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ザ・コレクターズ 加藤ひさし&古市コータローが語る、結成から色褪せぬモッズ精神と青春時代の感覚

リアルサウンド

18/11/7(水) 12:00

 THE COLLECTORS、2017年3月1日に、結成31年にして初の日本武道館ワンマンを成功に終わらせて以降、最初のニューアルバムとなる『YOUNG MAN ROCK』。

 加藤ひさしが、The Whoの「YOUNG MAN BLUE」からいただいてこのタイトルを考えたそうだが、ドキドキやヒリヒリするような感覚、総じて言うと青春感に満ちた、瑞々しさの極みのようなこの10曲は、まさにタイトルどおりの作品だ。

 結成から32年、THE COLLECTORSだけが、なぜこんなエバーグリーンなことが可能なのか……あ、正しくは、「THE COLLECTORSと甲本ヒロト&真島昌利にだけ可能」か。とにかく、そのあたりまで踏み込んで、加藤ひさしと古市コータローに聞いた。

 なお、このアルバムのリリース日は11月7日だが、11月23日からはTHE COLLECTORS初めてのドキュメンタリー映画『さらば青春の新宿JAM』が公開になる。彼らの出発点である新宿JAMの閉店、そのJAMで2017年12月24日に行ったワンマン、THE COLLECTORSの歴史、東京モッズ・シーンの記録ーーこの4つを軸にした同作についての話も聞いた。(兵庫慎司)

■今のシーンで普通に勝負できる作品になった(古市)

ーーニューアルバムですが、曲を書くペース、歌詞を書くペースは、ずっと変わらずですか?

加藤ひさし(以下、加藤):いや、もう、やればやるほど書けなくなりますね。いろいろ枯渇するといいますか。今回のアルバムに関して言うと、なんにも曲を用意してなかったんですよね。2年前に前作を作った時は、「希望の舟」っていう歌だけは、メロディとイメージができあがっていたんですけど、今回はそういうのがひとつもなかったんで。まあちょっと、プレッシャーはありましたね。

ーーどうやってこんなにいつまでもエバーグリーンな楽曲ができるんだろう、なんで枯渇しないんだろう、と思っての質問だったんですが(笑)。

加藤:いやいや、もう年々、アイデアがなくなっていくわけですから。今回はほんとに、作ってる最中はものすごい不安で。こうして作り終わるとね、よくもまあこんなにアイデアが出たな、1曲1曲違うテーマを揃えられたな、って自分でも感心するんです。それぐらい、始める時は何もないんですよ。

ーーそういえば、昔の加藤さんのインタビューで、「やりたいことなんて、最初の2枚のアルバムで終わっちゃってる」という名言がありました。

加藤:いや、大体そうだよね。コータローくんね? どこのバンドもアマチュア時代の曲なんてアルバム2枚分ぐらいしかないじゃないですか。3枚目以降は、作ろうと思って作っていかないと、作れない。それ以降は、どんどんどんどん大変になる。

ーーかといって、音楽性をどんどん変えていくようなバンドじゃないですしね。

加藤:コレクターズの場合はね。人によってはね、音楽ジャンルを変えて新しいものを作っていく人もいるけど、コレクターズはオーソドックスなロックンロールですからね。なかなか、難しいですよ。

ーーでもこのアルバム、すばらしいじゃないですか。

加藤:まあそれは、結果論ですね。

古市コータロー(以下、古市):(笑)。

加藤:作り終わったばっかりなんで。作ることに必死で、これがいいのかよくないのかも全然わかんない。

ーーコータローさんは?

古市:いや、最近、iPhoneで、ミスチル(Mr.Children)の新譜とすごく聴き比べしてるんですけど。

加藤:(笑)。

古市:何がしたいかっていうと、ミスチルからコレクターズに、パッと一瞬にして曲が変わった時に、こっちが感じるアタック感っていうのは、同じなのだろうか、違うのだろうかってことを検証したいだけなんですけど。でも今回のアルバムは初めて……なんて言うんだろうな、彼らと同じところにいるんじゃないかな、っていう印象を受けましたね。たぶんミスチルのヘビーリスナーが聴いても、すんなり入っていけるような世界観を、出せたんじゃないかなと思いますね。耳が受ける第一印象というのかな。勝負できるなと思いましたね。ミスチルと勝負ってことじゃなく、今のシーンで普通に勝負できる作品になったんじゃないかなと、すごく感じてますけどね。

■14歳感がずーっと残ってる気がする(加藤)

ーー7曲目の「永遠の14歳」という曲が僕はとても好きなんですけども。加藤さんの中に、作詞家的な視点で書いている部分と、自分の本音で書いている部分があるとしたら、この曲はどちらでしょうか。

加藤:これはけっこうごちゃ混ぜになってますよね。〈カガミよ カガミ〉で歌い出すところはちょっと作家っぽいんだけど、だんだんだんだん本音が出て来る感じですよね。〈蹴り放題 ガードレールも あるぜ〉とか、作家っぽくないですよ。自分がこんな歳になっても、うまくいかない日があるとか、ものに八つ当たりしたりとか。そういう気持ちになるじゃないですか。だから、14歳って言ってるけど、今の自分を歌ってる、本音で。

ーーその頃から変わってない?

加藤:このロックンロールの仕事は……まあラッキーでもあるけど、変われないよね?

古市:うん。

加藤:14歳の時にロックを聴いて、ビートルズ(The Beatles)とかに夢中になってた、あの「ウワーッ!」ていう感じはいまだにありますよ。それを仕事にしたから、他の仕事をしてる人よりも、14歳感がずーっと残ってる気がする。

古市:まったくそうですね。たぶん、何も変わってないと思いますよ。もちろん大人だからね、税金も払えば子供も育てるんですけど、根本にあるものは失ってない気がしますよね。

加藤:その時思ってた気持ちがロックだよなって、思ってんですよ。いつも思うんですけど、自分の好きなバンドがあるじゃないですか。たとえば僕の場合だったらThe Whoってバンドだったり、The Kinksってバンドだったり。彼らがリリースするアルバムが……彼らのやってることがナチュラルなんだと思うんですけど、歳と共に、どんどん重厚なものになったり、渋いものになったり。でも僕は、彼らに出会った時の……ポール・ウェラーだったらThe Jamをやってた時の、あんな曲を何度も歌ってほしいですよ。フーの新曲が75歳だったとしても、彼らが25歳の時に歌ってたような曲を歌ってほしいんですよ、今でも。それを逆に自分に当てはめるんですよ。こんなに長くやってるけど、きっとファンも俺と同じようなことを思ってるよね、1stアルバム、2ndアルバムをずっと作っててほしいよね、って。

■俺の中のモッズはロックでしかないんですよ(加藤)

ーー映画『THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM~』の中で加藤さんがおっしゃっていたことで、モッズってだんだんR&Bの方向にシフトしていく、でも俺たちはそっちに行かなかったから通っぽい連中からはバカにされていた、と。まさにポール・ウェラーですよね。The Jam後期、The Style Councilと、R&B、ソウルな方向に行く。「ああ、そういうふうに行っちゃうんだあ」と当時も思ってました?

加藤:僕はね。

古市:いや、僕は全然(笑)。むしろジャム後期からスタイル・カウンシルのあたりが一番好きだから。

加藤:映画の中でも語っていますけど、モッズが復活した時にネオモッズっていうムーブメントが生まれたんです。1979年の話になるんですけど、1977年にパンクが出て来て、新しい息吹が出て来る中でのモッズのリバイバルですから。60年代のモッズとはちょっと背景が違うんですよ。パンクロックの影響を多大に受けたモッズなんですよ、ネオモッズって。そこがリアルタイムだから、俺の中のモッズはロックでしかないんですよ。ソウルでもR&Bでもない。それは過去にあったモッズの連中が聴いていたもので。俺はネオモッズなんで、それしかモッズじゃないんですよ。俺の4つ下のコータローくんは、もっと寛容に、スタイル・カウンシルの、R&Bっぽいものとかソウルっぽいものも受け入れられるんですよ。でもひとつ言わせてもらうと、ポール・ウェラーも実はジャムをやりながらモッズを研究してR&Bの方に行くからね。彼だって最初からR&Bとかソウルをよく知ってたわけじゃない。そうだったらジャムなんかやってないと思うよ。

古市:ジャムは、最初はビートルズのコピーみたいなのをやってて、ピストルズ(Sex Pistols)を観てああなったんでしょ。

加藤:そうそう。その頃モッズをやる連中は、パンクじゃなきゃダメだったの。パンク・モッズがいちばんかっこよかった。俺はその洗礼を受けたから永遠にそこですよ。ジャムの来日を観に行って、モッズになるわけだから。スタイル・カウンシルでいきなりポール・ウェラーがギターまで置いちゃって、スタンドボーカルになって。本当に信じられないよ、魂売ったのかよ、短パンまで穿きやがってって感じだよ(笑)。

ーーでも変わっていく方が、音楽家としては創作しやすいかもしれないですよね。

加藤:そうだと思いますよ。だって、同じようなスタイルで新しく曲を書いて「変わったね」って思われるよりも、サウンドの方向性が変わった方が、「なんかあいつら進化してんじゃねえ?」みたいに思われるよね?

古市:ポール・ウェラーが偉かったのは、ヒップだったよね。目のつけどころが早くて。

加藤:そうだね。彼はスタイル・カウンシルをやって、それを時代の先端のものとして流行らせたから。彼のやってることの方が偉いし、彼のやってることの方が本当は全然モッズ道なんだよ。でも俺みたいに、最初に出会ったモッズの一発目のパンチがパンクロックだったりすると、永遠にそいつが一番かっこよく見えちゃう、というだけの話で。

ーーそうやって同じ音楽スタイルで、最初に受けた衝撃に戻ろうとしながら30年以上続けているのって、コレクターズとヒロト&マーシー(甲本ヒロトと真島昌利)くらいですよね。なぜそれが可能なんでしょうか? と聞きたかったんですけど、毎回相当苦しんでるという。

加藤:めっちゃめちゃ苦しいですよ! どんどん苦しくなるし。次のアルバムはもっと苦しくなりますよ。

古市:でも、今のリーダーの話と近いことで言えば、俺もやっぱピストルズで本気になった男だから。永久に「アナーキー・イン・ザ・UK」みたいなギターを弾いていたいんですよ、本当は。いちばん得意なのはそこだと思うし、やっぱその気分は、消そうにも絶対消えないね。明日からエリック・クラプトン専門になりました、っていうふうにはいけない。

■武道館で客席を眺めて「ああ、ちょうどいいなあ」と思った(加藤)

ーー日本武道館からここまでの1年半って、早かったですか。

加藤:早いですよ。武道館の準備を始めてから以降が、もう全部早かった。

古市:準備から考えると、もう3年だもんね。

加藤:だからこの3年ぐらいは本当に早いし、本当に忙しいし。どれもこれもしくじれない感じがすごくあって。映画もしくじれないし、その前は武道館もしくじれなかったし、もちろんこのニューアルバムもしくじれないし、前作『Roll Up The Collectors』の時もそうだったから。精神的にはわりと……キツいっちゃキツいのかなあ。でもなんかもう、そのキツさにも慣れちゃってるっていう。

古市:そうだと思うよ。

加藤:なんて言ったらいいのかなあ……キツイのは楽しくはないよ、決して。

ーー(笑)。

加藤:全然楽しくはないんだけど、やらなきゃ前に進めないし。なんとも言えない気持ちで3年ぐらい過ごしてる気がするなあ。

ーー僕も日本武道館公演を観たんですけど、それ以外のベテランバンドが初めてやった武道館にも行ってるんですね。フラワーカンパニーズとか、Theピーズとか。でもコレクターズの武道館が違ったのは、ライブが終わった時に「達成感が全然ない! 一区切りついた感じがしない!」という。

古市:まあ、次のツアーとか、今やってるクアトロ(渋谷クラブクアトロ)のマンスリーライブとか、もう決まってましたからね。

加藤:あと、不思議なことに、武道館に立った時に自分が熱望して来たところに今立ってる、やっとここまで来たみたいなのを、全然、俺は感じなかったんですよ。むしろ客席を眺めて「あ、ちょうどいいなあ」と思った。「2065」とか歌ってて、「ああ、これぐらいの場所じゃないと、この曲に合わないよ」とか、「このハコのキャパ、ちょうどいい」と思ったの。

ーーMCの第一声が「やっと身の丈に合ったところでやれたぜ」でしたけどーー。

加藤:いや、ほんとに! ほんとに、不思議とそう思ったの。コレクターズって、これぐらいないと伝わんないよなと思った。

古市:ライブハウスでも、実は武道館と同じ内容のステージをやってるわけですよ。そういうところでやってて、「もっとスケールほしいよな」っていう話をいつもしてたわけ。それをやれて、ほんとに「ちょうどいいな」って思えたし。終わった時も、「またやれたらいいな」って。

加藤:「やったね、ここまでがんばったね」みたいなのは、全然ーー。

古市:なかった。終わって速攻帰ったしね。

加藤:俺なんかベスパで来てて、雨降って来たから合羽着て帰ったんだから(笑)。

古市:打ち上げもやんないでね。

加藤:とは言え、武道館はプランニングから考えると3年ぐらいかかったわけだから。終わったあとは、ちょっとロスみたいなのはありましたよ。でかい目標終わっちゃって、次どこにセッティングしようかな、みたいなのは多少はあったけど。

ーーそういう大きな目標は常に必要?

加藤:絶対必要。おもしろがるために、自分たちが。だから、「東京ドーム2Daysやりましょう」とか言わないと。バンドが「小さいライブハウスでも食えるんだったら、もうこれでいいじゃん」みたいになっちゃうから。

古市:今も、まだ確定ではないけど、目標はあるんですよ。プランはある。

加藤:でかい目標がね。それはやっていかなきゃダメだと思う、バンドは。

■まあ結果、新宿ジャムは、青春だったってことですよね(古市)

ーーちなみに映画の方は、いつ頃から動き始めたんでしょうか。

加藤:ええと、武道館が終わってーー。

古市:半年ぐらい経った頃かな。

加藤:そう、スタッフのひとりが「いろんなバンドが今、映画を作ってる」と。「コレクターズも歴史長いし、おもしろいと思うんですよね」って突然言い出したんですよ。

古市:ドキュメンタリーね。

加藤:俺たちにはそういうプランがまったくなかったけど、「あ、いいかもなあ」と思って。それから「何を撮る?」って。映画って言っても、武道館は終わっちゃってるし、30周年イヤーも終わりつつあるし。さてさて、タイミング的にどうなんだろう? みたいに思ったんだけど、結果、武道館までの道みたいなのを撮るより、この方がよかったね。

古市:絶対よかったと思う。

ーー新宿ジャムが閉店するというのは、その時期に知ったんですか?

加藤:いや、もっと前から聞いていて。まあ長くやったところだから、閉まるんだったら1日ぐらいやりたいよね、って。そしたら「12月24日しか空いてません」って言われて「じゃあとりあえず押さえとこうよ」って。それは決まってたのよ、映画の話の前から。ところが映画の話が盛り上がって来て、「じゃあ何を撮ろう?」っていう時に、これから起こることは、ジャムが閉まる、ジャムは東京モッズを生み落とした場所、あそこで初めてワンマンをやった、1986年のデビュー前の映像が残っている、これはもう「さよならジャム」で撮るしかないんじゃないか? 東京にモッズがいたんだっていうことをみんなに教えた方がいいんじゃないか? っていうふうに、話が進んで行ったんです。

ーーいい映画になりましたよね。川口潤監督は、コレクターズにそんなに詳しくなかったそうですけどもーー。

加藤:詳しくないからよかったの。コレクターズのこともよく知らないし、モッズに関してもそんなに知らない、でもロックが好き、っていう人が作ったから。モッズとかよく知ってる人だったら、ディテールとかにこだわりすぎて、本当にモッズ映画を作ろうとするだろうし。コレクターズが好きだったら、もっと苦労話的なものを作りたがるだろうし。でも客観的に「バンドとしてここがおもしろいんじゃない?」っていうところを、つまんでくっつけてくれた感じがして。それがテンポよく観れる映画になった理由じゃないかな。

ーージャムが閉まるっていうのに、加藤さんたち、全然ジャムを持ち上げてなくて、「新宿ロフトに出られないからジャムに行ったんだ」とか平気で言っていて(笑)。でも、確かにそうだよな、ジャムって老舗の中では敷居が低かったよな、と思って。

加藤:でもおもしろいもんで、そこに縛られて、そこでライブをやって、そこから出て来たっていうのは事実だからね。

古市:まあ結果、青春だったってことですよね。

加藤:そうそう。望んでないんだけど、結果、そうなっちゃったという。

古市:まあ、そんなもんじゃん。

■フレッド・ペリーよりも「SUPER DRY」の方が、自分の中で今モッズ(加藤)

ーーあと映画の中に、ファッションに対してすごくこだわっているシーンが何度も出て来ますよね。モッズがそういうものであることを知らない人が観ると、新鮮だろうなあと。

加藤:まあモッズになった瞬間から、洋服は大事で。もちろんこだわりもありますし。映画の時に、1986年の映像が残ってましたから、同じファッションで31年後にステージに立ってるっていうのがおもしろいよな、じゃあ黒のスーツって思ったんだけど、もう持ってなくて。どうせだったらモッズショップのスーツがいいよなと思って、買いに行って。

ーー奈良にあるお店まで行くシーンがありますよね。

加藤:アルバムのジャケットで僕が着ているパーカー、「SUPER DRY」っていうイギリスのメーカーなんですよ。ところが日本ではアサヒビールが「SUPER DRY」っていう商標を持ってるんで、入って来ないんです。輸入できない。で、俺の中で、モッズってイギリスの文化ですから。日本に入って来ないイギリスの「SUPER DRY」っていうのは、俺の中で今はめっちゃモッズを感じてるんですよ。

古市:はははは。うん。

加藤:香港でもアメリカでも売ってるんだけど、日本には入って来ないんです。フレッド・ペリーを着てるよりも、「SUPER DRY」を着てる方が、自分の中で今はモッズ気分なんですよ。そういうこだわりは永遠に持ってる。中国人とかアメリカ人とかいっぱい着てるんだけどね(笑)。でも、日本人でそれを着てるっていうのが、わかりにくいけど俺の中でのモッズなんです。(兵庫慎司)

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