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諏訪敦彦や深田晃司がコロナ禍の支援活動を報告、ミニシアターと映画業界の今後語る

ナタリー

20/7/19(日) 0:37

ミニシアターを救え!、SAVE the CINEMA、ミニシアター・エイド基金、SAVE the CINEMA movement合同報告会の様子。諏訪敦彦(中央左)、⻄原孝至(中央右)、馬奈木厳太郎(右)。

ミニシアターを救え!、SAVE the CINEMA、ミニシアター・エイド基金、SAVE the CINEMA movementの合同報告会が7月18日に東京・アレイホールで行われた。

新型コロナウイルスの影響を受け、ミニシアターを救うためスタートしたSAVE the CINEMA。同時期にミニシアター・エイド基金も立ち上げられた。3カ月の活動を振り返るため、このたび合同報告会が開催される運びとなった。

SAVE the CINEMA呼びかけ人の1人である諏訪敦彦は「政府による補償がない中、ミニシアターが閉館するしかないという悲鳴が聞こえてきた。映画の多様性を守ってきたミニシアターが窮状に置かれた現状を知って、Twitterであてもなく呼びかけたところリアクションがあったんです。バラバラにやるのではなく、大きな流れになったほうがよいのではないかということでまとまることになった」と、プロジェクトが連携した経緯を明かす。

署名活動の成果を報告したのは西原孝至。「最初の3日で3万筆、6日間で6万6000筆も集まりました。1人ひとりの思いが可視化されたということが成果でした」と振り返る。弁護士の馬奈木厳太郎は「『We Need Culture』という活動を通して映画、演劇、音楽の3つの団体が一緒になって文化芸術復興基金創設へ向けたキャンペーンに取り組みました。これは今までになかったことではないかと思います。一緒にやらないといけないという切迫感がありました」と語り、「文化芸術などに対して2次補正予算案で500億円以上の予算が付いた。また多くの議員がこの問題を質疑の中で取り上げてくれました。成果だと思っています」と口にした。一般社団法人コミュニティシネマセンター事務局長の岩崎ゆう子は「予算が出たことは大きな成果ではありますが、第一歩。コロナの長期化が懸念される中、劇場から足が遠のいている観客もいます。どのように映画の大切さを伝えていくか、観客の心をつなぎとめていくのか、映画館の人たちは考えています。引き続きご支援をお願いいたします」と真摯に呼びかける。

ミニシアター・エイド基金の活動報告をしたのは深田晃司とMotionGallery代表・大高健志。深田は「いろいろな劇場を巡る中で、ミニシアターで働いている人は人生を犠牲にしてまで劇場を守っているということを知っていました。行政の支援では劇場を守れない。スピーディーに支援を募る方法はクラウドファンディングだと思ったんです」とプロジェクトを立ち上げた経緯を説明する。続けて「ミニシアターの定義が明確ではない。自己申告でミニシアターだと認識している劇場はすべて受け入れました。難しかったのは成人映画館です。我々がやっているのは災害時の避難所のようなものですから、成人映画館と一般映画館を分けるという考えはありませんでした。ただ成人映画館は普段メールを使っていないので、片っ端から電話をかけました」と明かす。大高は「東日本大震災の際にクラウドファンディングは広がったと言われています。災害支援に強いと言われているのがクラウドファンディングです。しかし災害は被災者と被災していない人がいる一方、コロナはすべての人が苦しい状況です。そんな中、ミニシアターに行きたいという気持ちを集めるために、リターンを設定していきました」と思い返した。

MotionGalleryの最高支援金額が7000万だったことに触れつつ深田は「総額3億3000万以上の支援が寄せられました。コレクターの数は2万9926人。これ以外にもTポイントを利用して支援してくださった方が900人以上います。結果的には3万人以上の方から支援をいただきました」と感謝を伝え、「103団体へ分配しています。最低でも250万の金額です」と報告。そして大高は「あくまでも短期的な取り組みで、バンドエイド的なもの。これからは政治に働きかけていかなければならないです」と力を込めて語る。

報告会中盤に登場したのは映画プロデューサーの雨無麻友子。SAVE the CINEMA movementの活動に関して彼女は「ミニシアターが誰かの心の拠りどころとして存続し、賑わってほしいとの思いから上村奈帆監督や、枝優花監督など若手制作者を中心に活動しています」と紹介し、「全国各地のミニシアターを紹介するため、マップを作成しています。またスタンプラリーや上映企画などのイベントを実施予定です。オンライン、オフラインともにミニシアターをもっと好きになってもらえるよう動いていければ」と話した。

活動報告が終了したところで「ミニシアターと映画界のこれから」をテーマにパネルディスカッションがスタート。井上淳一が司会を務め、深田、舩橋淳、太秦の小林三四郎、東京・ユーロスペースの支配人である北條誠人が出席した。「心から感謝申し上げます」と切り出したのは北條。「支援の動きがなければ経済的にダメになる前に、心が先に腐ってしまったと思います」と吐露し、「上映が終わるたびに換気をして、座った席を消毒しています。上映中にはエレベーターやドアノブの消毒をしなければいけない。スタッフの身体的な負担はある。さらに電車で通勤する恐怖もあります。スタッフのストレスは溜まっていますし、これからも溜まっていくと思います」と述懐した。小林は「原石を磨いて出す場所である映画館がなくなると、結果的に映画に関わるWeb媒体や雑誌、新聞も失われる。今は劇場の客数も半分になってしまっているので、作品がスモールパッケージになってしまうことを危惧しています」とコメントする。

「文化庁と経済産業省と話をしてびっくりしたのが、まずミニシアターって何?というところから始まることです」と明かす舩橋は、「文化庁の人に、ミニシアターとお付き合いがないと言われてショッキングでした。映画祭は支援しているけれど、箱として助成されたことがなかった。『YouTubeに成果物を投稿したら助成しますよ』と言われましたが、アーティストの成果物の枠組みを強制しないでほしい。我々はミニシアターが毎日やっている業務、日々の積み重ねに対して補助してほしいと訴えました。結果として劇場の本質的な部分に補助が出ることになったのは、ポジティブに考えていいのではと思っています」と振り返る。「助成金は非常に使いづらい」と指摘するのは深田。「コロナ禍における助成金というのは避難所であるべきです。死んでしまうから逃げ込む場所。でも、一芸を見せたら入れてあげますよという状況です。彼らに悪意があるわけではなく、それが省庁の常識。その考えが非常識であるということを提示してこなかったことが大きな問題なんです」と続ける。そして「映画というのは文化であるという認識が伝わっていない。娯楽産業だと捉えられているんです。だから、日本映画の多様性をきちんと理解している専門的で公的な映画団体が必要です」と団体設立の重要性を訴えた。北条は「ミニシアターの弱点を洗い出してこれからの10年を考えていかなければいけない。そして長所を伸ばしていく。担当省庁と勉強会をして、長期的な支援のデザインをする。ミニシアターで働きたいという若い人を支えていく必要があります。新しい労働環境の構築が、僕にとってのフェイズ2ですね」と今後について語る。

イベント終盤には記者から「大手の配給会社からの支援はあったのか?」と質問が飛ぶ場面も。井上は「100%ありませんでした」と笑い、「日本映画製作者連盟と一緒になってやろうとしたんですが、頓挫しました」と返答。諏訪は「メジャーの会社とも問題意識を共有しなければならない。業界はまとまっていかなければ」と、深田も「大手映画会社とコミュニケーションを取らなければいけない」と問題点を指摘した。

また一般の映画ファンより「映画ファンにできることはあるか?」という質問が寄せられると、北条は「今の状況で積極的に映画館に来てほしいというのは言いづらいです」と苦しい胸の内を明かす。それを受け、井上は「映画館に来てくださいと言えない、イベントも告知できない。映画館に行くという行為を忘れないでほしいと切に思っています」と言葉に力を込め、深田は「選挙で政権を変えてください。今より悪くなることはないです」と思いを口にした。

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