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三浦大知、10年代ダンスミュージックとしての楽曲の魅力とは DJ視点で聴かせる『NON STOP DJ MIX』を分析

リアルサウンド

20/4/4(土) 6:00

 “2010年代の三浦大知の総括”というテーマの下、制作されたDJミックス企画盤『DJ DAISHIZEN Presents 三浦大知 NON STOP DJ MIX Vol.2』が3月18日にリリースされた。

(関連:三浦大知『DJ DAISHIZEN Presents 三浦大知 NON STOP DJ MIX Vol.2』視聴はこちら

 本作は三浦大知のライブをDJとしてバックアップするほか、ライブのマニピュレーターも務めるDJ DAISHIZENによるDJミックス企画の第2弾だ。このDJミックスには、フューチャーベース、ダブステップ、EDM、トラップなどテン年代にダンス/クラブミュージックのトレンドとしてだけでなく、近年のポップスヒットにも影響を及ぼしたジャンルが幅広く取り入れられており、先述の“2010年代の三浦大知の総括”の言葉どおり、ここ10年のダンスミュージックのトレンドともシンクロしながら三浦大知がテン年代を駆け抜けたことを感じ取れる作品になっている。ダンスミュージック視点で解釈した“2010年代の三浦大知ベスト盤”といっても過言では内容だ。

 音楽映画のクラシック『ハイ・フィデリティ』で「聴き手のテンションをアゲないといけないが、アゲすぎてもいけない」と主人公が語るように“テープ作り”の最初の1曲目の選曲は非常に重要だが、その基準にあわせて考えると、本作の冒頭を飾る「EXCITE」はまさに100点の選曲だろう。

 国内クラブシーンの若き旗手の1人、Carpainterが制作に参加した同曲は、本作では1分ほどプレイされるのだが、その後半はフックのパートに焦点を定め、疾走するビートを含めて聴き手の耳を捉えるのに効果的な聴かせ方になっている。そのためこれをきっかけに三浦大知の楽曲に耳を傾けようという気持ちが再生前に増して膨らむのだ。

 そういったリスナーの関心を引き寄せる“掴み”は実にDJ的であり、続く「Baby Just Time」から「Black Hole」までのフューチャーベース、ダブステップ系楽曲で構成されるブロックにグッと引き込む流れを作り出す。そのテンションを保ちつつ、プレイされるのはノンビートの「all converge on “the one”」なのだが、この曲はちょっとした箸休めというよりは一旦落ち着かせることで、次の展開のワクワク感を煽る、ドロップ前の最初のブレイク的な役割を果たしている。

 そして「MAKE US DO」までのゆるやかなテンポで聴かせるバラード系ブロックを通過し、ジャジーな「comrade feat. 三浦大知」、「普通の今夜のことを」を中心にブラックミュージック色が強い楽曲で構成される中盤が展開されるがこのブロックのハイライトはアンセミックな’90sポップ風の「Neon Dive」からプリンスを思わせる’80s風ファンク「DIVE!」へとつながる流れだ。このブロックではオーセンティックなダンスポップスを歌いこなす三浦大知のシンガーとしての魅力を大いに感じられるパートになっている。

 続いてSeihoが制作に参加し、“国産ダンスミュージック”と称された「Cry & Fight」から始まる後半ではMIYAVIとの「Dancing With My Fingers」、疾走するブレイクビーツが印象的な「(RE)PLAY」、EDM系の「Corner」、「誰もがダンサー」などダンサブルな曲が多いのが特徴で、ピークタイム仕様の“エネルギッシュに踊れる三浦大知”楽曲を軸に選曲し、DJプレイ的にはいわゆる“アゲ”なムード作りが行われている印象を受ける。

 そういった流れの中で本作はフィナーレに向かって加速していくのだが、注目したいのは、大団円を迎える前に三浦にとって「実験的」な作品となった『球体』収録の「綴化」が選曲されている点だ。実験的という意味でいえば、同曲ではトラップ由来の3連譜を取り入れた三浦のボーカルが目立つが、個人的には曲後半のOneohtrix Point Neverを彷彿させるエレクトロニクスサウンドにこそ実験性を感じる。そのためこのタイミングでの同曲の選曲はDJ DAISHIZENのセンスが光る通好みのものであり、本作における絶妙なスパイスになっている。

 三浦大知は以前、「自分には「歌って踊る」スタイルがあって、それがあればどんな曲でも自分らしいダンスミュージックになる」(参照:CINRA)と語っていたが、このようにしてDJ視点から本作を振り返っていくとテン年代に発表された三浦大知作品がいかにダンスフロアで機能する“ダンスミュージック”であったかがよくわかる。

 またDJ視点でいえば、本作では例えば「Darkroom」と「Breathless」、「DIVE!」と「全速力」のようにサウンド面だけでなく、曲のタイトルも言葉遊び的にイメージの面で“繋がれていく”かのように選曲されていることは興味深い。これは選曲にメッセージ性を持たせる“テープ作り”の美学にも通じる部分であり、そこからは数多の三浦大知楽曲の中からそういった曲を選び抜くDJ DAISHIZENの非凡な選曲センスが感じとれる。こういった要素が読み取れること“DJミックス作品”である本作の魅力のひとつといえるだろう。(Jun Fukunaga)

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