、歩き出せないということもありますよね。
瑛人:めっちゃあると思います。
ーー瑛人さんの歌詞の書き方には、そういうご自身の普段の感情の動かし方が如実に表れているなと思っていて。怒りを表す言葉を書いた後、その次の行ではそれを変換したり和らげたり笑ったりして自分を保とうとする描写がある。そういう書き方が、この曲に限らず他の曲にも多いなと。
瑛人:ありますね。本当の怒りを歌にしてるけど、これはあくまで歌だし、怒りに共感してほしいわけじゃないので。俺はそっちのタイプじゃないと思ってて、聴いてくれた人がちょっとでもポジティブになってくれたらいいなと思ってます。
ーー今話題に上がった「チェスト」について聞かせてください。最後のアカペラになるところがヤバいですね。
瑛人:ヤバいですよね、すっごくいいですよね! 僕も本当に好きです。でも、俺が歌う上では、最後に「ラララ……」で逃げられるほうも歌いたかったんですよね。それも俺の癖で、落ちたままではなく、「ラララ……」でちょっと自分を保つところまで歌いたいっていう。俺が歌わなければこれでいいと思うんですけど、自分が歌うとしたら「ラララ……」で逃げるようにしたくて。なので、俺のワガママを聞いてもらって2パターン録ることにしたんです。
ーー自分がリスナーとして聴いたときは、最後がアカペラで終わるバージョンがいいなと思うということですよね?
瑛人:めちゃくちゃ思います! 泣くぐらい。ただ自分が歌うとなるとまたちょっと話が違うんです。今の俺ではまだ表現が難しくて。
ーーなるほど。そもそも、これはどういうきっかけで書き始めた曲ですか?
瑛人:これは処女作なんです。19歳のときに初めてちゃんと作った曲。学校に入って1曲目に作った曲で、シンガーソングライターゼミで「家具を曲にしましょう」という課題が出て、俺はチェストを選んで書き始めて。チェストって本来「タンス」ですけど、「引き出し」というインスピレーションで書いていきました。みんなにはわからない部分もあると思うけど……自分で読むと、あのときだなってことがいっぱい出てくる。当時のバイブスがアウトプットできた感じがします。
ーー「カルマ」はメロウなR&Bで、アルバムの中でも曲調が際立ってますね。
瑛人:Shingo.Sさんという、清水翔太さんなどの楽曲も手掛けているトラックメイカーの方と、ソングライティングセッションという形で、Shingo.Sさんが音を作りながら俺もメロディを入れる、というやり方で作っていきました。音がShingo.Sさんのバイブスになっているので、いつもとちょっと違う、新しいメロディができたなって思います。
ーー実際これを歌うときも、他の曲とは違う気持ちよさがありますか?
瑛人:いつもよりちょっとモテそうだなと思いながら歌ってますね(笑)。
ーーあははは(笑)。これは、実話ではない?
瑛人:これもほぼほぼ実話です。1番は、毎度毎度のこと(笑)。2番は、「香水」の子のお話。
ーーえ、そうなんですか!
瑛人:はい。今はちゃんと、ほかの方と幸せになってるみたいです。
ーー「リットン」は、おばあちゃんのことを歌った曲ですよね。
瑛人:そうですね。おばあちゃんの前で〈リットンリットン〉ってなんとなく歌ってて。なんで「リットン」が出てきたのかはわからないんですけど、なんで歌詞の中で〈リットントン〉にしようと思ったかというと、歩き方。おばあちゃんは片足がずっと悪かったので、片足で歩く音を伝えたくて。〈シワシワの手〉とは書いてあるけど、赤ちゃんへの子守唄にも聞こえるし。あまり特定はせずに、聴いてくれる方それぞれの解釈で感じてくれたらいいなって。
ーー聴いた人にとっての大切な人が自然と重なると思います。瑛人さんにとって、おばあちゃんはどういう存在なんですか?
瑛人:おばあちゃんは優しくて、大好きな存在です。でも今はほとんど話せない、認知症で。だから〈「名前を呼んでみて」 ふざけたハテナ(質問)だよね〉って。でも話すと笑うんですよ。
ーー「Don’t be afraid」も昔からあった曲ですよね?
瑛人:1年半ぐらい前、初めてHOTDOGSと作った曲です。HOTDOGSもかっこよくて、心が優しいし、大好きで、超リスペクトしてる兄貴2人です。すごく影響も受けてますね。
ーーもともとはどういう出会いだったんですか?
瑛人:出会いは俺の20歳の誕生日で。その頃、横浜で路上ライブをしてる人にギターとマイクを借りて歌うっていうことにハマってたんですよ。マイクジャックっていうんですかね。怒られたりもするし、大体断られるんですけど(笑)。
ーーなかなか冒険的な行動ですね(笑)。
瑛人:誕生日のときに横浜を歩いてたらめっちゃ好きな声が流れていて、それがHOTDOGSのMinoriくんで。話してみたら、俺からは「歌わせて」なんて言ってないのに、「歌う? やれよやれよ」って言ってくれて。歌ったら「めっちゃいいね」って、それで繋がったんです。そうしたら、専門学校も一緒だったという。歳は5個上なのでかぶってはないんですけど、そういうリンクもあって。
ーーすごい出会いですね。そんな出会いからできた曲を1stアルバムの中に入れるっていうのは感慨深いですね。
瑛人:めっちゃ嬉しいです! アルバムの収録曲に「HOTDOGS」って書いてあるのがめっちゃ嬉しい。
ーー今回アレンジを手掛けたmabanuaさんとの作業はいかがでしたか?
瑛人:最高でした! 「こんなこと言いたくないけど」って客観的な視点の意見とか、ちゃんと教えてくださって。だけど、僕たちの意見も受け入れてくださいました。
アルバムを持って、自分の足で直接歌を届けにいきたい
ーー「HIPHOPは歌えない」は2019年に配信リリースされた曲ですが、今回は韻シストとのコラボバージョンで収録されています。これはどういう経緯で?
瑛人:ルンヒャンさん(音楽専門学校時代の講師であり、現在も瑛人とともに制作をしている音楽家)が韻シストと知り合いで繋げてくれました。楽しかったですね、イケイケな感じに仕上がって。
ーー「HIPHOP」という音楽ジャンルに対して、瑛人さんはどういう思いがありますか?
瑛人:今はいろんな歌があるので俺のイメージは結構古いのかもしれないですけど……俺が聴いてたラップはリアルで、ちょっとクソな人間なんだけどかっこいいっていう、そういうのが好きです。俺はHIPHOPってこんな解釈だから、そういう人たちみたいにはなれないなと思ったし、中途半端だなって気持ちもあって、この曲を書きました。
ーーサビに出てくる〈リアルじゃない〉というのは、「香水」に出てくるドルチェ&ガッバーナの香水の持ち主でもあったハンバーガー屋「PENNEY’S DINER」のオーナーから言われた言葉だそうですね。
瑛人:そうなんです。渋谷の鳥貴族で飲んでるときに言われて。朝帰ってギターを弾きながら〈HIPHOPは歌えない 俺はリアルじゃないからさ 現実ばっかをみてたらきっと涙が出るんだ〉まで出て、これを曲にしようって思いました。
ーー「お前はリアルじゃない」って言われたとき、どう思ったんですか? 図星だ、って思ったのか……。
瑛人:図星だと。変にピースぶってるとか、優しい人ぶってても意味ないなって。自分は中途半端だなって気持ちでいっぱいになりました。
ーーこの曲に限らず、瑛人さんは自分の中途半端さとか醜いところ、自己肯定感を高く持てないところも、全部素直に曲にされるじゃないですか。それはある意味めちゃくちゃリアルだと思う。そうやって自分のダメなところも歌詞にするのは、自分にとってどういう行為なんだと思いますか?
瑛人:1番の〈あーまた俺の嫌いな奴が目の前にいるよ〜鏡の中二日酔いの男が笑うんだ〉は、本当に朝歯を磨きながら思ったことをそのまま曲にしましたね。そうやって吐き出すことで少しラクになるというのと、やっぱり、わかってほしいって気持ちも少しはあるのかな。この曲では、〈愛想ばっかふりかざして いつも笑ってるんじゃないんよ〉とかもちゃんと言えてますね。(歌詞を見ながら)こうやって見るとスッキリしてますね、「HIPHOPは歌えない」は。
ーー次は「ライナウ」です。「香水」のヒットがあって、世の中に「瑛人は次に何を出してくるのか?」という期待や品評的な視線も広がる中で、「ライナウ」をリリースするのはプレッシャーもあっただろうし、悩む部分も大きかったと思うのですが、いかがですか?
瑛人:「ライナウ」を作ってるときは、「香水」のことを一切考えてなかったです。ただ、リリースするときに、「大丈夫かな?」って一瞬ビビりました。僕はこの曲を好きだけど、やっぱり「『香水』の次」ってなるから、みんなの反応はちょっと心配になりましたね。でも今は大丈夫だなって思えてます。
ーーでは、曲を作ってるときはどういうことを考えていました?
瑛人:「ふつうって、スーパー最高。」というお題をいただいて、青春っぽい感じで曲を作ろうと思ってました。これは本当に僕が高校生の頃のことをただ言ってる感じです。T字路を左にまっすぐ進んだら、本当に鉄塔があったし。「ふつうって最高」と聞いたときに、なんで「今」に辿り着いたのかはわからないんですけど……今この瞬間を大事にしたい、というのは前から意識するようにしていて。「今を逃したら」とか、楽しい時間とか。そういうことを大事にしようとしているのが出たんだと思います。
ーー「好きにすればいいさ」は、アコギのリフがメインの曲ですが、これはどういうところから作ったんですか?
瑛人:『シブヤノオト』(NHK総合)に出たときに、和室の楽屋に淳之介とスタイリストさん、ヘアメイクさんと4人でいて。カレンダーには海があって。それを見ながらギターを弾いて、適当に英語で歌って、ほぼほぼそこでメロディができちゃいました。
ーー「香水」のように、セッションの中で原型が生まれたという。リリックの綴り方でいうと、さっきも話したような形になっていて、怒りを見せているけど、次のラインではそれをひっくり返して和らげているなと。
瑛人:そうですね。これは最近のマインドです。SNSを見ててたまに嫌な気持ちになったりするけど、それを言うのはダサい。だから「好きにすれば」っていう気持ちを歌にしてみようと思ったんです。俺はもっと違うところにいるよって。そこにレベルを合わせるのではなくて。そんな気持ちで作りました。
ーー〈気の利いた歌にしよう 自分を失くす気持ちで でもやっぱりやめた 兄貴達に馬鹿にされるから〉というのは、そういう想いを表したものだったんですね。
瑛人:この曲の〈兄貴達〉は優しくしてくれる人たちです。本当の兄貴、ハンバーガー屋のオーナー、Kさん。〈馬鹿にされるから〉というのは、兄貴たちが「ダサいことはしちゃダメ」って言ってくれそうだと思ったんですね。そのあと〈弟なのは認めるよ〉と、あえて「弟」って言ったんですけど、それは、自己中や独りよがりにはならずに認めるところは認めるよっていう。最近の自分のマインドですね。
ーー「またね feat.松本千夏」は、「香水」と一緒に収録されてすでにリリースされた曲ですが、今回録り直したんですよね。松本千夏さんは、瑛人さんにとってどういう方でしょう?
瑛人:音楽専門学校時代からのソウルメイトですね。
ーー男女のデュエットソングを作ろうとなったのは、どういうきっかけですか。
瑛人:当時、ヒャダインさんがやっていた夜の番組で「冬に聴きたいラブソング」みたいなテーマで曲を募集していて、ちーちゃん(松本千夏)が「やろうよ」って言って応募したんですよね。でも俺らはコンセプトをちゃんとわかっていなくて、他の人はみんな打ち込みで作曲して送っていて。趣旨が違ったのに、ヒャダインさんがこれをテレビで取り上げてくれたんです。
ーーハンバート ハンバートからのインスピレーションも強いですか?
瑛人:絶対にあると思います。大好きですから。よく歌いますし。「ん? どういう歌なんだろう?」ってちょっと考えちゃうところが好きですね。
ーー「俺は俺で生きてるよ」はいつ頃書いた曲ですか?
瑛人:序盤のほうですね。「香水」よりも前で、「チェスト」の次の次くらいの曲。
ーー当時はどういう心境、状況だったんですか。
瑛人:状況的には「チェスト」バイブスを引きずりながらも、同時にちょっとムカつきも入ってますね。そのときってみんなは大学に行ってる頃で、鼻で笑われたりしてて、それにイライラしてました。ちゃんと応援してくれる友達は2人くらいしかいなかった。
ーーそれを1stアルバムに入れるってすごく意味のあることですよね。馬鹿にされていた頃の初心を刻みつつ、そういう人たちを見返す形にもなっているし、聴き手に対しては「あなたはあなたで生きればいいんだよ」というメッセージにもなってる。当時、夢を諦めそうになる瞬間もありました?
瑛人:歌手になることが「夢」っていうものでもなくて。だからそのときは「うるさいな」って感じだったんです。「俺は俺で生きてる」と。
ーーそして、「ハピネス」のカバー。AIさんの代表曲、コカ・コーラの定番曲、みんなが知ってる曲をこうしてカバーするのは、相当なプレッシャーだったのでは?
瑛人:本当にリスペクトです、AIさん。練習するために聴いていたときから泣きそうになりましたね。「いい曲すぎるわ、これ!」って。
ーー聴き込んで、さらに歌って、どういうところが「いい曲だな」って思いました?
瑛人:やっぱりまずは歌唱力。引き込まれちゃう。歌うのがめっちゃ難しいです。あと、これ、サビもヤバいんですよ。レコーディングのときにどう歌ったらいいかなと思って、〈君が笑えば この世界中に もっと もっと 幸せが広がる 君が笑えば すべてが良くなる〉ということを想像したんです。前のバイト先の人たち、そこから連想して店長。一方では、今の事務所のスタッフ、家族、学校の友達、幼馴染……みんなをイメージして、1人ひとりの笑った顔を想像したら……本当に繋がるんですよ! 人がどんどん繋がって、結局自分にまた返ってくる。だから「これを言ってるAIさんすごい!」って思いました。それをイメージしながら歌っていたら、すっごく楽しかったです。
ーー今後は、どういった活動をしていきたいですか。
瑛人:やっぱり気持ちは変わらず、みんなに少しでもポジティブになってもらえたらなって。どんどん成長して、成長した自分がちゃんと魂を込めて曲を作って、それをいっぱい轟かせていきたい。いいバイブスでいられるように吸収して、それを曲にして、みんなへ広げていけたら嬉しいですね。
今年はアルバムを持って、自分の足で出向いて直接歌を届けにいきたいです。そしていつか、いっぱい仲間を作って(横浜の)赤レンガとかで大きなイベントをやりたい。いっぱい友達を作って、HOTDOGSとかも呼んで、ケータリングは自分が働いてたハンバーガー屋にお願いして、みんなでフェスをしたい。そうやってみんなで回していって、みんなでハッピーになりたいと思います。それが夢ですね。
■リリース情報
瑛人
1st Original Album
『すっからかん』
発売日:2021年1月1日(金)
購入はこちら
配信はこちら
【CD+DVD】
品番:RZCB-87027/B 価格:4,200円(税別) ※スマプラ対応
【CD+Blu-ray】
品番:RZCB-87028/B 価格:4,500円(税別) ※スマプラ対応
【CD only】
品番:RZCB-87029 価格:2,700円(税別) ※スマプラ対応
<収録内容>
[CD]
01.僕はバカ
02.香水
03.ハッピーになれよ
04.チェスト
05.カルマ
06.リットン
07.Don’t be afraid feat.HOTDOGS
08.HIPHOPは歌えない(韻シストver.)
09.ライナウ
10.好きにすればいいさ
11.またね feat.松本千夏(Album ver.)
12.俺は俺で生きてるよ
– Bonus Track –
ハピネス
チェスト(独唱)
[DVD/Blu-ray]
・瑛人STORY 〜Acoustic Studio Session〜
「香水」「HIPHOPは歌えない」「僕はバカ」含む全6曲のアコースティックセッションに加え、仲間とのインタビューなどの様子を収録した、撮り下ろし映像作品。
・香水 -Music Video-
・HIPHOPは歌えない -Music Video-
・HIPHOPは歌えない(韻シストver.)-Music Video-
・ライナウ -Music Video-
<先着特典>
汎用特典「あの香水のミニボトル」
ドルチェ&ガッバーナの香水ミニボトル(ドルチェ ピオニー オードパルファム 1mL)特典付き
※特典は数に限りがありますので、無くなり次第終了となります
<初回封入特典>
瑛人1stアルバム『すっからかん』発売記念ライブ〜トゥゲザーすっからかん〜
配信視聴シリアルコード(本編のみ)入り
ライブ日程:2021年1月31日(日)
対象形態:下記2品番・初回盤のみ
【CD+DVD】 RZCB-87027/B 4,200円(税別)※スマプラ対応
【CD+Blu-ray Disc】RZCB-87028/B 4,500円(税別)※スマプラ対応
※見逃し配信あり
■ライブ情報
1stアルバム『すっからかん』発売記念ライブ〜トゥゲザーすっからかん〜
2021年1月31日(日)渋谷duo MUSIC EXCHANGE
公演時間:開場16:00/開演17:00
チケット料金:前売り/全席指定 ¥3,000(税込/ドリンク代別)
申し込みはこちら
札幌、大阪、福岡の追加3公演決定
2021年2月14日(日)北海道・PENNY LANE24
2021年2月20日(土)大阪・梅田クアトロ
2021年2月21日(日)福岡・DRUM LOGOS
各公演時間:開場16:00/開演17:00
チケット料金:前売り/全席指定 ¥3,000(税込/ドリンク代別)
<オフィシャルHP1次先行受付>
期間:1月6日(水)20:00~1月13日(水)23:59
申し込みはこちら
新着エッセイ
新着クリエイター人生
水先案内