Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

嵐、『カイト』通算54作目のチャート首位獲得 社会性とパーソナルな側面が交錯する、新たな表情のシングルに

リアルサウンド

20/8/8(土) 18:00

参考:2020年8月10日付週間シングルランキング(2020年7月27日~2020年8月2日)

 2020年12月31日に活動休止を予定している嵐。その嵐と米津玄師という、現在において最大級のコラボレーションが行われているシングルが『カイト』です。2020年8月10日付のオリコン週間シングルランキングで1位を獲得し、シングル通算1位獲得数は54作に更新されました。コロナ禍にも関わらず、推定売上枚数が91万枚というのも驚くべき数字です。

 「カイト」は、2019年12月31日の『第70回NHK紅白歌合戦』で、「NHK2020ソング」として初披露された楽曲です。NHKのYouTubeチャンネルで公開されている、嵐が国立競技場で歌う動画を見ていると、「失われた2020年」の世界線を見ているかのような感覚にも陥ります。オリンピックの開催を前提とした映像なのですから。

NHK2020ソング 「カイト」 スペシャルムービー

 米津玄師が作詞・作曲・編曲を担当した「カイト」では、1番のBメロの〈母は言った「泣かないで」と/父は言った「逃げていい」と〉という箇所に思わずうなりました。歌詞とメロディの両方から一気に押し寄せる抒情性は、「パプリカ」のBメロを連想させるのに充分です。まさに米津玄師という作家の職人芸。そして、嵐のボーカルも「カイト」に呼応して情感が溢れるものになっています。

 さらに響き渡るのが、これまでも米津玄師の楽曲の編曲に参加してきた坂東祐大が手がけたオーケストラ。クラシカルにして、実に格調高い楽曲です。

 通常盤カップリングの「Journey to Harmony」もまた2019年に発表されていた楽曲です。2019年11月9日に開催された「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」では、菅野よう子の作曲による組曲「Ray of Water」が披露されましたが、その第三楽章に当たるのが、嵐が歌唱を担当した「Journey to Harmony」です。

 雄大なオーケストラとプログラミングが交錯するドラマティックなサウンドプロダクションは、菅野よう子ならではのもの。一方で、岡田惠和が作詞した歌詞は、「君が代」を意識したものと推察されます。それゆえに単純なラブソングとは趣きがかなり異なり、歌唱の難易度が高そうなのですが、それでも大きく変化していくメロディやサウンドに寄り添うかのように、嵐は繊細に歌いあげています。

日テレNEWS【国民祭典 奉祝曲Ray of Waterフルバージョン】

 他のカップリングも聴いていきましょう。「Sounds of Joy」と「僕らの日々」は、これまでも嵐の楽曲を手がけてきた作家陣が関わった作品です。「Sounds of Joy」は、サマーチューンかと思うほど爽快。「僕らの日々」では、軽やかに〈キミと僕〉の過去と現在と未来が歌われます。

 『カイト』は、いわば社会の方を向いた嵐と、パーソナルな嵐の両面が収録されたシングル。それゆえに前者に当たる「カイト」と「Journey to Harmony」では、嵐の新鮮な一面を見ることができるのです。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む