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マイケル・キートン登場、スパイダーマンが“人殺し”……? 『モービウス』予告編の謎が意味すること

リアルサウンド

20/1/20(月) 10:00

 先日解禁になった映画『モービウス』の予告編がアメコミ映画ファンの中でちょっとした“事件”になりました。一時、ツイッターのトレンドでも“モービウス”という言葉が上位にくるぐらいでした。一体、この予告編のなにがこれだけの騒ぎを巻き起こしたのでしょうか?

参考:予告編はこちらから

 まずアメコミについてそんなに詳しくないという方が『モービウス』の予告編を見たら、普通に面白そうと思うでしょう。ちょっと不気味な怪人が登場するホラー映画かなと。主演は日本でもファンの多いジャレッド・レト。このモービウスはスパイダーマンのコミックに登場するヴィランであり、彼を主人公にした映画なのです。スパイダーマンのコミックには1971年に登場。ある天才科学者が自身の治療のために吸血コウモリをベースにした特殊な血清を使ったら、その副作用で吸血鬼のような怪人になってしまったという設定。つまり科学が生んだヴァンパイアなのです。予告編がホラーっぽいのはそのため。血を求めて人を襲うわけですが、根っからの極悪人というわけでもない。したがってモービウスはある種のダーク・ヒーローとしても活躍するわけです。モービウスがスパイダーマン世界の住人である以上、本作はスパイダーマン系の映画というわけですが、実はスパイダーマンというのはアメコミ映画ビジネスにおいて非常にややこしいコンテンツなのですね。

 これをまず整理すると

・まずスパイダーマンは、アベンジャーズやアイアンマンと同じマーベル・コミックのキャラ。したがってコミックの方ではスパイダーマンとアベンジャーズは共演しているし、モービウスとドクター・ストレンジが戦ったこともあります。

・ところがスパイダーマンの映画化権はマーベルがディズニー傘下になる前にソニー・ピクチャーズに渡していました。なのでソニー主導のスパイダーマン映画とディズニーによる、アベンジャーズを核としたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は互いに混じることなかったのです。

・しかし、やはりスパイダーマンとアベンジャーズが映画でも共演するところを観たいとファンは思うわけで、ここでソニーとディズニーが話し合い、スパイダーマンはソニー映画に“籍”をおいたまま、MCUにも出られるようになりました。

・具体的には2002年からのトビー・マグワイヤ主演のスパイダーマン3作、2012年からのアンドリュー・ガーフィールド主演のアメイジング・スパイダーマン2作は“MCUとは関係ないスパイダーマン映画”でしたが、トム・ホランドが演じるスパイダーマン映画はMCUの中のお話と位置付けられ、また『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』等のMCU映画にスパイダーマンはヒーローの一人として参加しているわけです。

・しかしながらソニーは、MCUに頼らずスパイダーマンの映画を作る権利は相変わらず持っているし、またスパイダーマンのコミックに紐づくキャラの映画化権も有しています。この権利を使って作ったのがアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』であり、スパイダーマンのライバルともいうべきヴィランを主人公にした『ヴェノム』です。両作とも“MCUではない”世界観の映画です。

・ここでさらにややこしい事態が起こります。昨年夏、ソニーとディズニーの間で今後のスパイダーマンのあり方について行き違いが生じ、ソニーはMCUからスパイダーマンを引き上げるとしたのです。

・ソニーは自社が映画化権を保有するスパイダーマン系のキャラを軸とした、ソニー版マーベル・ユニバースを作ることを考えます。『ヴェノム』はまさにその先駆けとなる作品になりました。

・しかし最終的にソニーとディズニーは再び手を結ぶことになりました。しかもトム・ホランドのスパイダーマンは「MCUの住人」でもあるし「ソニー版マーベル・ユニバースの作品にも出られる」ということになったそうなのです。

 さて、ここからやっと本題です(笑)。

 というわけで『モービウス』は『ヴェノム』に続く、“MCUとはリンクしない、ソニー版マーベル・ユニバース”の作品になると言われていました。ところがです! この『モービウス』には、そうしたファンの憶測を超えるサプライズが2つあったのです。
1.街の壁に描かれたスパイダーマンの絵の上にMURDERER(人殺し)と落書きされている
2.予告編の最後にマイケル・キートンが登場する

 なぜ、この2つの要素が物議をかもしたのか?

 スパイダーマンがMURDERER(人殺し)と非難されるとしたら、それは昨夏公開された『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のラストにつながるものです。またマイケル・キートンは『スパイダーマン:ホーム・カミング』のヴィラン、ヴァルチャーを演じていました。そして『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』と『スパイダーマン:ホーム・カミング』は、トム・ホランド版スパイダーマンですから、両方ともMCUの中のお話なのです。そう! こうしたことから、ひょっとして『モービウス』はMCUの1つとして作られるのでは? とファンは騒いだわけです。

 ここで「なーんだ、『モービウス』はMCUの1つなんだ」と考えればすっきりするのですが、そう簡単にはいきません(笑)。

 まず『モービウス』がMCUだとすると、明らかにMCUとは別路線をいっている「ヴェノム」との関係は? 『ヴェノム』はこの秋続編が封切られます。多くのファンは『モービウス』と『ヴェノム』がつながって“MCUとはリンクしない、ソニー版マーベル・ユニバース”が作られると思っていたのですから。また街の壁に描かれたスパイダーマンの姿は、いまのトム・ホランド版ではなくトビー・マグワイヤ版のスパイダーマンを思わせます。なぜ? というわけで、ツイッターのトレンド入りするぐらい、みな『モービウス』の話題でもちきりとなったのです。

 これはもう実際『モービウス』の映画を観るか、あるいはその前に『ヴェノム』続編の予告編をみることができるか、はたまたトム・ホランドくんが口をすべらせてくれるのを待つか、しかないのですが……以下、僕の推理というか妄想です。

 MCUのスパイダーマン世界とこの『モービウス』の世界はパラレル・ワールド(まさにスパイダーバース)の関係にあり、この『モービウス』の世界にもスパイダーマンがいてヴァルチャーがいる。なので『モービウス』の予告に出てきたヴァルチャーは、MCU版=「ファー・フロム・ホーム」のヴァルチャーの別次元版だが、顔形は同じなのでマイケル・キートンが演じている。

 僕が、こういうパラレル・ワールド説をとる理由は、MCUの「ファー・フロム・ホーム」にトビー版『スパイダーマン』の重要キャラだったデイリー・ビーグルのジェイムソンが登場。しかもトビー版と同様J.K.シモンズが演じていたことです。MCUとトビー版は同じ世界観ではないですから、このJ.K.シモンズ=ジェイムソンについてはパラレル・ワールドで解釈しないと成立しません。

 つまりマイケル・キートンのヴァルチャーは、このJ.K.シモンズのジェイムソン的発想でキャスティングされているだと思います。そしてこの『モービウス』の世界の、トビー版の衣装の(?)スパイダーマンは何らかの事件のせいで、殺人の疑いをかけられている。したがって将来的に、トビー版の衣装を着たトム・ホランドが登場。そして『モービウス』の世界は『ヴェノム』とつながっているから、いつか、トビー版のコスチュームを着た“この世界の”トム・ホランドのスパイダーマンが、

トム・ハーディのヴェノム
ウッディ・ハレルソンのカーネイジ(『ヴェノム2』に登場との噂)
ジャレッド・レトのモービウス
マイケル・キートンの“この世界の”ヴァルチャー

 と三つ巴じゃなく五つ巴のバトルを繰り広げる! どうでしょうか? ワクワクしませんか?

 くりかえしになりますが、『モービウス』の予告編はとてもクールで、こんなややこしいことにとらわれる必要はないのですが、こういう風にあーだ、こーだと考えるのもまた楽しいですよね。個人的には、ジャレッド・レトがコウモリに囲まれるシーンがツボでした。彼は『スーサイド・スクワッド』でバットマンと戦うジョーカーを演じていました。その彼が、今度はコウモリ側のキャラ。不思議な縁を感じますね。 (文=杉山すぴ豊)

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