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いま、最高の一本に出会える

「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『IDOL-あゝ無情-』

リアルサウンド

19/11/2(土) 14:00

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、どうして巨人のコーチになってしまったのかと問いかけたい、石井琢朗選手を永遠のアイドルとする石井が『IDOL-あゝ無情-』をプッシュします。

●『IDOL-あゝ無情-』
 アイドルグループAKB48のドキュメンタリー映画『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』(2012)が公開されたとき、「これまでのアイドル界では決して見せなかったアイドルの業が分かる」といった絶賛の声が寄せられました。確かに、ファンたちが熱狂するライブの裏側では、当時のセンターであった前田敦子さんが倒れる寸前だったり、過呼吸になるメンバーが続出するなど、華やかさとは真逆とも言える辛い世界が映し出されていたのです。

 その後も切り口を変えながらアイドルの裏側に迫るドキュメンタリー映画は作られてきましたが、そのどれよりも「観ていて辛い(だから面白い)」と思わずにはいられないのが、本作『IDOL-あゝ無情-』です。芸能界にも熱狂的なファンを獲得し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いとなっているアイドルグループBiSHが所属するWACK。渡辺淳之介氏が立ち上げた芸能事務所は、BiSHのほか、BiS、GANG PARADE、EMPiRE、WAggと次々と人気グループを送り出しています。正直に申しますと、私は各グループの楽曲や、メンバーのことはほとんど知らず、最近ようやくBiSHに惹かれ始めた程度の、いわばWACK初心者です。それでも、本作を大いに楽しんだばかりではなく、いまWACKアイドルがここまで世に求められる理由も良く分かる、そんな一作に仕上がっていました。

 岩淵弘樹監督が手がけた前作『世界でいちばん悲しいオーディション』と同じく、今回もWACKが毎年開催している毎年合宿形式による1週間のオーディションに密着し、そこで起きたものをありのままに捉えています。前作では、アイドルを目指す少女たちが、どんなふうに変化していくのか、どんな気持ちでアイドルを目指すのか、どうやって一般人からアイドルへと成長していくのかが生々しく描かれていました。しかし、今回は様相が違います。映画の主軸はオーディション候補生ではなく、解散してしまった第2期BiSメンバーなのです。

 第2期BiSメンバーの中には、前作『世界でいちばん悲しいオーディション』に候補生として参加し、合格したメンバーが数人いただけに、今回の映画で登場したとき、「こんなに立派になって……」という謎の親目線もありました。しかし、そう感じたのは最初だけであり自分がいかに愚かだったかすぐに知ることとなります。彼女たちはオーディション候補生のときよりも、どんどんボロボロになっていき、観ているのも辛い姿になっていきます。

 第2期BiSが解散に至るまでに何が起きたか、私はこの映画内で描かれていることしか知りません。それだけに、映画で描かれていない部分に、真実があるかもしれませんが、少なくとも映画内の第2期BiSの9人は、一致団結しているようには見えませんでした。決して、やる気がないように見えるわけではないのに、何かがから回ってしまっている状態。グループ全体を包み込む負のオーラ。

 先日行ったインタビュー(『あゝ無情』は一番“面白い”ドキュメンタリー映画に 第2期BiS解散を通して見えたWACKの精神性)で、渡辺淳之介さんは「(彼女たちは)自分たちのことしか考えていなかった」と語っていましたが、確かに彼女たちの話し合いからは、自分の行動が他者に何を及ぼすか、それをどう受け止められるか、という視点が決定的に抜けているのです。でも、これは多くの人にも当てはまるのではないでしょうか。頑張ると一口に言っても、何のために頑張るのか、誰のために頑張るのか、それが抜け落ちてしまったら、何の意味も持たなくなってしまうことがあります。特に学生ではなく、社会人/プロになってしまえば、なおさらです。だからこそ、きつすぎるとも言える渡辺さんの一言一言が、スクリーンを通して自分にも突き刺さってきました。

 本作はアイドルドキュメンタリーではありますが、 社会人なら(もちろん、WACKをずっと追いかけてきた人も)誰もが気づきを得ることのできる一作になっていると思います。(リアルサウンド編集部)

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